第13話 オカ研②
「
そう言ってペコリと頭を下げる
頭を下げた拍子に長い黒髪がサラサラとこぼれ落ちる。
はえ〜蘆屋先輩の髪綺麗だな〜
昨日は良く見えなかったけど顔も可愛いし、背もちっちゃくてお人形さんみたい。
蘆屋の隣り、昨日は
因みに幽子ちゃんもきちんと居て、今は天井付近で姿を消し新生オカ研の皆を見下ろしていた。
これは事前に
折角の新入部員でビビリな所が有る、そんな梨花を怖がらせない為の配慮だが、昨日会ったばかりの晴明達に存在を明かしたのは良かったのだろうか?
当然本人にも聞いてみたが、蘆屋曰く「お二人とも肝が座ってる風に見えたので」との事だった。
「今日は後ほど顧問の先生も顔を出してくれる事になっていますので、今の内に明日のフィールドワークの予定を決めたいと思います。私としてはこの
「ちょっと待て蘆屋」
「はい?」
地図を指差しながら淡々と話しを進める蘆屋に一旦待ったを掛ける晴明。
それに対し、説明の手を止め不思議そうな表情を返す蘆屋。
「どうかしましたか?」
「いやな、俺達はまだオカ研が何をする部なのか知らないんだが? それで突然フィールドワークとか言われても……」
晴明の言葉にハッとした表情をし、ポンっと手を打つ。
「そう言えばそうでした、では改めてオカ研の活動内容をご説明します。
活動の多くは学術研究です。各国のオカルト系書物を読み真偽を話し合ったり、日本各地に有る伝承を実地調査し報告書を作成したりです。
今回のフィールドワークは後者に当たりますね」
「成る程。つまり明日はオカルトスポットに出向いて肝試しをしようって事か?」
恐ろしくかい摘んだ晴明の説明を聞いて、蘆屋が頬をプクッと膨らます。
「そう言う浮ついた活動では有りません! あくまで学術調査です!」
「そ、そうか。それは済まんかった」
プリプリと怒る蘆屋へ素直に頭を下げる晴明。
「しかし突然明日と言われても、な〜?」
頭を上げた晴明が横に座る
悔しいけど、お兄ちゃんが好きになるのも無理無いかな……
ってダメダメ! 何、弱気になってるのよ梨花!
私が何の為にこのわけの分かんない部に入ったか、理由忘れたの?
私しっかり!
ポーっと熱にうかされた様な表情から、ムスッとした敵意剥き出しの顔に変わる梨花。
期待と不安の混じる眼差しを向ける蘆屋。
三者三様の視線が集まる中、麗美は我関せずと言った感じでスマホを弄っていた。
「
「ん? なに? って何よこの状況……」
やっと自分に集まる視線に気が付いた麗美は、目を丸くして辺りを見回す。
「まあなんだ、浦戸の場合部室に来た事自体驚きだが、来たからには話しに位参加しようぜ」
実際昨日の態度から、籍は置くが部室に顔すら出さないのでは? と思っていたのだ。しかし晴明が誘うと多少面倒臭そうにでは有ったが、特に文句も言わずにこうして付いてきたのだ。
「だからしてるじゃない。ほら……」
そう言って先程まで弄っていたスマホの画面を、皆が見える様前に差し出す。
そこに映っていたのは電車の乗り換えを調べるアプリで、目的地はさっき蘆屋が口にした『愚裏木村』となっていた。
「乗り換え自体は多いけど電車で二時間程度ね、思ったよりは近いわ。問題は駅に着いてから……って何よ」
今度は皆が目を丸くして麗美を見る番で有る。
「それは、フィールドワークに参加するって事で良いんだよな? ……本当に良いのか?」
「正直驚きました。浦戸先輩が、積極的に活動へ参加してくれるなんて」
「昨日の感じだと絶対来ないと……」
思わず口を滑らせた梨花は慌てて口を紡ぐ。
自分は昨日この場に居なかったのだから、麗美の態度など知る由も無い筈なのだ。
