May9ラブ~えちちなチートに目覚めた俺は学園の女子達のオモチャにされています~

ぽんぽこ@書籍発売中!!

勇気を出してモデルと同じ髪型にしたのに翌日には芸人ヘアーになってること、あるよね。

第0話 女神の祝福。

『――少年たちよ、私の……女神の声が聞こえていますか……?』


『聞こえていたら、どうか私の忠告を聞いてください……。そう、他でもない貴方が――取り返しのつかない過ちを、悔やんでも悔やみきれない後悔を――絶望に泣き崩れ、一生残るであろう悲しい思いをしないためにも……』



 ――この世界には神々がいた。


 この世界とはもちろん、我々がいる地球である。


 超常の力を持つ神々は、人知の及ばぬ場所から我々を優しく見守ってくれていたのだ。そう、全ての生物が健やかに暮らせるように……。


 とは言え神々も全くの万能、というわけではない。より多くの者に手を差し伸べるため、彼らにも担当というものがあった。



 人間を愛する神――その中でも、現代の日本に住まう者たちを受け持っていた女神は、先ほどから国立西史せいし高等学園という学び舎に居る少年たちへと必死に呼びかけていた――。




「えっ、お前……ゴールデンウイークの間に彼女とヤッたの!?」

「マジかよ~!? あの大人しそうな中田ちゃんだぞ!?」

「しっ……お前ら、声がデカいって!!」


 クラス替え後の大型連休をどれだけ楽しんだのかでマウントを取り合う、思春期真っ只中の高校生たち。


 この2年B組教室では一番の抜け駆けをやらかした男子を中心にして、イヤラシイ顔をしながら楽しそうにエッチな会話で盛り上がっていた。


 動画や本での知識しかない彼らにとって、それは興味を引くに十分な話題なのである。



「ご、ごめん。……で、どうだったんだよ?」

「ふふふ、詩乃のカラダは最高だったぜ。濡れまくりのイキまくりよ。ま、俺のテクのお陰だな~」

「「「おおおぉぉおお~っ!!」」」



 ちょっと前まで童貞だった癖に、ドヤ顔でオンナの扱いを語る自称イケメン。


 ファッション雑誌で覚えたばかりのヘアワックスで頭髪を整え、腕にはオシャレを意識し始めたのか銀色に輝くアクセサリーが嵌まっている。


 そんな彼に対し、まるで神を崇めるかのようにキラキラと尊敬の視線を寄せるモブ男ズ。


 そう、これは一足先にオトナになった男の特権なのである。


 1と0が明確に引かれている一線を越えた、まさに勇者。イチモツが付いている者であれば誰もが認める、漢の中のオトコなのだ。



 ヤイノヤイノと友人たちに煽てられ、グングンと伸びていく鼻。


 ついつい調子に乗ってしまったのか、次第に虚飾と妄想がマシマシになった彼女との思い出をペラペラと皆に聞こえる声で自慢げに話している。


 もはやこれでは天狗というより嘘つきのピノッキオだ。


 そして赤裸々で嘘まみれな体験談を素直に信じてフンフンと鼻息荒く聞いている、哀れな子羊たち。


 というより生々しい行為を聞いて興奮したのか、下半身の一部を伸ばしているようだ。その姿はまるで前屈みになっている子ザルたち。


 遂に我慢出来なくなったのか、ひとり、またひとりとトイレへと消えていく。




 少年たちの身を心配する女神の言葉なんて、まるで届いてなどいなかったようだ。


 初心な女神は彼らの卑猥な会話やトイレでの行為を見聞きしてしまったせいで、その美しい顔を真っ赤にしていた。



『まったく、男の子はエッチなんだから!! ……って、そうじゃないわ。このままではあの悪魔が――あぁっ、間に合わなかった!!』



 ――どうやらもう、手遅れだったようだ。

 女神ですら恐怖する、あの血も涙もない悪魔が動き出してしまったのである。



 最悪なことに、その恐ろしい悪魔は――なんと彼らと同じ教室に居たのだ。


 これから起こるであろう悲劇を察した女神は己の無力さに唇を噛みしめ、悔しさと悲しみが混ざった表情を浮かべる。



『ここまで来たら、最後までちゃんと見届けますわよ……!!』



 そう自身を奮い立たせ、再びその教室へと涙で潤む瞳を向けた。





「ちょっと、詩乃! 彼と……その、シタってマジ?」

「ん? あー……うん」


 教室に居たのは、ブレザーの制服に校則ギリギリまで短くしたスカートを身に着けたギャルっぽい女子生徒。男ウケのしそうなユルふわパーマをした茶髪の彼女が悪魔……ではなく、詩乃と呼ばれた地味な見た目の彼女である。


 彼女こそが女神も恐れる人の皮を被った悪魔であった。



「このクラスのアイツでしょ? 付き合って一ヶ月ぐらい?」

「詩乃にしては今回は遅かったね~。で、どうだったの?」


「んー、過去イチで下手だったわ。演技マジだるかったし、もう別れるかも」

「「「ウケる~っ」」」



『ああっ、やはり今回もあの悪魔の犠牲者がっ!! 陰でボロクソに言われて可哀想な純情なボク達……じゅるり』

『……さっきから見ていたんですが、何をしているのですか人間担当の女神よ。貴女、何年も前から少子化している国を救うんだって息巻いていませんでしたか?』

『うげっ、なんでここにウイルス担当の男神が!?』



 さっきまでの憂いを帯びた顔は何だったのか?


