第3話  ガイザード王子とティラン若長

 その日の朝は、雨上がりだった。

 あたしは朝の水くみに出た時のことである。

 村はずれにある泉は、

 とても澄んでいて、井戸のお水より美味しい。ここの水を

 あたしとエリサ、そして、エリサの従妹のエイミアとで二往復ずつ汲んで来るのが日課になっているが、最年少のエイミアはさぼりの常習犯。

 この日もどこかに遊びに行ってしまっていた。

 あと少しで、泉に着くところで、見たこともない白い、誰が見ても

 駿馬とわかる馬。と、馬に乗った二人の若者。

 輝く金髪を肩で無造作に結んだ彼は、何かしらの威厳があり、自分の外套をもう一人の若者に着せていた。

 こちらのほうは、少年と言ってもいいくらいの年頃で、具合が悪いのかずっと下を見ている。

 俯いてて、顔は分からないけど、こちらも見事な銀髪をしていた。

 ふたりがあまりにも、違和感なしにこの村に溶け込んでたから忘れてたけど 今は非常事態。ロイルの長の追悼の祈りの儀式で大人たちはほとんどいない。

 ミジア様も谷の結界を強くしておくと言っていた。

 あんまりあたしがジロジロ見たのか、向こうもあたしに気が付いたみたい。

 急に馬を早足にさせ、あたしに近寄ってきた。なんだろう...?


「おい、娘」


 金髪の若者がいきなり声をかけてきた。


「はい?」


 よく見ると、空のような青い瞳をしている。がっしりとした体格の男だ。


「この近くに休めるところはないか?連れを休ませたい。」


「…だあれ?あなたたち…」


 あたしは、やっと二人が不審者だと気が付いた。


「誰でもいい!!礼なら後でいくらでもする。今は、早くティランを休ませてやりたい。」


 ティラン…?聞いたような…?

 金髪の若者は必死だった。


「具合悪いの?」

「見てわかるだろう。この三日、あちこち回って疲れさせた。」

「病人の手当てをしたいなら村の神殿の奥でやってる治療院で看てもらうのが一番ね。」


 続けて補足も。


「今大人たちがいないから、完璧な治療は出来ないけど、癒しの力ある人はいるし、優秀な薬草使いもいるわ。」


 金髪の若者の顔がパッと輝いた。


「そこへ案内してくれ!!」


 でも、あたしの心は憂鬱だった。この非常時に誰かも名乗らない人たち連れて帰ったら何を言われるか…それでもあたしは、二人を神殿に連れていくことにした。

 だって、銀髪の男の子本当に具合悪そうなんだもん。

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