第23話 不審者がやってきた
「ぶんるいにこまる……」
本は本棚に入れ、衣類や布類は一か所にまとめ、よくわからない器具類はひとまとめにして箱に入れ、アクセサリーっぽいものも箱にまとめた。
分類に困っているのは、紙類だ。
羊皮紙は、よくわからないけど、書類っぽいものばかりだったけど、植物紙はなんだか洒落たものが多くて、私信の類なんじゃないかと思う。
名前があるやつはいいんだよ。
差出人の名前で纏められるから。
ただ、差出人もなく、暗号っぽいやつはどうしたものかわからない。
床に打ち捨てられてはいるけど、捨ててもいいかどうか判別がつかないから困りものだ。
「えーっと……」
言語理解チートのおかげか、読めるのは読める……のだけどさぁ。
読んでもさっぱりわからない。
本の方で学術書っぽいものもよくわからなかったけど、そっちは『魔獣の生息域における推論』とか『変異種における薬理効果』とか、なんとなーく、内容は類推することができる。
だけど『青い月の光を受けた花は、赤い月が恨めしくて仕方がないのです』なんて書き出しで始まるポエムとか、読めるけど読めないよ。
ちなみに、この世界には月が二つあるんだけど、赤い月と青い月があって、だいたい一日交替で上ったり沈んだりする、らしい。
一カ月は20日で、5日で一週間、一年が18カ月。
刻みが細かい。
時候の挨拶から始まって近況を訪ねたりしている、普通に読める手紙は、多分家族からのものじゃないかな。
「まったく、かぞくからのてがみをゆかにほっぽっとくなんてよろしくないね。ねー、ペス」
モフモフ、と柔らかい毛並みを撫でていると、ペスが私の横に寝そべったから、全身でモフモフを堪能することにする。
脳みそを使ったから疲れちゃったよ。
「なんだぁ? 泥棒か?」
「ぴゃっ」
ペスの温もりで気持ちよくなってうとうとしていたのに突然の大声で起こされて、飛び上がる。
「え、なになに? どろぼう!?」
表の光を背に立っていたのは、大きなバスケットを片手にしたシルエットだ。
明らかにロイとは違う。
「ど、どろぼうー!」
「うわっ、うるせっ」
びっくりして叫ぶと、その男の人はびっくりした様子で空いた手で耳を押さえた。
「なんだぁ、ちび。どうやって入って来やがった?」
しゃがんで私の顔を覗き込んできたのは、これまた美形。
ロイが月だとすると、この人は太陽だろうか。
明るく燃えるようなオレンジの髪に、新緑を思わせる鮮やかな緑の目は面白そうにキラキラ輝いている。
「なぁなぁ、ちっちぇえな、お前! どこからきたんだ?」
……ただ、うるさい。
あなたの方がよっぽどうるさいじゃないの。
音量調節機能が壊れてんのかというほどの大声に、ペスも迷惑そうにのっそりと立ち上がって部屋の隅に移動してしまった。
ちょっとー、置いてかないで―……。
「やぁ、アレン。そういえばもう一月経つのか」
予定外に町へ行ったから、そのあたりの感覚が狂ったなぁ、とぼそぼそ呟きながら、ロイが地下室から上がってきた。
ロイとこのアレンって人の声の大きさを足して2で割るとちょうどいいんじゃないかな。
「なんだ、お前。どこの女に産ませたんだ」
「そんなわけないでしょう」
「じゃあ、ロイが生んだ?」
ちょっと、突っつくのやめてくれませんかね。
指って意外に固いから痛いんですよ!
「どうやって産むんです。馬鹿なこと言ってないで、チーロが嫌がっているからやめてあげてください」
「ふーん、チーロって言うんだこいつ」
ぐりぐりと加減もなく頭を撫でられて、グラングランする。
この人、やることが乱暴!
くーびーがー、おーれーるー!
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