第1話 ニュッポンの夜明け。
『今朝のニュースです。本日、五月九日よりこのニュッポンにおいて新たな法律が施行されました』
「うわぁ……マジかよ。アレって本当だったんだな~」
リビングのテレビから流れる朝のニュースを観ながら、一人の男子高校生が朝食のトーストをパクリと
何気ない平和な日常の風景のようにも見えるが、彼が生まれた頃の日本は波乱に満ちていた。
――二十一世紀の日本。東京オリンピック開催に伴う景気回復の願いとは裏腹に、この国は様々な天変地異による災害や感染症に襲われた。
過酷な貧困や病気に
そんな時、彼らの為に立ち上がったのは、若き政治家たちだった。
革新的な政策を打ち出した新政府は、迅速な対処でそれらを乗り越えた。彼らのお陰で、日本は新たに生まれ変わったのだ。
歓喜に打ち震える国民。それに伴い、支持率がうなぎ上りとなった新政府。
莫大な信頼を得た新政府はその実績を確固なものとするため、国名をニューニッポン、通称ニュッポンと改め、この国は新しい時代の幕開けを迎えた。
しかし、ニュッポンとなった後でも不景気や少子化などの問題は未だ山積みであった。
長年これらに対して頭を悩まされ続けた旧政府だったが、既に柔軟な対応を可能にしていた新政府はこの問題を解決するため、誰も実行しようともしてこなかった法案を打ち出した。それは――
『性技術の免許化』
そう、性に関するプロフェッショナルの育成だった。
つまり性行為のプロを教員とし、正しく楽しい性教育を受けさせることで人口増加を図ったのだ。いわば性産業の開発である。
従来の義務教育のプログラムに新たな6つの先進的な性教育観点(Six Advenced View Sexual Knowledge)の頭文字を取った通称サブスク(SAVSK)を盛り込み、その専門家を育てることになった。
そしてその6つの観点とは以下の通りである。
1、適切な性行為を
2、正常な感性を
3、責任のある行為を
4、家族の幸福を
5、自立と自律を
6、愛と快楽を
この取り組みを行うにあたり、まずはテスト段階としてランダムに選ばれた学校で性教育について学ぶクラブ(表向きは生態部)を設立させ、学生の反応を見ることにした。
――しかしこの時、優秀な頭脳を持った新政府も想像していなかった事態が起こってしまったのだ。
なんとその活動の中で、性に対する特殊な技能を持つ生徒が発見されたのだ。
そして先ほど登場した男子高校生、
まさに日本の新しい夜明け。
ニュッポンを代表する男の誕生。
そう、奇しくもこの法律が施行された今日――五月九日は、彼の誕生日でもあった。
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