第17話 火を眺めながら

パチパチ パチパチ

休憩をしながら私たちは火を囲んで談笑し始めた。

こんなダンジョン内部で火つけたら煙まみれでとんでもないことになると思ってたけどさすがはボス、ボスが様々な方向に煙をどかし、煙によって魔物がこの場所に入ってこれないようにしてくれている。


「そういえば、今更なんだけどなんでデリスはあんな雪山にいたの?」

「あーあの時は飯を食べに来たんだ。あそこだけにしかない木の実があるって聞いて……ヒカリ達を救出したときはちょうど食べた帰りの運動がてらの散歩だったよ」


「なんでそんな色んなものが食べたいの?」

「その話をすると俺の冒険に出た理由とか夢とか語ることになるけど、いいのか?」

そんな壮大なことなのか。


「いいよ、話してほしい」

「俺はな、料理人2人から生まれた子だったんだ。幼いころから色んなものを食べて成長して、色んなものを作ってきた」


「そうやって色んなものを食べたり、作ったりしている間にこの世のすべての食べ物を食べてみたいと思ってきて、そんなときに神から職、フードイーターをもらったんだ」


「神が与える職には意図はない、経歴も関係ない、知識も関係ない……っていうのは知ってるか?」

「えっそうなの?」


そうだったんだ。冒険者なりたかったのにわざとこの職にしたって思ってたけどそういう訳じゃないならまぁちょっと許す気になる。

「そうだ。まー諸説あるけどな、つまり俺は完全ランダムな状態で俺にぴったりな職、フードイーターを手に入れたってことになる」


「これこそ運命だ!って感じてな。食は心配しなくてよくて、戦おうと思えば戦える。だったらもう自分の夢であるこの世のすべての食べ物を食べるというのを達成できるんじゃないか?って思って」


「それで旅を始めたんだ。まーそしたらこんな生産職だらけのヘンテコ集団に会ったわけだが、レオンに雪合戦中に言われたんだ。俺らと一緒の方が世界回りやすいぞって」


なるほど、そういうスカウトをしていたのか。

「そうだったんだね。デリスそんなこと考えてたんだ」

「そういうヒカリはどうなんだ?」


「えっ?」

「夢とか、冒険に出た理由とか」

「うーん、結構デリスと比べて浅い考えなんだけど」


「私ちっちゃいときに『ファーシープと鋼鉄の剣』っていう絵本がすきだったの」

「読んだことないな……」

「ゆかいなファーシープとすっごい強い剣を持った少女の冒険譚なんだけど」


「そこで初めて冒険者っていうのを知って、かっこいいなって。それ以降、ずっと冒険者を夢見てきたの……」

「それで生産職なのに冒険者始めたのか」


ぼんやりと火を眺める。

「冒険職がよかったなぁ」

「ヒカリはもう十分冒険職みたいな戦闘してるからそんな落ち込まなくていいと思うぞ」


「もしランダムだとしても神に会ったら殴ってやる」

「その意気だ。頑張ってレオン連れてここ出ようぜ」

「そうだね、頑張るよ」


「こんなこと言ってあれなんだが、まだ魔力回復しないからもうちょっと休ませてくれ」

ごろんと横になってデリスは目をつぶった。


「締まらないなぁ」


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