 まるで漫画かドラマを楽しむ乙女のように、キャイキャイと一人で盛り上がっていた女神を不審に思った同僚の神がいつの間にか隣にやってきていたようだ。



『だ、だって! 何度ワタクシが男女の仲を取り持っても、ぜぇ~んぶ台無しにする悪魔の様なチャラ男やビッチがワラワラと湧いてくるんですよ!? こんなの、ワタクシにいったいどうしろって言うんですか!!」

『こんなのって……我が子である人類をそんな汚い言葉で罵らなくても……』


『もう真面目にやるのなんて嫌ですのっ!! アイツら愛だなんだと高尚なこと言っておきながら、陰でやっていることはアニマル以下なんですもの!!』

『お、おう……そうなのか。なんだか大変だったんだな……』



 遥か昔から人間の営みを見守り続けてきた女神だからこそ、その眼で人間の醜い部分も長い間見届けてきたのである。苦労も報われず、いい加減投げ出したくなるというのも何となく分かってしまったウイルス神。



『もう……いっそ滅ぼリセットしてしまおうか……』

『やめろっ!! そんなことをしたら我らの主神に怒られるどころじゃ済まないぞ!』

『だってぇ……!!』



 もうこうなったらやけっぱちである。


 『最初から無かったことにすればもうこんな思いもしなくて済むのでは……?』


 そんな考えに囚われてしまったのか、何か怖い呪詛の様なものをブツブツと唱え始めてしまっている。


 ――最早この女神、核爆弾の起爆スイッチよりも数倍危険である。



 さすがにそれはマズいと思ったウイルス神が、なんとか人類滅亡を避けるために手を差し伸べた。



『わ、分かった。俺が手を貸してやるから。な? だからすべての男性のアレを機能不全にしようとするのを今すぐやめてくれ。それは俺も怖い』

『ぐすっ……ほんとぉ……?』



 白く嫋やかな手で何かを切り落とすスイングを始めていた女神が、涙で濡れた瞳でウイルス神を見上げる。


 普段なら絶世の美女神なのに、なぜだか今は恐ろしい鎌を持った死神のように見える。鎌でカマにされそう。



『あぁ。その人類が愛に溢れ、健やかな営みを送れるような能力を持てるように俺の力を込めたウイルスを人類に植え込もう』

『そんなことが出来るのっ!?』

『全ての人類、というのは適正もあるから無理だろう。だが少しずつ浸透すれば、いずれ繁殖も増え、地球は豊かになるだろうよ』

『やったぁー!! ウイルス神大好き!!』



 美しい女神に抱き着かれ、満更でもない様子のウイルス神は早速とばかりに地球に向けて自らの力を分けたウイルスを送り込んだ。



『ふふっ、これでもう安心ね。ねぇ~ウイルス神。私……』

『まったくしょうがないな、女神も。俺が自ら人類の手本となるような素晴らしいメイクラブをお前にも教えてやろう』

『キャーっ!! エッチ!! でもウイルス神かっこいぃ……』



 瞳にハートマークを浮かべ、ウイルス神の腕を引いてそそくさとベッドのある空間へ消えていく人類担当のチョロ女神。



 こうして日本全国に未知の異能覚醒ウイルスがばら撒かれた。


 男神がどんなウイルスを撒いたのかも、それがどんな影響を及ぼしていくのかも確認せずに。



「あんっ……ちょっと!! 今誰か私に何かしたっ!?」

「は? 誰も触ってすら……ああぁんっ!!」



 そう、誰も想定すら出来なかったのだ。

 女神たちの安易な行動が、まさか人類にエッチな異能を覚醒させるなどとは。



「ね、ねぇ……なんかアイツ見てるとドキドキしてこない?」

「あの根暗男が? ははっ、まっさかぁ~。あ、あれぇ? ……んああぁっ」



 ましてや日本の命運を握る男を生み出すなんて、神ですら予想しなかったのである。


 そして何の因果かその男とは、



「んみゅ……お姉ちゃ……」



 先ほど女神が覗いていた学園の2年B組教室で学友たちの輪に入ることができず、自分の机に頭を伏せてスヤスヤと惰眠を貪っていた男子生徒であった。



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