第33話「出動オカルト部!」

 最近噂になっている泣き女について調べためオカルト部部長を名乗る鎌取環を訪ねた清志たちだったが、その癖の強さに清志は辟易してしまっていた。面倒なのでもう帰ってクレイジー・ノイジー・シティに向かいたいと思っていたのだが、それも皆夫に止められてしまった。今日は瞳もクラスの用事で不在、洋子も部活で不在さすがに一人で行くわけにもいかないのでとりあえず話を聞くことにしたのだった。


「泣き女の噂っすか?」


「そうそう環ちゃんなら何か知ってるかなって思ってさ。」


「もちろん知ってるっすよ!でもどうしてそんなこと調べるんすか?私が言うのもなんですけど、暇人ぐらいしかこんな話信じないっすよ。」


「本当に自分で言うことじゃねえな。」


「まあ僕たち帰宅部だし暇だからねー。」


「あーそういえばお二人とも剣道部やめちゃったんですよね。なんでしたっけ確か部員の…。」


「それは今はいいってもー。」


 話が脱線しそうになるので皆夫がたしなめる。すみませんっすと謝ると環はコホンと咳払いをして話を始めた。


「泣き女の噂はゴールデンウィークが明けた五月八日の放課後に起きた寿高原高校の女学生の事故から始まってるっす。部活の終了したのち帰宅途中だったその女生徒を背後から全身が濡れた怪物のような女が泣くような気勢を上げて襲い、左腹部に重傷を負ったとのことっす。悲鳴を上げたことでその女は逃げ女生徒は病院に搬送されました。その日以降二度似た事件が発生してどちらも軽傷でしたが、目撃者が話を広げて現在に至るっす。今はちょうど最初の事件から一週間後ですから頻度はすごいんすけど、未だ警察は足をつかめてないみたいっすね。」


「なるほどな。ってことはこの一週間以内に三回同じ事件が起きてるってわけか。被害者は全員寿高原高校の生徒ってことでいいのか?ほかに共通点とかは…。」


 質問しようとする清志の口元近くに環は人差し指を立てちっちっちと横に振った。


「これ以上は簡単にはしゃべれないっす。ちゃんと情報料をいただかないと。」


「…中学生のくせに金銭やり取りするつもりかよ。俺あんまり金ないんだけど。」


「ちがうっすよ。これっす。」


 そういって環は二人にある用紙を渡した。それを見てみると、入部届と書かれている。


「これ以降の話が聞きたいなら情報料としてオカルト部に入ってもらうっすよ!」


「そっか。今日はありがとな。じゃあまたいつか。」


「ちょっと待ってほしいっす!?」


 笑顔で立ち去ろうとする清志の足を縋りつくように環が縋り付いた。逃げようとするも必死な環の力はもはや女子中学生の領域をはるかに凌駕し例え火あぶりに去れようとも手を離さないすごみがある気がした。


「離せ!俺は帰る!ゲームする!」


「逃がしてたまるかっす!やっと非公式から解き放たれる日が来たんです!かりぱく部室が公式化する日が来たんす!」


「かりぱくだったんかい!」


「清ちゃん…二年生になって一番のさわやかスマイルがこれってどうなのさ。」


 その後しばらくもめたのち根負けした清志は皆夫を道づれにオカルト部へ入部することになったのだった。


「それじゃあ張り切っていくっすよ!新生オカルト部出動っす!」


「おー!」


「…皆夫お前これ狙ってたろ。」


「そんなことないよー?」


「噓つくんじゃねえなんだその(∀`*ゞ)テヘッって顔。」


「やっぱり楽しい学校生活送りたいからね!こういうの悪くないでしょ?」


「…ノーコメント。」


 掌の上な気分がぬぐえなかったが、清志は陽気な二人におとなしくついていくことにしたのだった。向かう先は寿高原高校である。

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