第28話「討伐競争戦」
四人パーティが可能になってから一週間、セントラルでの生活も慣れてきた。魔導王がいつもの公園からセントラルのすぐ近くへ移動できるルートを作ってくれたことで、清志たちはより簡単にセントラルへ行くことが可能になった。しかしそのワープルートの制作に魔力を使いすぎたことと、清志たちが持ち帰ったエピックウェポンとマナの解析のためリズと千歳のエピックウェポンの制作は当分後回しになるらしい。リズは洋子たちだけずるいと文句を言ったらしいが、別に作らないわけじゃないと説得したところ簡単に納得したようだ。
また魔導王は清志たちのエピックウェポンのもアップデートを施した。というのも性能の変化ではなく、アンノウンを倒して得たエネルギーの一部をマナに変換する機能を取り付けたのだ。これのおかげでセントラルでも動きやすくなったのは言うまでもない。アンノウンは倒しても素材などが手に入らない。よってギルドが求めるのはマナだ。ギルドは討伐対象を紹介する代わりに仲介料として倒した敵のマナの一部を要求する。清志たちはアンノウンのエネルギーの一部しかマナに変換できないためこれもばかにはならないが、ギルドでのコネは作る方がいいと判断した。というのもギルドは清志たちが必死に探しても見つけることが難しいダンジョンの情報も多数集めていることが分かったためである。魔導王も魔力回収の観点からダンジョンを攻略することが一番の近道だという。よって清志たちは情報料を稼ぐため日々奮闘しているわけである。
そんな中セントラル中にあるポスターが張られることとなる。「第一回バトルロワイヤル 討伐競争戦!」と書かれたそれには近日始まるイベントについて記載されていた。
「参加自由、最大五人のパーティで特定の強力なアンノウンを倒してそのスピードを競う…優勝賞金は一万マナ!?」
ということで清志の強い希望により、このバトルロワイヤルに参加することが決定した。ちなみにマナの結晶は一つ約百円ほどの価値である。
「それにしても清志君気合入りすぎじゃないか?」
「仕方ないですよ。もうマナが欲しくてほしくてたまらないのです。」
学校の昼休み裏庭で昼食をとっていた清志たちであったが、清志は昼食などには目もくれず作戦を思案していた。その光景に瞳は困惑する。
「なんでもマナと魔力が十分集まったらマナを使ったブースト装置を作ってくれるって魔導王が約束したらしいよ。」
「魔導王はいまマナの研究に熱中しているみたいでエピックウェポンのことなんてそっちのけみたいですよ。新しいおもちゃをもらった子供みたいだったのです。」
魔導王が言うにはマナを使うことでより高威力または低エネルギーでエピックウェポンを使用できるらしい。とくに体力消費の高い皆夫や洋子にはありがたい処置だ。
「私のリフレクタルインパクトは一発で戦闘不能になっちゃいましたしね。魔導王に文句言ったら、『お前たちのような脆弱なガキにも低リスクに使えるようにしてやったのだからむしろありがたく思え』だそうです。」
「まあなんとなくわかったけど、それなら別に清志君はあんまり意味ないんじゃないか?足場が強化されても…まあ単純に威力は上がるからいいのかな?」
「清ちゃん僕たちと違って何やらいろいろ魔導王と話してるみたいだからね。案外マナを使った必殺技をつけてあげるとか言われてそそのかされているのかも。」
「あーあり得ますね。一人だけ地味で劣等感すごいみたいですし。」
「子供だなー。まったく。」
そんな生暖かい会話も清志の耳には入らなかった。昼休みぎりぎりまで作戦を練り続け、急いで教室に戻る羽目になったのだった。
「…。」
「どうしたの清ちゃん?」
下駄箱で靴を履き替えている中立ち止まる清志に皆夫は声をかける。
「なんでもねえよ。急ごうぜ。」
「いやこれ清ちゃんのせいだからね。」
「悪かったって。」
「…。」
瞳は清志の下駄箱を覗き見る。そこには複数の画びょうと紙が入っていた。嫌な予感がして瞳はそれを開く。赤い文字で殴り書きされたそれを見てぞっとする。
【死んじまえこの人殺し】
浮かんだのは了司の名前。なぜこんな陰湿なことをするのだろうかクレイジー・ノイジー・シティだけではなくこの学校生活自体も注視しなければならないのだと改めて思い始めた。
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