第8話 デート前日

「おう!今日も朝早いじゃん!」

 教室を開けると鉋と目が会いすぐに俺に話しかけてきた

「ほんとに朝起こしに来てくれてんのか、いいお嫁になりそうだねぇ」

 肘でつつきながらニヤケ顔に俺にそう言ってきた

 いいお嫁ねぇ、

「俺の未華はいいお嫁だが、素敵なお嫁って言って欲しいな」

「え、それなんか違いあるの?」

 確かに大差ないが未華がなりたいのは素敵なお嫁さん

「未華と俺のこだわりだ、」

「ほんと仲良いな、喧嘩とかしねぇの?」

 うーん、と考えてみたが、喧嘩らしい喧嘩はあまりした事がないな

 強いていえば未華のプリンを俺が間違えて食べたとか、そんな些細な事ばっかりだ

「ないな」

「すげぇな、幼稚園からの付き合いで喧嘩しねぇとか。俺なんかいっつも妹と喧嘩してるよ」

「それはお前が意地っ張りなだけだろ、乃美ちゃんと仲良くしろよ」

「俺は意地っ張りじゃねえよ、乃美のやつがわからず屋なだけだ」

「似たもの同士だな」

そんな話をしてると、「かんなー」と呼ぶ声が聞こえた

ドアの方を見ると鉋の妹の乃美が、鉋を探してるようだった

「噂をすればなんとやら、だな、行ってやれよ」

はぁ、とため息を漏らしながら鉋は面倒くさそうに妹の元へ向かっていった

スマホの通知を確認すると、未華から通知が来ていた

«今日の夜ご飯、何がいい?»

夜飯かぁ、昼もまだなのに考えていると鉋が帰ってきて勝手にスマホ画面を覗いた

「え?何お前らほんとに同棲してんの?」

心底驚いたように聞いてきた

「勝手に覗くなよ、同棲なんてしてない」

否定するが、この文章を読んだら説得力の欠けらも無い

「大人になったな」

意味深なを言いながら肩をぽんと叩いた

「だから違うって」

「本当か?じゃあなんで“夜ご飯何がいい?”なんて、聞いてきたんだ?」

それもそうだ、昨日は家に誰もいないから分かるが

今日も誰もいないなんて珍しい、今まで、1度も2日連続で家に誰もいないなんてことは無かったはずだ

«今日も家に誰もいないの?»

とりあえず、そう返信してみた

«今日から光希の家に住もうかなって思って»

«ダメ?»

ダメじゃないけど、急にどうしたんだ?

やっぱりなんか家であったんじゃ

«家でなんかあった?»

«なんもないよ?なんで?»

«急に俺の家に住むとか言ってきたから»

返信をして、スマホ画面の時刻を見るとそろそろホームルームが始まる時間だった

«学校終わったら話の続きしよう、ご飯はカレーが食べたい»

«うん、カレー楽しみにしててね»

ホームルームが終わり一限目の準備をしてると鉋が、また未華との同棲疑惑のことを聞いてきた

まだ一緒に住むと決まったわけじゃないから「してない」の一点張りで何とか聞くのを諦めてくれた

学校が終わり、鉋は部活だとのことで1人で帰ることにした

未華の家が見える辺りまで来ると、車から未華と未華の母親が降りて、笑いながら楽しそうに話していた

ほんとに家で何かあったわけじゃないんだな、良かったと安心してると、未華が俺に気づき手を振った

俺も振り返し、未華の家に着くと未華がうちに入ってと言ったので制服のまま未華の家にお邪魔することにした

「制服のままだけも、なにか急ぎの用事でもあるの?」

玄関で靴を脱ぎながら言うと、未華の変わりに母親の方が俺に教えてくれた

「未華が光希君の家にしばらく居たいって言うから、用意させたんだけど、ちょっと荷物が多いから光希君に手伝ってもらおうって話になって」

親の同意もう得てたのか、断るつもりはなかったけど、展開が早過ぎないかなどと考えていると

未華に早く部屋に来るよう急かされ、未華の部屋に入ると、一瞬未華が倒れてた光景がフラッシュバックしたが、頭を振って、あの時の光景を振り払った

「ちょっと重くて私じゃ大変だから光希に、持ってもらってもいい?」

そう言って旅行用のキャリーケース俺の前に置いた

「何がそんなに入ってんだ?」

「うーんとね、服とか化粧品とか下着かな」

「そんなに服とか持ってたのか」

ちょっと驚いた

「女の子は色々持ってないと大変なの、洋服だって、いくらあっても足りないくらいだよ」

最後のはさすがに言い過ぎだろと思いつつ

俺はキャリーケースを未華はさっき買い物で買ってきたものを持って俺の家に向かった

部屋は空いてるところがあるからそこでいいかな

「部屋は空き部屋があって使ってないからそこでいいか?」

「ん?光希の部屋じゃダメなの?」

「…へ?」

俺の部屋に2人で?

