第10話 夫婦っぽいこと
「私が17で光希が9ペア。ということで私の勝ち!」
何度目ともしれない敗北をした俺はもう勝ちたいという思いは失せてしまった
「これで7戦中6勝1敗だね」
腕を組みふふんと得意げなポーズを取る
最初の1回戦目は調子がよくて、圧勝だったのに、次からは全く取れなくなった。昔から未華は強運の持ち主だったがこんなところでまで運がいいのか?はたまたは記憶力が良いのか?
「はぁ、負けを認めるよ」
「やったー!光希に勝った!約束忘れないでよ『勝ったら1日好きにできる』。有効期限はなしだから、私の好きな時に使わせてもらうね」
「約束は守るけど、バイトの日とかはやめてくれよ」
「わかってるよ。ちゃんと考えて使うから」
「ちょっと、なんか眠くなってきちゃった。お昼寝しない?」
時計を見るとまだ4時だった。結構長い時間やってるつもりだったが、そこまで時間はたっていなかった。「神経衰弱って言うぐらいだから、神経が疲れちゃったのかな?」
「どうだろうな。ただ単に今日は映画と食べ歩きもしたからその疲れもあると思うよ。」
「確かに今日は歩いただけでなく食べたもんね、美味しかったな。また食べたい」
「話がそれてきてないか?お昼寝するか?」
未華は悩みながらも寝る事に決めた。ついでに俺も一緒に寝ようかな。
「寝るのそこのソファでいいんじゃない?」
「ソファで寝るのか?ベットで良くないか?」
「ええ、1回ソファでお昼寝してみたかったんだからいいじゃん。一緒に寄りかかって寝ようよ」
「寝ずらそうだけど、未華がやりたいならいいよ」
ソファに座ったがいいがどうやって寄りかって寝るんだ?未華も同じことを思ったようで悩んでいた
「よりそって寝るのは難しくないか?」
「そうだね…。あっ!」
何か思いついたようで立ち上がり座ってる俺の前に立った。何する気だ?
「ソファに深く座って足開いて」
言われるがままそうすると開いた足の間に未華がちょこんと座ってきた
「これで光希が私を抱いてソファに寄りかかって寝る、なんでどう?なんか仲良し夫婦って感じしない?」
実際の夫婦がやるかは置いといて、好きな人を抱きしめて寝れるのは悪くわないな
「そうだな」
未華が俺に寄りかかり、俺は未華を抱きしめる。髪の毛いい匂いがする。
そのまま目をつぶりしばらく肌で未華を感じていると、うとうとし始め、眠りに落ちた。
また、昨日と同じようにこのソファで眠り、夢を見た
「綺麗な花ね、なんて花なの?」
差し出した花を嬉しそうに受けとりながら、お母さんは聞いてきた
「わかんない、でも綺麗だったから持ってきたの」
無邪気な俺を眺める俺。母親が持っているであろう花はボヤけていた。
「光希はそのまま優しく、よく笑う子でいてね。もし私に万が一のことのことがあっても、お母さんは光希には泣かないで欲しいな。お母さんも光希と別れるのが寂しくても泣かない。強く生きて欲しいから。もし辛くて涙が零れちゃう時でも笑っていて。それは終わりじゃない。」
お母さんは俺の頭を撫でながらそう言った。
夢から覚めると、頭を誰かに撫でられてる感触があった。目を開けると未華が俺の頭を撫でていた
「なんで頭撫でてるの?」
「また光希泣いてたよ」
言われてから、自分の目元が濡れていることに気づいた。夢の内容は朧気にしか覚えてないのに、何故か起きるといつも涙を流している。
「また、お母さんの夢?」
「そうだったみたい」
初めて母親の夢を見たのは、母親が死んだ翌日からだった。夢から目が覚めると決まって俺は泣いていた。
歳が上がってもそれは変わらず。夢の内容だけがだんだんと朧気になっていった。たぶん、心のどこかではまだ、母親が死んだのは自分のせいだと思ってるのだろう。いつまでも自分を許せずにいるのだろう。何も誰も悪くない、病魔が母を連れ去った。誰にも責めようもない事なのに。
「今何時なんだ?」
「6時半だよ。私が起きたのはそれより少し前だけど」
「そっか。そろそろご飯作らないとな」
「そうだね。お昼に食べたいものは食べちゃったから、何作ろうか」
「和食なんでどうだ?商店街にはたしかなかったと思うから、昼食べたものとは被らないだろ。」
「おお、確かに。じゃあ早速作ろうか」
メニューは焼き鮭、市販のきゅうりの浅漬け、味噌汁に炊き込みご飯、にすることにした。
「和食なんて久しぶりに作るかも。」
確かに手間がかかるものもあるから家で作ることも、自然と減ってたのだろう。
久しぶりに、炊き込みご飯を作ったが、かなり美味しい出来となった。
「美味しい!炊き込みご飯なんて、最近食べてなかったからかな?舌にじんわり広がる、懐かしい感じがする」
一口食べる事に美味しいと言いながら、完食した。
「今日だけで、こんなに食べたから太っちゃうかも」
自分のお腹を触りながら心配していた。
「そんなことないだろ。未華は細いんだから食べないと、すぐ倒れちゃうよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
「ありがとう」、はにかみながら未華は言ったが感謝されるようなことを言った覚えはないが素直に受け取っておくことにした
「明日は何する?」
「明日は1日バイトなんだ」
「そっか」
残念そうにしながら、お風呂に入ってくると部屋を出ていった
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