あの人は怒って笑って、また怒って笑う
認知症高齢者の喜怒哀楽の激しさは半端ない。さっきまでニコニコと笑っていたはずなのに、突然怒りだすのだ。
「なんで怒るとね!せっかく、してやりよるとけ」
そんな風に言い返す者もいる。そうすると、ヒートアップするばかりで埒があかない。
怒り出したら、とにかく距離をおく。
距離を置いて、遠くで見守っているうちにいつの間にかまるで般若のようや顔がおだやかになるのだ。
よし!
これならいける。
そう思って話しかけてみると、またまた激怒。
なにもしていないよ。
話しかけただけなのに~~。
しまいにはビンタまで食らわされてしまうこともあり、正直ビンタ返しをしたくなるのだ。
それをグッとこらえて、また距離をおく。
ようやく機嫌が直ったらしい。
もう一度声かけしてみる。
「なんですかーー?」
ようやく穏やかになってくれたようだ。
「ごはんですよ。食堂にどうぞ」
「はい。行きます。待っていました」
そういって、その人はシルバーカーを押して食堂へ向かった。
そのころには、他の人たちはすでに食事を終えて部屋に帰ってしまっていた。
その人はとくに気にした様子もなく、ポツンと一人で食事をする。
やれやれ、
いったい、何回ご飯の声かけしたのだろうか。
「うーん、この飯、冷たかねえ」
その人がいう。
それはね。
あなたが、ずっとしぶったからだよ。
何回声かけした?
ご飯の準備できてから一時間もなるんだよ。
そう心のなかで突っ込みながら、その人の食べ終わるのを待つのであった。
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