第7話 人並みなのは力だけ

「その宝玉に手を当ててごらん」


 突然のファンタジー!

 いきなりファンタジー要素をぶっこんできましたよ。

 え、マジですか?

 不安になって司祭様を見上げると、にこやかに頷かれる。

 えー、静電気とかこないでしょうね。

 そうっと両手で宝玉に触れると、普通にただの水晶玉だった。いや、ガラスかプラスチックかもしれないけど、要するにただの石、って感じ。

 パーッと眩しいくらいに虹色に光ったりはしないんだね。

 ちょっとがっかり。

 触っただけじゃ何も起きなかったけど、司祭様が何かをもごもご口の中で唱えると、フォン、と音を立てて、宝玉の上にウィンドウが展開された。


 突然のSF!

 空中ディスプレイとか、オーバーテクノロジーにもほどがあるでしょ。


【名前】チヒロ=サカキ

【年齢】4歳

【レベル】1

【体力】34/42

【魔力】8/8

【膂力】386/386

【知力】32/32

【運】22/22

【加護】--


「これは……」


 司祭様は少し難しい顔をしている。

 なんだよう、難しい顔をされると不安になるじゃない!


「レクサノール様にも見ていただくが、よろしいかな?」


 れくさのーる……?

 あ、ロイね!


「うん、いいよ」


 ロイの方からじゃ、このステータス見えてないのか。

 よろしいか、っていわれても私にはこのステータスがどんなものかわかんないから、暫定保護者であるロイに確認してもらった方がありがたい。


「というわけで、レクサノール様、こちらをご覧いただけるか」

「……これは」


 恐る恐る祭壇に上って、私のステータスを見たロイも絶句している。


「わたしだめなの?」

「駄目ということはないがのう……」


 どこから説明したものか、という風に司祭様は何度か顎を撫でた。


「普通、レベルは年齢と同じくらい、その他の数値はそれに0をつけたぐらいある、のが目安かのう」

「ええ、じゃ、わたしのまりょくひくすぎ……!?」


 それもショックなんだけど、一応異世界で38年生きてきた経験を思い出してるのに、知力が低いっていうのが割とリアルに辛い。

 しかも4歳児にしても低めってことでしょ。

 マジか……マジか……。


「ちからはおとなのひとなみにあるのか……」


 実年齢に即してるのが膂力だけ。

 力いずパワーか。

 ううん、この身体が4歳だと考えると、その膂力も4歳分は足りない。

 しかも加護の欄は空欄と来てる。

 こういう異世界系って魔力とか加護とかチートなのがセオリーじゃないの?


 それが力だけはあります、って確実に主人公でもメインヒロイン枠でもないじゃない。

 パワータイプ幼女って、担当武器ハンマーとかでしょ。

 それでいつの間にか出番が減ってたり、ヘタするとスポット加入とかのヤツだ。

 死んだのもとばっちりだったけど、異世界に来ても主人公じゃない人生だなんて……。


「司祭の説明が当てはまるのは、だいたい十歳ぐらいまでかな。何の努力もしなければ、そのぐらいで成長は止まるし、努力によって伸ばすにも個人差がある」

「じゃあ、がんばればまりょくふえる……?」

「……多分ね」


 魔法なんてものがあるのなら、ぜひ使ってみたい所存。

 数値で出してくるってことはあるんでしょ、魔法。


 しかし、一桁か。

 ここからどのぐらい伸びるものなんだろう。


「四歳でレベル1とはのう……何か病気でもしたのかな?」

「どういうこと? あ、れべるよんくらいはあるはずだから?」

「うむ。もっと高レベルのものであれば、死にそうな目に合った時にレベルや各種ステータスが下がる、ということはままあるんじゃがのう……レベル1にまで下がるとなると、よほどの病気か怪我から奇跡的に助かったとしか思えんわい」

「なるほどー」


 司祭様が引っかかったり、ロイが絶句したのってそこか。

 死にそうな目に、ってことはデスペナルティなのかな。

 この世界ってば、レベルは上がっていくだけじゃなくてデスペナルティありなのか。

 脳裏で北陸の虎が小脇に対戦相手を抱えて、「デスペナルティ!」と叫びながら、タトゥーの入った右腕を振り上げた。ザ●とは違うのだよ、●クとは。

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