第23話「女王の命令」
体力も回復したので四人はボスの扉の前に立ち準備をした。
「ここのボスってたぶんあれだよな?」
「まあ今までの敵からしてあれだよね。」
今まで出てきたトランプ兵たちはデビファンに出てくる不思議の国のアリスをモチーフとしたエネミーである。そしてそのラスボスといえばほとんどの日本人が予想できるものである。
「行くか。」
清志たちは扉を開きボスの部屋に進んだ。
その部屋は今までの館の雰囲気とは全く違い外から青空の差し込む王宮の玉座の間だった。その玉座に座りこちらを見下ろすのは赤と白のドレスを身に着けた美しい王女、ハートの女王だ。
「土足で我が城に踏み入る愚か者共め、判決を言い渡す。死刑!即刻首をはねよ!」
「「はっ!」」
女王の命令がくだり巨人と騎士は動き出す。愚か者共である清志たちの首をはねるべく巨大な刃物を持って襲い掛かった。
「やっぱりね。手筈通りに行こう清ちゃん!」
「おう!まずは…!」
清志が最初に向かうは女王の元。女王は戦闘能力は低いものの配下の二人を一定時間ごと強化回復してくる厄介な敵だ。最初にたたくのがゲームでの定石なのだった。
「あ、清ちゃん!」
「なっ!?」
攻撃しようとした清志だったがその時その攻撃は横から入ってきた巨人の鉈でガードされてしまった。追撃が難しいと判断した清志は一度皆夫の元迄後退する。
「あれ?ジャックにデコイ機能なんてあったっけ?」
「結構昔の敵だし強化修正来たのかもって!」
騎士の攻撃が皆夫を襲う。刀でガードするも騎士は追撃を続ける。その動きは流麗で皆夫は少々押され気味である。そして巨人も清志を攻撃した。動きは騎士ほど早くないものの、そのパワーは簡単に清志のガードをはがしてしまうほどだった。二人は防戦一方となってしまう。
「なんか妙に強くないこの二人!?だんだん攻撃が重くなってる気がするんだけどさ!」
「あれだな…女王のせいだろ。やっぱ女王倒さないときついんじゃないか!?」
「そんなこと言っても手が足りないよ!」
今はまだ大丈夫だが、じり貧だ。このまま続ければ負ける未来がありありと見える気がいた。しかし前にもこんなことがあったなと清志は思い出した。
「大丈夫だぞ二人とも!」
「瞳!?」
その時二人に瞳が声掛ける。困惑する二人に目もくれず瞳は叫ぶ。
「くらえ!
瞳の杖がピンク色に光ったかと思うと、巨人と騎士が清志たちを無視して瞳へ襲いかかった。それを瞳は防壁を展開し防御する。
「今のうちに女王を倒してくれ!」
「ちょ!瞳ちゃんそれは危ないって!」
皆夫はなおも困惑して心配の声を上げるが、清志は違った。
「最高だ瞳!すぐに倒すからそれまで耐えてくれ!」
「おうよ!」
清志の声に瞳は笑って答えた。それを見て皆夫も笑う。彼女は守るべき友人であるが信頼できる仲間でもあるとわかったからだ。
「よし!しまってこう!」
攻略のためには女王を倒すことが必須であるわけだが、それにも難関がある。それは女王を守るシールドだ。ゲームでもこのシールドを破るのに苦労し巨人たちに攻撃を喰らい続けやられたプレイヤーは多いだろう。清志たちも女王への攻撃でその耐久値を減らしているがすぐに突破とはいきそうになかった。
「やっぱり固い!でもあんまり必殺技を使うと後がきつそうだし…どうしようか清ちゃん?」
しびれを切らした皆夫がそう問いかけるがその時清志は空中でジャンプしていた。
「…何してるの清ちゃん…。」
「ジャンプジャンプ。」
「いやいやいや今やることじゃあないでしょ!?」
