三日目 彼女という存在 後編
「先生。先生。大丈夫ですか」
「んん。 ああ
俺は先生に対して何度も問いかけていたが反応がなかったので心配をしていたが、反応してくれたので安心した。よく見ると先生の顔には涙の粒ができていた。
「先生に相談したいことがありまして。けど、先生は大丈夫ですか?」
「ああ、まあ大丈夫だぞ。それで相談って?」
俺は
「なるほどなー。そういうことか。ん- お前はどうしたいと思ってるんだ?」
「そうですね、正直自分でそうすることが正しいのかってのがわかりません。彼女のためを思ってしたことでも結局、彼女をより傷つけてしまっている… 俺はどうすればいいですかね」
「そうだな。少し俺が昔聞いた話をしよう」
先生は机の下に入れていた足を出し、体ごと俺の方を向いて語りだした。
「昔、一人の、そうだな、お前と同い年ぐらいの人がいた。その人はお前と違って女の人だったが、その人には彼氏がいた。三年間くらい付き合っていたらしく仲が良かったそうだ。けど、ある日、お前と同じ病気を発症してな。彼女は嘆いたそうだ。もう死ぬということに。両親はもちろんそのことを知っていたそうだが、彼女は友人や彼氏には内緒にしていたらしい。お前と同じ理由でな。そして、彼女は誰にも教えないまま一週間を楽しく過ごした。彼氏はというと気づかないでただいつものような生活を送っていた。そして、一週間後、彼女は予定通り亡くなった。彼女は言っていたそうだ、この一週間は幸せだったと」
「じゃあ、つまり俺は伝えないままあとの日数を過ごした方がいい、ということですか?」
先生は返答をせず、先ほどの話を続けた。
「けど、伝えられなかった彼氏は後悔した。どうして伝えてくれなかったのか、どうして気づいてやれずにいたのか。気づいていたら何かできたのではないのか。そう思っていた。そしてその彼氏は今もずっと後悔したままでいる」
「なら、俺は、、どれを選ぶのが正解なんですか」
「それを決めるのは俺じゃないお前だ。俺が決めることではない。ただ、お前が相手のことを思うのも大切だが、自分がどう思っているかではなく、相手がどう思っているのかも大切なんだ。それも考えてみろ」
俺はその言葉を受け、考え直すことにした。確かに俺は
すぐにチャイムが鳴り、俺と先生は席を立った。
「よし、じゃあ帰りのHRもあることだし教室に戻るか」
「そうですね」
今日は職員会議らしく五限で学校が終わる予定になっている。
先生は机の書類をまとめていたので、俺は着替えに戻った。そして、教室に戻るとみんなから大丈夫かと心配されたが何ともないと返して帰りのHRを迎えた。
俺は帰りのHRが終わるまで先生から言われたことを意識して考え続けた。そして、俺はとりあえず
帰りのHRが終わり帰りの準備をし終わると
「行こ」
「ああ、うん」
自分がどう思っているかではなく、相手がどう思っているのか か
俺はその言葉を深く考えていた。
「ただいまー」
「お、おじゃまします」
「それで、どういう事なのかな?」
「その前に一ついいか?
