第4話 素敵なお嫁さん (1)
未華とは幼稚園に入る前からの付き合いだった
元々母親同士が仲が良く、近所だったため良く母親達が話してる間2人で遊んだ
未華は無邪気にはしゃぐが泣き虫でもあった
鬼ごっこで遊んでいて転んだ時、かくれんぼですぐに見つかった時、俺が別の事で未華に構ってやれない時、俺が幼稚園を風邪で休んだ時、上げだしたらキリがないほど未華はことある事に泣いていた
そして幼稚園の卒園式の日に将来の夢を一人一人言っていく時に未華は「素敵なお嫁さんになる」と言っていた
最初は成長したら忘れるだろうと俺は思っていたが、小学校に入ってからは彼女は「素敵なお嫁さんになるため」と言って未華は母親の手伝いをよくしていた
小学校に上がって数ヶ月だった時、俺の人生の中で最大の悲劇が訪れた
それは、俺の母親の《死》だった
俺はその現実に耐えきれず引きこもりになった
そして朝から晩まで、俺は母親の死が俺のせいであるのではと、考えていた
そして自分の意思では眠りに着くことが出来ず、睡魔が襲い、泣き疲れて眠りにつくまではずっと母親の事を考えていた
正直高校生になった今でも1番苦しかったのは小学一年生の母親が死んだ時期だろうと今でも思う
おかしくなった俺を優しく未華は励ましてくれた、
一緒に泣いてくれた
どうして俺にそんなに優しくしてくれるのかと聞いたら「素敵なお嫁さんになりたいから」
未華は笑顔で答えた
それを聞いて、未華は本気なんだと思った
それなら、俺は未華が素敵なお嫁さんでいられる人を探してあげようと思った
「未華は、絶対に素敵なお嫁さんになれる、あとは未華を素敵なお嫁さんで居させられる相手を俺が見つけてあげる」
そう言いきった俺に未華は大喜びをしてくれた
未華が俺を励ましてくれて、生きる理由をくれた
だから俺は今も生きていられるのだろう、もし未華がいなかったら多分俺は母親を追いかけていただろう
母親の死から立ち直った俺は未華と一緒に学年も上がったが未華とクラスが変わってしまった
話が出来る時間は、登下校と家に帰ってからの未華が夕飯の手伝いをするまでの時間
あとは週末に未華がたまに家に招待してくれて、未華の家で母親に手伝われながら俺にご飯を振舞ってくれた時などだ
どうしてそこまでしてくれるのかと聞くと、未華は恥ずかしそうに「光希のことが好きだから、光希のお嫁さんになりたいから」と言った
最初は恥ずかしくて「冗談はやめろ」と言って誤魔化していた
俺のお嫁さんになる?どうして?俺は確かに「未華にふさわしい相手を見つける」とは言ったが「俺が未華の結婚相手になるとは言ってないぞ?」
疑問に思ったことを包み隠さずに未華に聞いた
今思えば我ながら良く恥ずかしがらずに聞けたものだと思う
未華が俺の事を好きで、お嫁さんになりたいのは
「未華が泣いている時、いつも一緒に悲しんでくれるから」と言った
「未華が先生に怒られてる時、庇ってくれたりして、一緒に怒られてくれたり、とか」
そんなことを言ったら俺だって母親が死んで自暴自棄になっていた時未華が助けてくれた、それを言ってしまえばお互い様で済む話だが、未華はそんな俺をかっこいいと思ってくれた
中学に上がってからは、何故か未華は俺を避けた、俺の顔を見るなり頬を赤くして友達の後ろに隠れたり、放課後も一緒に帰るのを拒んだり、その理由は病室で告白した日にやっと、わかった
未華に避けられていても、俺は未華に嫌われた訳じゃないことはわかっていた
いつも未華は俺を見守っていてくれたからだ
部活の試合で負けて悔しんだ時、未華は隣で俺を励ましてくれ
中学の卒業式になり未華は大泣きだろうと思っていたが意外にも未華泣かなかった
卒業式の帰りに俺は未華に聞きたいことがあった
「周りの友達と離れ離れになるのに、未華は悲しくないのか」
未華ははにかみながら「光希が一緒にいてくれるなら私は寂しくない」
笑顔でそんなことを言われて、俺は今更ながら未華を女として意識するようになった
未華は俺と同じ高校に通い、クラスまで同じでお互い喜びあった
高校生活に慣れてきた頃、俺と未華が付き合っているのではないかという噂が流れた
正直付き合っててもおかしくないが、付き合っている訳でもないが違うと言うのも嫌だなと思い、はっきりした答えは言えずにその噂は有耶無耶に終わった
夏休みに入った頃、未華は心臓部分が痛いと言い出した、俺は心配して病院に行こうと言ったが、未華はそんな大袈裟なことじゃないよと言って結局行かなかった
それからも未華はことある事に「いたい〜」と言っていたが病院に行く気配はなかった
ほんとに大丈夫なのだろうか、心配になり俺が未華に口うるさく言ったため、未華は病院に行って検査を受けてきたがなんの問題もなかった
だけど俺は不安で、四六時中、未華と一緒にいるようにした
未華は学校では恥ずかしがっていたが、俺は未華のことが心配で周りの視線は気にならなかった
気づけば秋が終わり、冬になっていた
11月終わりで冬の寒さが本格的になった頃で珍しく早起きした俺は、早めに学校に行き未華を驚かせようと企んでいた、だけど
その日未華は学校にはこなかった、季節の変わり目だから風邪でも引いたのだろうと思ったが、一応未華の家にお見舞いをしに行った、案の定風邪であり、大丈夫と未華が言うが、朝感じた胸のざわつきは消えてはくれなかった
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