第6話 地獄を天国に
告白の後、俺は1度帰宅しシャワーを浴びて少し眠る事にした
未華が倒れた次の日も俺は学校だったが、仮病を使い
休んで未華に付きっきりで看病する事にした
病院まではそこそこの距離だったが自転車で通うことにした
病院に着き、受付で手続きをし未華の待つ病室の扉を開けた
昨日は重く思えた病室の扉も未華と2人で乗り越えていくと決めてからは軽く思えた
「おはよ、学校は?」
未華は起きており、朝食を食べていた
「おはよ、仮病使って休んだ」
未華はちゃんと行きなよと言いながら笑った
「具合は?」
俺は少し声のトーンを落とし聞いてみた
「昨日よりは少し痛くないかな」
未華は暗い顔をした
「そっか、なら朝ごはん食べたらトランプやらね?」
1度暗くなった空気を無理やり明るくするかのように
話題を変えた
「ババ抜き、神経衰弱、大富豪、どれやる?」
「朝ごはん食べて少ししたら、CTを取りに行かなきゃ行けないから、その後でもいい?」
「全然大丈夫だよ、それって俺も着いて行けるやつ?」
「着いてこなくていいよ、光希だって疲れてるんだから、少しでも休んで」
そう言って俺の額にデコピンをした
良かった、昨日よりは明るくなったかな
俺は安心した、昨日みたいな息苦しさは見られなかったからだ
未華は朝食を食べ終え、やっぱり少し時間があるからと言って、ババ抜きをやることにした
ババ抜きをしていると、そこへ未華の母親が病室に入ってきて、未華の笑ってる姿を見て安心したようだった
「お母さん、昨日光希が私に告白してくれたんだ!」
唐突に未華は言うもんだから驚いた
だがそこまで驚いた風もなく「光希君だったら未華を任せられるしいいんじゃない、これから未華の事をよろしくお願いします」
改まって言われたので俺もパイプ椅子から立ち上がり
こちらこそよろしくお願いしますと言って親公認で未華との交際が始まった
「俺、未華を絶対に幸せにしてみせます、今のこの状況も2人で乗り越えて、笑って過ごせる未来にします!」
「そんな張り切って言われると恥ずかしいよ」
未華はまた顔を赤くしていた
そこへ看護師さんが部屋に入ってきて未華はCTを撮りに行き未華の母親と2人きりとなった
「本当にありがとう、光希君、未華と付き合ってくれて、あの子、本当は幼稚園の頃から光希君の事が好きだったみたいで、卒園式の日だって本当は素敵な光希君のお嫁さんになるって言おうとしてたのよ」
笑みを零しながら俺の知らなかった事を話してくれるその姿は本当に楽しそうだった
「俺はその時はまだ未華の夢は変わるだろうって疑心暗鬼でしたよ、でも小1の時に俺の母親が死んで、俺が自暴自棄になってる俺はどうして未華はこんな俺に優しくしてくれるのって聞いたんです、そしたら素敵なお嫁さんになるからって言ってたんです。
それを言われて未華の夢は本気なんだって確信しました、それで俺は俺なりに未華に恩返しをしなくちゃいけないと思って未華に俺がその相手を探してやるって言ったんです」
「今思えば何様だって思いますけど、俺は未華にふさわしい相手絶対見つけるって心に誓ってそれを生きる理由にしてた時期もあったんです」
「あの子は今も昔も変わらず光希君大好きっ子だったからどうにかして光希を元気づけてあげたいって思ってたのよ」
そう語る姿は窓の外を見ながら遠い昔を見ているように思えた
お互いに未華の昔話をしていると、未華が帰ってきて
トランプがまた始まった
未華の母親は邪魔になると悪いからと言って部屋から出ていった
しばらくトランプで遊んでいたが飽きてきて未華とも昔話をした
俺は中学にの時になぜ俺を避けていたのか聞いてみた
すると、未華は顔を赤くしながら話してくれた
未華とは初めこそ一緒に登校してたが、俺と未華が付き合ってるのという噂が出る少し前に、未華は友達に
付き合ってるのか聞かれ、それから恥ずかしがるようになったと言う話をしてくれた
「嫌われたと思った?」
未華は話し終えたあと俺に聞いてきたが、そんなことは無いと言うと少し残念そうにしていた
その後CTを元に手術日が決まり腫瘍摘出手術が行われた
摘出手術は成功し、抗がん剤治療を初め、幸いにも副作用は発症せず、経過を見て退院となった
俺も未華の家族も喜んだ
退院の日になり未華の部屋に向かうと看護師が慌ただしく部屋を出ていくのが見えた
嫌な予感がし急いで未華の部屋へ入ると、とても苦しそうなにした未華がいた
俺はすぐに駆けつけ呼びかけたが、返事はなくそのまま未華はぐったりとして、動かなくなってしまった
すぐに医師が部屋に入ってきて、未華は集中治療室に運ばれた
訳が分からなかった、つい昨日までは楽しそうに笑いあってたのに
俺は頭の整理ができていないままの状態で未華の母親に電話をしてすぐに駆けつけてもらった
原因は分からず未華は一命を取り留めたものの目を覚まさなかった
レントゲン、CT、両方で検査したが、何も見つからなかった
俺はその日、病院で寝てしまったらしく起きると朝日が出かかっていた
未華は眠ったままで、変わった気配は何も無かった
ベットの横に座り、未華の手を握って必死に祈った
未華を連れていかないでください、未華から笑顔を奪わないでください、なんども、なんども祈った
気づくと昼近くになっていて、一旦コンビニで弁当を買って、食べてから戻ると未華の母親が医者と思われる人と、何か話していた
話を終えると未華の母親は眠っている未華に抱きつき泣き始めた
今は1人にした方がいいと思い、部屋の外にある椅子で未華の母親が出てくるのを待つことにした
しばらくすると、部屋から出てきてそのまま俺の隣に座り、さっき話していた話を俺に話してくれた
腫瘍がある場所、手術をするにあたり摘出するのがあまりにも困難の為QOLを意識したターミナルケアに入る事
そんなの、あんまりじゃないか
未華は昨日も退院後にしたいことを待ちきれないと言いながら話していた
それがもう、出来ないなんて
余命は長く持って1年
この1年で未華の一生が終わるなら、1年を何十年、何百年と思えるほどの1年にしてやる
これが俺のできる最前だ
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