第17話 ロイのステータスカード

「あたりまえ?」

「半成人前にスキルや称号が付くのは、生まれながらの王侯貴族くらいだよ」

「はんせいじん?」

「それも知らないのか……近隣の国でもある風習だから、この近隣の出身ではないのかもしれないな。このあたりでは10歳を半成人とし、仕事での正式な見習いになれるんだ。成人は15歳だね」


 10歳で見習い、ってことは徒弟制度みたいなものがあるのかしら。

 ……そういえば、ロイは貴族だったな。


「ロイはしょーごーある?」

「あるよ。私のステータスカードも見せようか?」


 ほうほう、このカードはステータスカードっていうのね。

 そのまんまだな。


 ロイは私のステータスカードに細い紐を通すと、首からかけてくれた。


「私のステータスカードは、ほらこれだ」


 ロイが襟から引っ張り出したステータスカードを見せてくれる。

 ロイも首から下げてたのか。


【名前】レクサノール=スクラネカ

【年齢】22歳

【状態】生存

【日付】00018/13/19

【レベル】42【体力】227【魔力】534【膂力】178【知力】224【運】114

【加護】アマルテイアの祝福


「あれ、じょーたいは『せいぞん』になってる」

「『健康』ではないのかもしれないね」

「れべるたかい!」


 感心しながら、一つ一つの数字を指で辿る。

 ロイは22歳だったのか。

 レベルは年齢と同じくらいなんだっけ?

 それなら、私もこのくらいのレベルじゃなきゃいけないんじゃないのかな……。


「このくらいのレベルなら珍しくもないけど、これは18歳の時のステータスだから、今はもう少しレベルは高くなったと思うよ」

「にじゅうにさいってかいてあるよ?」


 なのに18歳の時のステータスなの?


「ずっと更新していないからね」

「こうしんしないのににじゅうにさい……? にじゅうにさいではない……?」


 ロイはトントン、とステータスカードの年齢の欄を叩いた。


「私の今の年齢が22歳。日付が最後に更新した日。この年齢と状態の欄は、持ち主の状況に合わせて表記が変わる。ステータスカードを見れば、概ね持ち主の状況がわかるんだ。それ以外の項目は、どこかしらのギルドか教会にお願いして更新してもらわないと、記述された時点から変化しない」

「ほうほう」


 それって一体どんな技術なの。

 ステータスカードをくるりと裏返すと、私のステータスカードとは違っていろいろ書いてあった。


【所属ギルド】

冒険者ギルドE級

薬師ギルドB級

【取得スキル】

剣術、馬術、結界、製薬、従属 他

【称号】

スクラネカ辺境伯家第4子3男

薬学博士

王位継承権15位

【賞罰】

マルセル銀褒章


 称号も思ってたんと違う!

 『紅蓮の死神』とか、『深淵を臨みし者』とか『女神の愛し子』とか、そういう厨二っぽいもの想像してたのに……。

 そうね、『博士』は日本でも立派な称号でしたね。


「おういけいしょうけん……」

「母が元王女だから、一応ね」

「おーじさまじゃん!」


 貴族だって話は聞いてたけど、王位継承権まであるなんて話は聞いてないよ!


「それは違うよ、チーロ。王位継承権はとりあえずあるけど、王子は王様の子供で、私は辺境伯家の子供だから、辺境伯家子息ではあるけど、王子様じゃないよ」


 丁寧にロイは説明してくれるけど、王子様っていうのは言葉のあやだよ。


「おうさまがおじさんか……」

「そう言われたらそうだけど……私たちは臣下だからね。そんな風に軽々しくは思えないかな」

「おひめさまがおかあさん……」

「元、ね」


 道理で美形なわけだよ。

 王女様って言ったら美形と相場は決まってるもんね。


「チーロは王子様が好き? 小さな子は王子様とかお姫様とか大概好きだよね」

「んー……あったことないからわかんない」


 いや、好きか嫌いかで言ったら憧れてるんだから、好きのくくりに入るとは思うけど、現実にいる相手だと考えちゃうと、のんきに好きとか嫌いとか口に出していいものか悩むよ。


「王子様なら本物にそのうち会えるとは思うけど……チーロがガッカリしないか心配だな」


 ロイはそんな気になることを呟いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る