そっと皆の顔を覗き見る梨花だったが、どうやら自分の発言は誰の耳にも届いて居ない様子にホッと胸を撫で下ろす。
それ程麗美の変わり様の方が衝撃的だったのだ。
「随分な言われね。マ……母に言われたのよ、やるからにはキチンとやりなさいって。私が部活に入る何て珍しかったからでしょうけど……そう言えば、どうして私が部に入った事知ってたのかしら」
そう言って小首を傾げる麗美。
「あーそれな、俺がメールで報告しといた」
「はあ!? なんて事すんのよ! って言うかどうして貴方がママのメアド知ってるのよ!」
「いや、お前に何かあったら連絡してくれって本人から……」
晴明の言葉に頭を抱える麗美。
つまり、麗美の行動はカーミラに筒抜けと言う事になるのだ。
「ういーっす。皆んな集まってるか……なんだこりゃ」
そんな場に現れたのが、ジャージ、巨乳、メガネと三拍子揃った美人教師の
「えっ、中澤先生どうしてここへ?」
当然の疑問を口にする晴明だったが、中澤は事も無げに……
「どうしてもこうしても、私がこの部の顧問だからな。
蘆屋、フィールドワークの許可証だ。分かってると思うが、くれぐれも危険な場所には近付くなよ」
中澤は蘆屋に許可証を手渡しながら注意を促す。
この学校では正規の手続きを行なって許可証を貰えば、今回のようなフィールドワークも課外活動として認められる。
そうすれば、交通費の一部を部費から負担する事を許されるのだ。
「ああ、それとユニフォームの方も
「私は着ないわよ!」
「えっ! アレ俺も着るの!?」
「ユニフォーム……?」
中澤の言葉へ機敏に反応する麗美と晴明、どうして文化部にユニフォームが? とイマイチ要領を得ない梨花。
そしてここぞとばかり生き生きとし始める蘆屋は、例のデカい肩掛けカバンからおもむろにローブを取り出すと、バサリと肩に羽織り胸を張る。
「梨花さん、コレが我々オカ研のユニフォームです!」
「やだ、なにそれ……」
やはり梨花も引き気味かと思われたが……
「……カッコいい」
どうやら梨花は蘆屋寄りの感性だったらしく、ローブ姿でドヤ顔を決める蘆屋をキラキラした目で見ていた。
「嘘でしょ!?」
「え、梨花、マジ?」
信じられない物を見る目の晴明と麗美。
そんな二人をよそに、更なる盛り上がりを見せる蘆屋と梨花。
「梨花さん、貴方なら分かってくれると思ってました!
ほら、胸の所に校章が刺繍されているんです、なかなかオシャレでしょう? 裏には名前を入れる所も有るので、他の人のと間違う心配も有りません。生地も予算が許す限りなるべく良い物を使っていますので、着心地も良く長く着れますよ。それこそ高校三年間と言わず、その気になれば一生着ることも可能です」
「凄く良いです! こう言うの小さい頃からの憧れでした!
あ! 私の事はもっと気軽にちゃん付けで呼んで下さい、蘆屋先輩!」
「分かりました梨花ちゃん。では私の事も名前で呼んで下さい、何ならちゃん付けでも……」
「
「梨花ちゃん!」
すっかり二人の世界に入ってしまった蘆屋と梨花は、お互い手を握りチューでもするのでは? と言うくらい顔を寄せ合っている。
晴明はそれを「何を見せられてるんだ?」と言う微妙な顔で、麗美は単純に呆れ顔で眺めていた。
「ねえ知ってる?
麗美が晴明にだけ聞こえる程度の声でボソリと言う。
「こっちの梨花は妻じゃ無く妹だ、第一あいつら女同士だろ?」
「そうね、でも愛には色んな形が有るものよ?」
麗美の言葉に、妹の将来に若干の不安を抱く晴明であった。
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