第3話 不安なお花見

学校から帰ってきてすぐにシャワーを浴びて部屋着に着替えた

「腹減ったな」

冷蔵庫になんか入ってたかなと思いながら

リビングに行き、冷蔵庫を開けた

「何もないか、コンビニ弁当で、いいかな」

そんな独り言を言っていると、「ピンポーン」と珍しく家のインターホンがなった。

「はーい」と返事をし玄関の扉を開けるとそこには

未華が立っていた。

「どうしたの?朝何かうちに忘れていった?」

未華は体を揺らしながら大きく首を左右に降った

「お母さんが家でジャーマンポテトを、多く作ったから光希の所に持って行って、って」

そう言ってタッパーを差し出してきた

「ありがとう、家に上がって行ってよ」

そう言いタッパーを受け取り未華を家に入れた

「ちょうど冷蔵庫に何も無くてコンビニ弁当でも買いに行こうか考えていたところなんだ」

「そうなの?それならちょうど良かった」

未華が台所に向かってお皿を出そうとしてくれたので

「俺が出すよ、未華は椅子に座ってて」

「わかった」と言い未華はテーブルの席に着いた

「ねぇ、私も一緒に食べてもいい?」

未華がそう聞いてきた、俺も一緒に食べたくてお皿を2枚取り出していたので未華からそんなことを言われて嬉しかった

「うん、いいよ」

お皿と箸をテーブルに持って行った時に気づいた

「あ、ご飯、今から炊くからしばらく待ってて」

急いで米を炊く準備を始める

すると未華が

「いいよ、たまにはおかずだけっていうのも良いじゃん?」

未華がそういうならと思い、ジャーマンポテトを2人で食べる事にした

「おいしい、やっぱ未華のお母さんが作る料理は美味いな」

そう言いながら口に頬張っていく

「そんな一気に口に入れたらむせるよ」

と言った直後に、ゴホッゴホッ、と光希がむせた

「ほら、言ったじゃん」

光希は水を飲みながら「美味いんだから仕方ないだろ」と、ボヤく

「ねぇ、これから出かけない?」

そう言って未華が提案してきた

俺は迷わずに「うん、いいよ」と即答した

未華が退院してもしばらくは一緒に出かけられていなかったから嬉しかった

どこ行くんだろうと思い、さっき話した映画館かな

などと考えていると

「私、お花見したい!」

目を輝かせながら言ってきた

花見か、なんかカップルっぽいなと思い少しニヤけるがすぐに表情を戻し

「じゃあ、これ片付けてすぐ行こうか」

そういうと素早く皿などを洗い、お互い準備のため未華は一旦家に帰り俺も準備に取りかかった。

「うーんと、とりあえず持ち物は財布、スマホともしものため未華ように水を持って行っとこうかなかな」あとは問題は服だな。

普段からあんまりオシャレなんか気にしないから

デートの時ってどんな服がいいのかわかんないな

ここはいつもどうりラフな格好でいいかな

「いやダメだろ!」

つい声が出てしまった。

独り言が最近多くなってきたなと思いながらもう少し特別な感じを出してなどと考えながらまた服の構成を考え始める。


鼻歌を歌いながら未華は自分の家に向かっていた

光希とデートだ、少しドキドキするなぁ

「どんな格好で来るかな、光希なら何でも似合いそうだな」

気づいたら声が出ていて独り言になっていたが

周りに人影はないし大丈夫そうと思っていると家着いていた。

「ただいま!」

と明るい声で未華の帰還の声と未華の声の似た少し透き通った声で「おかえり」と母親が返事をした

未華は母親に綺麗に洗ったジャーマンポテトの入っていたタッパーを返して自分の部屋に入るなり

すぐに1人ファッションショーが始まった

「うーん、これかな」

「なんかちがう」

「トレンチコートにしよっかな」

可愛いけどなんか全身隠れちゃうなぁ

どうしよう、早くしないと光希が待ちくたびれちゃう

うぅーん悩ましい


結局いい服が考えられず何となくアウターに合うような服装にした

未華の家の玄関先で待っていると

「おまたせ」と声が聞こえた方を向くと

そこにはいつもの、ストレートのミディアムヘアで制服姿をした未華ではなく、ローポニーテールで、デニムジャケットの下にニットを着て小さな花柄のロングスカートを着こなす俺の可愛い彼女がいた。

