遠足の日

どじょう

水族館まで

いつもは学校に行くだけの満員電車が、二人の世界になった。


今日は遠足の日。

遠足の場所は、水族館。

学校からバスとかなら楽だけど、なぜか現地集合・現地解散。

しかも、班も決められ、昼には解散。

よく分からん。

でも、いいこともある。

みんな私服なのだ。

女子の私服が見れる。

嬉しい。

あの子の私服も見れる。

嬉しい。

僕はウキウキで電車に乗った。

あの子はきっとあの駅で乗り換える。

僕もそこで乗り換えた、テイで待ち伏せた。

サラリーマンの人混みの中に輝く彼女を見つけた。

ここで声をかければ水族館までの電車、二人でいる時間が長くなる。

僕は肩を叩いて「おはよ」と声をかけた。(肩を叩いたのはあくまで触りたかっただけ)

『あ、うん、おはよ』

彼女がこちらを向く、髪が揺れる、目が合う。

あぁ好きだ。

彼女はイヤホンを外して、ポケットにしまった。

これは、話をしてくれるということだろうか。

僕と彼女は野球という共通の趣味があるのでその話で盛り上がった。

水族館へ向かうための乗り換え駅だと分かっていても、それは言わず、ふたりで話し続けた。

何駅か乗り過ごしたあと、彼女が乗り過ごしているのに気がついた。

『これ集合時間、間に合わなくない?』

もちろんそのつもりだったが、彼女に悟られないよう焦ったフリをして、ふたりで乗り換え駅まで戻った。

僕らが遅刻することによってみんなに迷惑をかけるのはどうでもよかった。

彼女との時間しか頭になかった。


結局、僕らは15分ほど遅れて集合時間に着いた。

みんなが見る前で好きな人とふたりで遅刻。

みんなにどう思われただろうか。

考えただけで興奮する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遠足の日 どじょう @008dojyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