「さすがに狭すぎるだろ、服とか入れる場所ないし」

「えぇ、じゃあ寝る時は光希の部屋で一緒に寝る、それもダメ?」

子犬のような目で俺を見みてくるので断れず「わかったよ」と言うしか無かった

一応俺が空き部屋を未華の部屋にする提案を読んでいたらしく、部屋は綺麗に掃除されていた

「せっかく頑張って掃除したんだし、自分の部屋の方が寝る時も安眠するんじゃないか?」

「好きな人同士で一緒に寝たいって思うのはダメなの?光希は私と一緒は嫌だった?」

「嫌じゃないよ、俺も未華と一緒にいたい」

「やった!じゃあ荷物置いたらご飯作るね」

そう言って、荷物をしまい、台所に向かった

手伝うと、言ったが断られてしまい、仕方なくテレビを見て時間を潰すことにした

しばらくすると、カレーが出来上がった

未華のカレーの腕がかなり上達していて、自分の皿だけじゃ足りず、鍋に残ったカレーも気づけばみんな食べていた

「美味かったよ、未華が作ってくれたから、変わりに皿洗いするよ。未華は先に風呂に入っちゃってくれ」

皿を片付けながら未華に言うと、元気よくわかった、と返事をし風呂に、向かった

明日は土曜日だし、早速未華が見たいと言っていた、映画を見に行くか、終わったら食べ歩きもしようかな

明後日はバイトだから未華を家に1人にさせちゃうけど、心配ないだろう

風呂から上がるまでの間することがなく、ボーッとテレビを眺めていたら、眠くなりそのまま寝てしまった


「お母さんはいつになったらびょーいんから出られるの?」

「ごめんね、まだ分からないの、だけど絶対に1人にはさせないから安心してね」

「うん、ばぁばの言うこと聞いてお母さんとまた一緒におうちでくらせるの待ってる」

だんだん病室の周りが暗くなって、母親と幼い俺との距離が遠くなってく

これは、夢か、いつも母さんの出てくる夢は俺は傍観者だった

どんどん遠くなって行く間ずっと母さんは幼い俺に

ごめんねと繰り返す

俺はただそこに立ち尽くして、母さんを見続けるしか出来ない


「起きて!起きてって!お風呂空いたよー」

身体が大きく揺さぶりながら俺に声がかけられた

俺は目を開け目の前に経つ未華を見る

「早いよ、寝ちゃうの。せめてお風呂に入ってから寝てよね」

腰に手を当てながらプクッと頬をふくらませていた

「ごめん、ごめん、今はいるよ」

すぐに立ち上がり、部屋から下着と寝間着を取風呂に入った

風呂から上がると、何やら未華は楽しそうにスマホの画面を見てた

「明日、映画見に行かないか?」

「えっ!やったー!ちょうど調べてたととこなんだよ!」

これこれ、と映画ポスターの写った画面を見せてきた

題名は「恋路の旅路」

「ほんとに面白いのか、これ?」

「これしか今恋愛映画がやってなくって、面白いかどうかはともかく、これ見に行ってみようよ!」

「いいよ、映画見終わったら近くで食べ歩きしないか?」

「じゃあ映画の上映前も食べ歩きして時間潰そうよ!」

見みる前に食べて、見たあとも食べる、映画を見たより食べた思い出の方がでかくなりそうだな

「観る前に食べたら、見たあと食べるものがなくなるだろ」

「そんなに食べないもん!ちゃんと考えて食べるからね」

そう言って近くの食べ歩きスポットを検索しだした

食べ物を見ている間、終始これ食べたい、これは行きと帰りどっちでも食べたいと言っていた

俺も未華のスマホを覗き込みどんなものがあるか見た、どれも結構美味しそうに盛り付けられていた

2人で同じものを買うとお金が足りないと思い話し合った結果お互い別々のものを買い、食べ比べをすることにした

ふと、時計を見ると12時を回りそうだった

食べ物だけでそんな長い時間見てたのか。

「そろそろ、遅くなってきたし、寝るか」

「えぇ、もうちょっとだけ見てたいよ」

「ダメだ、明日出かけるんだから朝起きられないと大変だろ」

「私は光希みたいにお寝坊さんじゃないもん!ちゃんと朝起きられるもん」

「それで寝不足になっても嫌だろ」

むぅ、と可愛く唸るが、すぐにわかったと言って部屋に向かった

俺も部屋の電気を消して自分の部屋に入ると

未華が先に布団に入っていた

「ほら、おいで」

嬉しそうにベットの空いてる空間をパシパシ叩きながら呼んでいた

昨日の今日でドキドキしながらベットに入ると未華はギュッと俺を抱きしめた

「抱きしめて」

昨日とは打って変わってワクワク感のある声でせがまれた。言われるがまま俺も抱き締め返した

未華は嬉しそうにあったかーいと言いながら俺の胸に顔を擦り寄せていた

抱きしめながらも、俺はだんだん眠くなり始めてると、部屋の電気を消してないことに気づいたが、この状態から消すのは無理だなと思い、諦めて寝ることにした

「「おやすみ」」

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