第65話「江の島」
そしてついに合宿当日となった。清志、皆夫、瞳、洋子、そして洋子の父親の白夜とその友人麻里佳、魔導王、千歳とリズ、あとリズの義兄のシドの総勢10名という大所帯である。車を二つに分けやってきたのは神奈川県にある、観光地の江の島だ。
「「海だ!」」
到着した洋子と瞳はめったに見れない海に大興奮であった。一方清志と皆夫のテンションはとても低い。
「どうしたのですか二人とも。せっかくの海ですよ?」
「そうだぞせっかくの旅行なんだ楽しまないと損だぞ!」
「二人はいいよね。難易度スーパーマン迄クリアできたんだから。」
「俺たちは人間もクリアしてねえんだぞ。つまり…。」
「「四日間断食旅行。」」
うなだれる二人の元へシドがやってくる。にやにやと少々いやらしい笑みを浮かべながら、二人に言った。
「さあ、今日は海でのトレーニングの後にチャレンジの続きだ!しっかりステージは作ってあるから頑張ってくれたまえ少年たちよ!」
『一度昼食時には帰って来い。そのチャレンジとやらが達成できようとできまいとな。』
「はいよ、それじゃあ行くぜお二人さん!」
「え、もしかして観光なしですか!?江の島なのに!」
清志と皆夫はシドに引きずれていってしまった。洋子と瞳はすでに難易度スーパーマンまでクリアしているので彼らについていくことはなかった。瞳と洋子は戦地へ赴く二人に合掌した。
「なあ魔導王、清志たちは海行くのか?」
『ああ、だがこちらはまずは観光だ。お前は瞳たちとともにいろいろ回って来い。俺はこれを一度休ませてくる。』
魔導王の背中には車酔いでダウンしている千歳がいた。リズは若干不服そうであったが、昼食に良い店を探して来いという指令を受け納得したようだ。
「リズたちはすっかり魔導王と仲良しだな。」
「うん。すっごく優しいぞ。」
「
「はい。だからあだ名が
「そうかあ。」
「清志君たちはしばらく戻ってこれそうにないなー。まずは私たちで回ろうか。」
「先輩あっちにな、シラス売ってる!」
「貴女たち、シラスソフトって知っているかしら?」
「「「シラスソフト!?」」」
「そういうのは後だあ、まずは岩屋行くぞ岩屋あ。」
白夜に言われるがまま江の島の有名な海食洞窟である岩屋へ行くことになった。徒歩20分かかる道のりで、結局午前中はそこしか見ることはできなかった。
そして昼食の時間となった。
「すごかったな。夏なのに涼しくてさ、洞窟の中に橋があったんだ。ライトアップされてておとぎ話の世界みたいだったぞ。」
「竜の銅像がいい感じでした。あれはただの演出なのでしょうけど、ああいうのは大好きなのですよ。」
「よかったね。」
「はあ。」
江の島にあるファミリーレストランで昼食をとることになったのだが、結局清志たちはチャレンジに失敗してしまったらしい。ドリンクバーのみという可哀想な状況であった。
「ほら私のハンバーグをあげよう。だから元気だしなよ二人とも。」
「そういうわけにいくかよ。約束は約束だ。」
「頑固ですねー。っていうかさすがにシドさんも大人げないのですよ。」
「なっはっはっは!これも愛の鞭だ。」
シドも気を使っているのか飲み物しか注文しなかった。しかしこれが四日間続くのは瞳たちも困ってしまう。
『なんだ、まだクリアできんのか?』
「うっせ。」
『断食ではトレーニングの意味がなかろう。仕方がない、あれに勝つための知恵ををくれてやる。』
そういうと魔導王は二人の頭をにそれぞれ手を置く。どうやら念話で情報を渡しているらしく、二人は難しい顔をしていた。
「なんのまじないだよ魔導王?それで俺様に勝てるっていうのはちょっと慢心が過ぎるんじゃあねえの?」
挑発するシドを無視して魔導王は千歳たちに声をかける。
『千歳、リズ。ちょうどいいお前たちも見学しろ。』
「何を?」
『何、時間はとらせん。この慢心男の鼻を明かす瞬間を見物するだけだ。』
「本当にそんなんで勝てんのかよ。」
魔導王は自信満々といった様子だが、清志たちは納得いっていない様子だった。清志と皆夫はこの旅行でご飯が食べられるようになるのだろうか。おいていかれた瞳たちは心配しながらも、観光雑誌を広げて次に行く場所について心を躍らせていたのだった。
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