第16話 夕方のデート

五限、六限目と、午後の授業が終わり、帰り支度を始めた。そういえばノートを貸した時、食べ物と言っていたが、具体的にはなんの食べ物だ?

いつもは、串焼き屋とか、ラーメン屋や新しく出来た店とか言うのに。

鉋に聞いてみようと探したが、見当たらなかった。今日も部活なのか。相変わらず部活の時の移動が早いな。明日の朝にでも聞いてみることにしよう。

「光希、今日この後近くにできたカフェ行かない?」

カフェか、あんまり行ったことないな。それに女子が行くイメージだからどんなメニューがあるのか気になるし是非行ってみたい。

「いいよ。ここから、どれくらいの距離なんだ?」

スマホを取り出して何かを打ち込み、俺にその画面を見せてきた。

「うーん、ここからだとそう遠くはないし大丈夫そうだな。」

「私高校に入ってからは寄り道することが少なくなったから、ここら辺のことよく知らないんだよね。光希この場所分かるの?」

スマホに映る住所を指さして聞いてきた。

「何回か通ったことはあるよ。鉋に上手い飯屋とか教えてもらったときに通ったよ。」

「私も行きたかったな」

「今度また、鉋が教えてくれるらしいからその時つ一緒に行こうよ」

「うん。楽しみにしてる。それは置いといて、カフェに向かおう!」

手を繋ぎカフェへと向かった。その間にテイクアウト用の唐揚げ屋とクレープ屋に寄った。財布の中身が寂しくなってきそうだが、幸せそうに食べる未華の笑顔を見たらプラマイゼロだ。むしろ気持ち的にはプラスかもしれない。

カフェに到着すると、店内に同じ学校の制服の人がちらほら見えた。窓際の席に対面で座り、気になるメニューの方を見ると、カラフルに飾られたパフェやアイスクリーム、ケーキ、さらに季節限定のものまで用意されていた。

「私この季節限定の奴にしようかな。あと、いちごパフェ」

「行く時に結構食べたのに、そんなに食べてる、夕飯食えなくなんないのか?」

「大丈夫だよ、別腹だから。ちゃんと夜ご飯だって食べるよ」

「それならいいけど、食べ過ぎに注意だぞ。未華がいくら細いとはいえ、いつ体に出でくるか分からないからな、気をつけろよ。」

「デリカシーないな。私だってちゃんと気をつけるよ」

「ご注文はお決まりですか?」

急に店員が注文を聞きに来て少しびっくりしたが、未華が注文が決まった時点でボタンを押して呼んでいたようだった。注文を終え飲み物が先に来た。

「このアイスコーヒー美味しいな。少し酸味がある感じが好きだな」

「コーヒーなんてみんな苦いだけだよ」

そう言いながら見ただけで口の中が甘くなるような、アイスミルクティーを飲み、美味しいと微笑んでいた。とても俺はそれを飲めそうにないな。甘いのは好きだけど、極端に甘いものは遠慮したい。

「光希もこれ飲んでみる?美味しいよ」

「俺はいらないから、未華が飲みなよ。」

「後で飲みたいって言ってもあげないよ?」

「その時はちゃんと自分で買うよ」

「まだかな。あれ、私が頼んだやつじゃない」

小さく指を指す方を見ると、確かに同じだが、俺たちのいる席とは真逆の方に行ったら。

「他のお客さんのだった。そろそろお腹減ってきたな。」

厨房の方から出てくる店員を見ると目が合った。多分あれが俺か未華が頼んだやつだろう。店員は俺達側の通路を歩いて、俺たちの席で止まった。

「お待たせしました、ミルフィーユといちごパフェ、季節限定の桜のカラメルソースを使用したプリーアラモードです。」

プリンとパフェの皿を未華の方に置き、自分のを取った。ミルフィーユなんて、初めて食べるな。どんな味なんだろ。上からフォークを刺すと横からクリームが出そうになった。

「ミルフィーユはね、横にして食べるとクリームが出ないよ」

そういう食べ方なのか、未華に言われた通り横に倒してからフォークで切って見るとクリームは出てこなかった。

「よく知ってたな、食べ方なんて」

「前に友達と食べた時私もクリーム出ちゃったんだよね、その時に教えてもらったんだ」

「じゃあ俺はそのも友達に感謝しないとな」

「私にも感謝してよ。教えたの私なんだし」

「わかってるよ。ありがとう」

「どういたしまして」

俺がミルフィーユを食べてる間にパフェを食べ終え、次のプリンの方を食べ始めていた。

「パフェ食べ終わるの早くないか。」

「そう?甘いものだと美味しいから食べる手が止まんなくなっちゃうんだよね。だからじゃない」

「そういうもんなのか」、「そういうもんでしょ」

次のプリンもぺろりと食べ終えた。

「初めて食べたミルフィーユの感想聞かせてよ」

「あれ、俺未華にミルフィーユ初めて食べるって言ったっけ」

「言わなくても、男子が一人でこういうところに入りずらいのはわかってるから、多分光希はミルフィーユ初めて食べるんだろうなって」

確かに初めて食べるが、男が一人でカフェに入りにくいのは偏見では、と思ったがすぐに頭から押しやった

「感想としては、今までにない新鮮な食感だったかな。パイ生地のサクサク感とクリームの甘さが相まってて、美味しかったよ。」

「良かったね。美味しいミルフィーユが食べられて。場所によっては美味しくなかったりするらしいから」

「そっか。美味しいミルフィーユが食べられるところに連れてきてくれて、ありがとう」

「お礼を言われることは何もしてないし、ここのお店のミルフィーユが美味しいのかどうか分からなかったから」

初めて食べたものが好印象のものだと食べたくなるが、美味しくないと、二度と食べたくないなって思うからほんとに当たり店で良かった。

「食べ終えたことだし。春とはいえ暗くなったら寒くなるし帰ろう」

会計を済ませて店の外にでて、未華と手をつなぎながら、家へと向かう。

「またこのお店行きたいね」

「また今度来ればいい、季節限定のなんだから、季節が変わる事にまた一緒に食べに来よう、もちろんそれ以外でもね」

「春夏秋冬みんな食べちゃうからね」

「どんなのが出てくるか楽しみだな」


これからの楽しみがまたひとつできた。私はどれくらい生きられるか分からないけど、光希と一緒にいつまでもいたいな。

空を見ると綺麗な夕陽が見えた。私はあと何回光希とこの夕陽が見れるのかな。

「夕陽がキレイだね」

「そうだな、こんなに綺麗な夕陽滅多に見られそうもないな」

「じゃあさ、夕陽をバックに写真撮ろうよ」

「逆光で見えなくなるんじゃないか」

「じゃあ、私たちのピースだけ写真に入れようよ」

「わかった。じゃ、写真撮るよ。近くに来て」

私はめいいっぱい光希にくっついて、夕陽に向かってきた右手でピースサインを作った。光希も同じようにしてシャッターを切った。

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