普段突っ込みキャラ出ない皆夫ですら突っ込んでしまった。後ろでは瞳が必死に怪物たちの攻撃を引き付けているというのに何を遊んでるのかと思った。しかし清志は空中をはねながら言う。
「なんとなく感覚つかんだんだけどよ。この足場…結構弾性があるんだよな。少しの力でこんなに飛べる。」
「だからそれはあとにしようって!」
「そうならこんな風に…。」
清志は体を地面と平行にするとそのまま空中を蹴った。足場が生成されそれを踏みしめ飛ぶ。そして女王のもとへ一直線に向かい切りつけた。
「きゃ!おのれ!」
女王のシールドがゆがむ。皆夫の渾身の振りでもそのようにはならなかった。つまり清志のあの一太刀は警戒に見えどもそれほどの威力があるのだ。そしてそのまま清志は体の態勢を変えまた空中を蹴る。そして女王を切りつける。また態勢を変える切り付けるそれを何度も繰り返す。
「すっご…。」
まるで分身しているかのように清志の斬撃が無数に女王を襲った。そしてついに紹鴎のシールドは破壊され清志はその首をはねた。
一方瞳はなかなかつらい状況だった。勢いに任せて引き受けてしまったものの、チャームとホリーウォールの合わせ技は多くの体力と精神力を瞳から奪っていく。強化された騎士と巨人の攻撃を受け続けることはさらに瞳に重圧をかけた。
『瞳。壁の範囲は最小限でいい。少しずつ、少しずつ縮めてみろ。その方が長く持つからな。』
「やっては見るけどさ…結構きついんだよ今…。」
『だそうだ。そこの貧弱男。何もできんのか?』
「お、おらが?」
『そうだ。このまま役立たずで終わるならそれでもかまわんがな。』
「おらは…。」
このときまでククリはただおびえてみんなを見守るばかりだった。魔導王の言葉で認識する。自分は食糧を運ぶという誰でもできることしかやっていないこれでは足手まといと何が違うというのか。自分の目的は強くなることだならば今なにもしないでいつ動けるというのかと。ククリは考えた。自分のできることを人生から思い出し現状の打破する策を巡らせる。
「…攻撃をちょっとでも止めればいんだな?」
『そうだ。』
「ならこれでどうだ!?」
ククリは片手を前へ突き出し呪文を唱える。それは自分もよくは知らない古代のまじないしかし彼が幼いころから使えるなんてことのない魔法だった。
「足元つっかえろ!」
ククリがそう叫ぶと騎士と巨人の足元の地面が崩れる。踏み込むと同時に崩れたことで二体は態勢が崩れ攻撃が数瞬止まった。
「いまの…うちに!」
その隙に瞳は防壁を最適化する。体力の消耗は激しいがまだ持ちそうだ。
『ふん…ならばそのまま攻撃を妨害しろ。少しでも持ちこたえるのだ。』
「わかっただよ!」
それから数分が経過した。瞳とククリの息は荒くなり、既に体力の限界が来ていた。
「もう…だめ…。」
目がかすみとうとう瞳は杖から手を放してしまう。防壁が解除され倒れそうになる。目の前の怪物たちはとどめを刺さんと刃を振り上げた。
「よくやったな瞳!」
その声が聞こえたと思ったとき、目の前の巨人の頭が吹っ飛んだ。
「アズール・ライヨ!」
騎士も雷撃を喰らい燃えて消えた。
「ははっなんだよかっこいいじゃん。」
気が付いたとき瞳はすでに清志に抱きかかえられていた。まるで勇者が囚われの姫を助けたかのように優しく抱えられ、そして笑顔を向けられた。
「お前がいなかったらやばかったな。本当助かったぜ。」
「だろう?もっと褒めてくれていいんだぜ?」
こうして、清志たち一行はこのクレイジー・ノイジー・シティにおいて初めてのダンジョンを攻略したのだった。
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