「それはりょうちゃんの事が好きだよ。ずっと一緒にいて楽しいって思うし、離れ離れになることが考えられないっていうか。これから先もずっと側にいたいって思ってるよ」
「そうか」
やっぱりそうだよな。俺だって離れたくないから。こいつに本当のことを伝えていいのか
「けど、りょうちゃんが別れようって言ってるならどうしてなのか教えてほしい。多分、りょうちゃんの事だから何かあったから私のことを思って言ってるかもしれない、私のことをただ単純に嫌いになったからだけかもしれない。それでもいい。知らないよりは教えてほしい。りょうちゃんがどう思ってるのか」
俺は悩んだ。陽菜は教えてほしいと言っている。けど、俺は教えたくないそう思った。怖かったから。教えた結果どうなるのか俺には想像できなかったから。
いや、大体どうなるのかは分かっているつもりだ。そう、俺は逃げたんだ。逃げたいんだ、この現実から。早く。
「俺は・・・」
俺は適当に理由を告げようと思い顔を見上げ、
今にも泣きだしそうな顔をし、それを精一杯我慢しているような感じだった。
違うだろ。俺は
俺は間違っていた。俺は自分のしたことを後悔した。
自分がどう思っているかではなく、相手がどう思っているのかも大切なんだ。
「わかった。全部話すよ」
そして、俺はあと数日で死ぬこと、別れるということに至った経緯、すべてを話した。
「そっか、、、そういうことか。りょうちゃんが…」
「ごめんな。黙ってて」
俺はすべて話した。死ぬと伝えた時には驚いていたが、その後の話は落ち着いて聞いてくれた。
「ううん、りょうちゃんも私のことを思ってしてくれたんだよね。ありがと」
伝えたことで俺の心は少しだけ軽くなったような気がした。
「けど、なに? 覚悟覚悟って、 そんなの全然覚悟じゃないから」
「え、、」
俺はいきなりのことに驚いた。
「りょうちゃんがしてた事ってね、逃げただけなんだよ。ただ、目の前のことから逃げて、正解なんてもんじゃない。そんなのは全然覚悟じゃないよ!」
「え、あ、うん、ごめん。 けど」
「けどじゃない! 私は何? りょうちゃんの彼女だよ? そして幼馴染。小さい頃からずっといて、側にもいた。りょうちゃんが何か隠してたことくらいすぐに分かった。だから待ってた。りょうちゃんが言ってくれるの。それなのに何? 別れよってふざけんなよ」
「ごめん」
俺は何も反論できずただ座って話を聞いた。
「何かあったなら話してよ。ちゃんと。たとえ死ぬとかそんなことでも。私は伝えられなかったことが悲しいよ。だから、 だから困ったことがあったら話して? 私はりょうちゃんの側にいて支えたい。 そう思ってるから」
俺は本当にすまないことをしたなと思った。
「そもそもさあ、りょうちゃん昔から抱え込みすぎなんだよ。先生に怒られそうになった時も一人で責任負おうとするし。そんなのだれも望んでないからね」
「え、ましで?」
「うんうん。それにさ・・・」
俺と
その時間は俺にとって幸せだった。
窓の外も夕焼け空になって来たので、そろそろ帰ることにした俺と
「あ、そうだ。今度の日曜日、遊園地行こ? そうだなぁイエローランドなんてどうかな?」
「ああ、いいな。じゃあ行こっか。詳しい内容はまた後で」
「うん、わかった。 ねぇ小さい頃にした約束覚えてる?」
「約束?」
「え、まさか忘れたの? したじゃん。“俺が死んでもお前を幸せにする“って」
「あーしたなー。って、小二くらいじゃない? それ。なんか恥ずいな」
「うん。だからりょうちゃんがいなくなった後でもいい思い出になるように日曜日はちゃんと幸せにしてよね?」
「ああ、わかったよ」
「じゃあ、またね」
「おう、明日な」
「はーい」
俺は玄関を出て扉を閉めた。
ガタッ!
私は足から崩れ落ちた。
「そっか、りょうちゃん死ぬのか…
うっ、うう、うわあああああああああ」
私は両手で顔を抑え泣いた。今になって胸の奥から感情があふれだした。
やっぱり嫌だよ。嫌だ。嫌だ。離れたくない。なんでなの。なんでりょうちゃんが死ななきゃいけないの。なんで。嫌だよ。
私はどうすることもできないことに悲観し、泣き続けた。
その後のことは覚えてないけど、お母さんによればかえってきたら玄関で泣き崩れていたらしい。
俺は家に着いた。心は少しすっきりしていて気が楽だった。
「ただいま」
「お帰り。遅かったね」
「ああ、少し用事があってな」
「どうせ、
「そうだねぇ」
「うわ、うっざ。出たよ。リア充アピール。 もうご飯できてるから座って食べてね」
俺は
「ねぇ、お兄ちゃん…」
「ん? どうした?」
「お兄ちゃんさ、、、 ぃゃ、 お風呂私は先はいるから。お風呂の後片付けとかよろしくね」
「ああ、うん、わかった」
ご飯も食べ終わり、食器も洗い終わったのでテレビを見ていたら、
なんかお兄ちゃんが変だ。一昨日、貧血とか言ってたけどなんか違うような気がする。なんかいつものお兄ちゃんじゃないっていうか。お兄ちゃんは普段通り普段通りみたいな感じでいるけど全然普段通りには見えないし。今日の朝とかとても憂鬱そうだった。さっき帰ってきた時は少しすっきりしたような顔してたけど… まあなんかあったらお兄ちゃんから話してくれるよね。 じゃあ明日も早いし寝よ。
俺は風呂から上がると特に何もすることもなかったので部屋に行き、ゆっくりしていた。
俺はベッドに入り眠りについた。
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