不安
「もしも、うちの施設でクラスターが発生したらどうなるんだろう?」
そんな会話が職員のなかで何度も行き交っていた。
コロナになったから二年も経つ。
どうにか工夫して感染予防につとめているのだが、テレビのニュースではどこそこの施設でクラスター発生しましたというものが毎日のように飛び込んでくる。
「名前でるんだよね」
「うん、でるみたいだね。なんかいやだなあ。悪いことしているわけじゃないのに名前を公表されるなんてさ」
「そうそう。本当だよ。こんなに頑張ったいるのに、公表されたら絶対に差別されそうじゃん」
それもよくきく。
クラスター発生した病院に勤めているだけで「子供をこさせないでください」とか「あなたの奥さん看護師なんだろう?仕事こないでくれる」とかいわれるそうだ。
なぜ、そんな差別をうけなければならないのか。
自分たちは感染リスクに怯えながらも頑張って介護や看護しているというのに世間の目の冷たさを感じてしまう。
「でも、本当にどうなるのかな? 職員が感染したら、だれがおじいちゃんお婆ちゃんのお世話するの?」
「感染していないひとたちが家にかえらずにやることになるのかなあ」
「どんなふうに世話すればいいんだろう」
そんな不安を抱えながら、日々仕事をしている。
「でも時間の問題だよ」
「わたしもそう思う。ひとり発覚したらみん検査することになるだろうし、そしたらいっぱいでてくるよ」
「そうそう。無症状も多いし、検査していないだけでもうすでに感染しているかもしれないよ」
そんな会話が何度も繰り広げられている。
いつかくる。
もうそこまできているかもしれない。
怖いなあ
怖いよ
もしもクラスターが発生したら私たちはどうなるんだろう。
いつまで不安は消えずにいる。
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