第17話「クレイジー・ノイジー・シティ」

 再度異界へと足を踏み入れた清志たち。しかしそこは以前のような森ではなくゆがんだ大都市のようなまったく別の場所に変貌していた。傾くビルや建物のいたるところに設置されているモニターには奇怪な男が映り、高いテンションで話している。


『ルールはいたってシンプル!この世界にはびこる怪物アンノウン、アイテムを用いてみんなは一人一つ与えられた魔道具エピックウェポンを使ってこれを討伐してほしい!より多くより強いアンノウンを倒すほど自分のエピックウェポンを強化できるぞ!そして月に一度行われるバトルロワイヤルでその実力を示してくれ!順位に応じて豪華な賞品を贈呈するぜ!』


 モニターの男はまるでゲームの説明をするかのように高らかに言った。清志は困惑しながら助けを求める気持ちで魔導王に電話をかけた。


「おい魔導王!なんか変なところに来ちゃったんだけど!?」


『わめくな。俺もお前たちの状況は把握している。』


「一体ここはどこなんですか?まるでゲームの中見たいな…。やっぱり間違えてきちゃったんでしょうか?」


『いやそこは昨日お前たちが入った異界で間違いない。同じ場所ではあるが変貌したのだ。』


「変貌だと?」


『その場所はお前たちの生きている世界よりもずっと不安定なのだ。何かが干渉すれば大きく姿を変える。その結果今のような世界へと変化したのだろう。』


「その何かって…?」


『知りたければまず、あのモニターの男を探すしかあるまい。まあそれ以外はやることは変わらん。アンノウンを倒し帰還しろ。これより一時間その世界の滞在を許可する。あと、顔は隠すんだな。以上だ。』


「あ、おい!」


 そうして電話は切れてしまった。清志は舌打ちをしてモニターを眺めた。あの男を見つけ出す。手掛かりはあの映像のみだ。まずはこの世界を見て回る必要があるのは確かだ。その時、モニターの男トルティーヤは興味深いことを言った。


『あ、そうそう大事なことを忘れてた。プレイヤー同士の戦闘は問題なっし!倒して相手のエピックウェポンを手に入れよう!そのまま使うもよし、壊して自分の武器を強化するもよし!いいことずくめだぜ!』


 そうして清志は彼の言うバトルロワイヤルのルールが見えてきた。獲物を狩り、ほかのプレイヤーを狩る。どこまでもシンプルで闇の深いルールだ。もしこれが本当にデビファンだとしたら、クレームが殺到するものだろう。


「とりあえず顔を隠してあたりを調べてみよう。話からしてほかにもこの世界に入り込んだ人間がいるかもしれない。」


「その上敵になるかもしれないってことだね。僕と清ちゃんはこのエピックウェポン?で変われるのかな?瞳ちゃんたちはどうしようか?」


「確か魔導王が、武器がない間はブレスレットに仮面が入ってるって言ってたぞ。」


 瞳と洋子はブレスレットを起動し仮面を取り出した。それはマシュマロにくつろいだような目と顔をつけ両頬にぷえいとひらがなで書かれた仮面だった。ふたりはその仮面を凝視する。


「いいなこれ!」


「うそでしょマジですか!?」


 瞳は喜んでその仮面をかぶった。その着け心地は意外にもよく首を大きく回しても外れる気配もなく、視界も良好だった。


「なんですかこのデザイン!?手抜きにもほどがありますよ!なんか気が抜ける!」


「これ魔導王が作ったのか…声しかわからねえけど、あいつが?」


「いいじゃないか洋子、かわいいぞ?」


「かわいいかかわいくないかで言えばシンプルイズベストですよ!でも雰囲気に合わないんですよここの!」


 結局二人は仮面をしっかりつけて行動することになった。一方清志と皆夫はエピックウェポンを起動させ、姿を変えた。皆夫も清志と同じようにゲームアバターに近しい姿へ変身した。


「おー、やっぱり使用者のイメージで姿が変わるのかな?でも背丈は変わってないし…でも実体はあるみたい。」


 皆夫は長い青髪と侍然とした和服になっていた。小柄である皆夫はより幼く見えもするが、そのたたずまいはどこか力強いものである。


「どうなんでしょうね。でも二人とかっこいいですよ!」


「ありがとう洋子ちゃん。洋子ちゃんたちも仮面似合ってるよ。」


「それは嬉しくないのです。」


「じゃあ、気を抜くのはここまでだ。絶対に離れず、固まって行動するぞ。」


 清志は前を見据え目を細めた。何かが人型のものが走ってるのが見えた。どんな物事にも大切であるのは情報だ。まずはそれを集めなければならない。ほかにこの場にいる人間がいるならリスクがあるとしても接触を試みるべきだと思った。


「今誰かがいた。追うぞ。」


「okだよ清ちゃん!しまって行こう!」


「私は全く見えなかったけど、ついていくぜ旦那!」


「料金は一時間三万円コースなのです!付けは十一で許してあげますよ!」


「緊張感を持て緊張感をおおお!」


 四人は人影を追って走り出したのだった。

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