第77話「三度目のバトルロワイアル」
中学校の昼休み、時折校舎裏で集まり雑談をする。それが清志、皆夫、瞳のルーティンになっていた。というのも、最近は朝起きるのがつらいせいか、清志の日課である素振りが、昼休みの時間に変更しているからだ。おそらくクレイジー・ノイジー・シティでの活動で体力を多く使ってしまっているからだろう。どうにか今までの習慣に戻したいところであるが、本当に朝が眠くて仕方がない。
「そんな感じで、キララはすごくしっかりしてそうな子だったぞ。正直ククリよりも村長になるならいいかもって思ってしまったくらいだ。」
「まあ確かにヘタレだもんなククリの奴。でももらった能力はすごいんだぜ?連続で瞬間移動できるんだ。使いようによっては攻撃でも回避でも…負けるかも。」
「でも清ちゃんみたいに空中で好きに動けたり、反動を使って攻撃を重くすることもできないみたいだよね。やっぱり回避に全振りって感じなのかな?」
「だけどそれじゃあ村長になれないだろ。とりあえず皆夫が基本的な剣術を教えて、戦う心構えをつくるしかないんじゃねえかな。今のところククリメタは皆夫しか考えられないし。」
「…清志君たちはククリに村長になってほしいのか?」
「いいや。」
「別にそうでもないね。」
「それにしては妙に協力的じゃないか。」
二人は首をかしげるので、瞳も首をかしげた。魔導王が許可したとはいえ、クルルは具体的に清志たちに協力を頼んだわけではない。クルルもどちらかといえば村の分裂がなければククリが村長になろうとなるまいとどちらでもよいといった様子だ。清志と皆夫がなぜわざわざククリを尊重にしようとするのか瞳にはよくわからなかった。
「だってククリが頑張りたいって言ってんだもんな。」
「泣き言ばっかりだけど、そこは曲げてないみたいだよね。」
「そうなのか?」
「それにいい奴だろククリは?ならやっぱ協力してやりてえ。」
その笑顔を見て瞳もつられたように笑った。
「そっか。そうだよな。妙に考えすぎてたよ、私らしくない。」
シンプルな方がわかりやすい。彼らの考え方は瞳にとって一番好きなやり方だった。
それから清志たちは週に二日、ククリとの鍛錬を行うことにした。主に主導するのはココと皆夫で、行い組手の相手としてほか三人も協力する。それ以外の日は依然と同じく、アンノウン討伐を行うこととなった。数日そんな日々が続いたのだが、ある日の放課後、クレイジー・ノイジー・シティに入る前に武と会った。武は寿高原高校の生徒であり、清志たちと同じプレイヤーの一人だ。以前この町に現れた泣き女を倒すために協力したりと、良好な関係を築いていた。
「久しぶりだな。息災か?」
「おかげさまで。武も元気そうで安心したよ。最近あっちも人がめっきり減ったからな。」
「だろうな。そのことについてお前たちとは話したいと思っていたのだ。」
武はわざわざ自販機から全員分の飲み物を買い、公園のベンチに座った。清志はもちろんコーラをもらい、ほくほくしながら話を聞く。
「お前たちはしばらくあっちにはなかったようだが、あちらも今状況が大きく動いている。第三回バトルロワイアルについては知っているか?」
「あ、やっぱり始まってたんですか?僕たち最近セントラルにはいってなくて。」
「そうか。それならそれで構わないが、今回のバトルロワイアルにはこれが関係するようだ。確か洋子が持っていたと思うが。」
そうして武が見せてきたのは黄金の蛇の指輪二つ。洋子がいつの間にか持っていた指輪と同じものだ。武が二つ持っているのはもともと持っていたものに加え、以前泣き女が持っていた指輪を回収したからだ。
「この指輪を三つ集めることが今回のバトルロワイアル勝利条件だ。そして参加条件は存在しない。あの異界にいる全員が参加者といってもいいだろうな。」
「指輪を集めるってどこのドラゴンボールだよ。願いでもかなうってのか?」
「ふれこみはそうらしいな。指輪を三つ集め、罪人の魂を清め集めればどんな願いもかなう黄金の林檎が手に入る。」
「ありえないだろ。さすがの私でも騙されないぞそんなの。」
「洋子は知ってたのか?」
「…はい。夢の中に天使みたいな人が現れて同じようなことを言われました。でもまど…真藤さんが絶対にありえないと。」
「…。」
「問題はこれに乗せられて動いている間抜けがいることだ。指輪を持つ人間は既に公開されている。俺とお前を除くと、ほかに指輪を持つのは三人、アーマーン、レオニダス、そして御手洗宗次だ。」
「アーマーンと御手洗さんは知ってます。ほら前に清ちゃんが襲われた。」
「ああ。覚えてる。特に御手洗のほうは忘れようがねえよ。」
アーマーンは第一回バトルロワイアルで清志を襲いマンイーター討伐を横取りした男であり、御手洗は泣き女を倒した後、清志たちに襲い掛かり魔導王に追い払われた狂人のことだ。御手洗のあの異常なテンションはさすがに忘れられなかった。
「レオニダスというのはどなたでしょうか?全く知らないのですが。」
「最近になって表舞台で目立ち始めたプレイヤーだな。今問題なのはこの御手洗とレオニダスだ。こいつらはあの指輪のために積極的に罪人を清めている。」
「清めるって具体的に何してんだよ。」
「人を殺してるってことだ。この二人を止めるには戦力が足りない。協力してくれないか?」
淡々と武はそのように話す。漫画の世界ならよくある話だろうが、日本という安全な国に住む清志たちにはその実感はわかなかった。自分たちがまきこまれているのは生死をかける戦いの場であったことに。
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