「可愛い」

ポツリと口からこぼれた言葉に未華は少し照れながら

「ありがとう」と言った

「早く行こ!」

照れ隠しのつもりか、急かすように未華は俺の手を引いた。

目的地に着いてからは彼女が先導し写真を撮ったり、桜の花びらをキャッチしようとしたりと満喫した。

楽しく二人で談笑しながら歩いていると女の子が1人で泣いていた

すかさず未華が女の子のところへ行き

「ママとはぐれちゃったの?1人で怖かったね、私たちと一緒に探そうか?」

未華は女の子と打ち解けようとしていた

女の子は未華の問いかけに答えてくれたらしく名前は

「えみ」と言うらしい

「未華はえみちゃんと、一緒にいてはぐれないで、俺が探してくるから」

「でも1人だと探すの大変だから私も手伝うよ」

未華が一緒に探すと言うが未華の体も心配だ

今日は学校にも行き、その後出かけているのだ

普段の倍は体力を使っているはず

「でも、俺は未華も心配だ」

「私ってそんなに弱々しく見える?光希ばっかりに任せられないよ、私も探す!」

そういうと未華はえみのお母さんを探し始めたため、あきらめて俺も探し始めた

「えみちゃんのお母さん、いませんか!」

数十分しても見つからず未華も疲れてきたらしく顔色が悪くなっていた。

早く見つけないと未華が心配だ、そう思い俺は

未華達と少し距離のある方を探して見ることにした

すると、近くで

「えみー!どこにいるのー!」

と、えみのお母さんらしき人が探していた

「えみちゃんのお母さんですか?」

俺はすぐにその人に声をかけてみた

「そうですが、えみを知ってるんですか?」

と気いきたのでえみの特徴を言い合致し、案内すると、えみの方が母親を先に見つけ、駆けつけていた。

しばらくは2人で抱き合い、俺と未華にお礼を言い、手を繋いで人混みの中へ消えていった

「ふぅ、見つかってよかったねえみちゃんのお母さん」

未華は疲れ気味にそう言って俺に寄りかかってきた

「そうだな」

そう言い寄りかかってきた未華を受け止め、肩で息をしている未華をすぐに休める場所を探した。

近くにベンチがあったのでそこに未華を座らた。

近くに自動販売機はなかったがもしもの時のために未華用のミネラルウォーターを持ってきていたのでそれを未華に渡した

「ありがとう 」といい未華は少しそれを飲み深く息を吐いた

「大丈夫か?」

俺は未華に問いかけた、もう少しかける言葉があっただろうがほかの言葉をすぐには思いつかなかった。

「大丈夫、ちょっと疲れちゃっただけ」

大丈夫と言うが、俺にはそうは見えなかった

俺がもっと早く見つけてやれば未華はここまで疲れなかった、未華を心配しすぎてあまり未華のそばを離れたく無くて未華の視界に入る辺りしか探さなかった

未華が元気なうちからもう少し幅広く探せられたらと色々考えていると急に未華が俺の手を握って来た

「心配しなくても、私は大丈夫だよ、そんなに悲しい顔をしないで」

そう言い彼女は悲しそうな不安げな顔でこちらを見ていた

また、また未華を悲しませてしまった

未華が入院した時もそうだ、俺は未華を笑顔にするってそう言ったのに、今日だって未華を楽しませたかったのに

「また、暗くなってる、もうちょっと自分に優しくしていいんだよ、自分で全部解決しようとしても無理なことだってある、私の心配ばかりで光希が苦しくなるのは私も見てて苦しくなるの」

未華が励ましてくれている、辛いのは未華の方だって言うのに

「ごめん、未華のことを考えたら不安で不安で」

もう、と困った顔しながら

「私の事をそんなに思ってくれてありがとう、私は光希のそういうところに惹かれてあの日の告白を受け入れたんだよ」

未華がそう言うと俺の肩に頭を預けすぅすぅと寝息を立てて眠ってしまった

よっぽど疲れていたんだな、そう思い少し未華を俺の肩で寝かせることにした

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る