第12話 雪が常に降る理由
「……お前ら大丈夫か?」
なんか話しかけられてる?栄養不足で幻聴まで聞こえ始めちゃったかな。
まぁもう、死んじゃうから関係ないか。
「雪に埋もれてちゃ話せないか、よっこらせっと」
視界がぐわんと揺れ動き、雪の中から引きずり出される。
死んでない。イノーとレオンも起こさなきゃ。
「コイツもか。よっこいしょ、もしかしてこのイノシシもかな」
意識がはっきりとしてきた私は助けてくれた男の方を見る。
背丈はレオンより小さめで山登りに来るような恰好じゃないほど薄着で小太りの男、歳は私たちと同じように見える。
手には隣の大陸から伝わった高級食、ピザを持ちながらイノー達を救助している。
なんだこいつは。
こいつも金持ちか?
「あの……どなたでしょう」
「あっごめんごめん、俺はブード、ブード・デリスだ。なんか帰りがけの運動がてら歩いてたらお前らが地面に埋もれてるもんだからびっくりしたよ」
「そのピザは?」
「さっきつくったやつだよ。食べる?」
「いいんですか!?」
まさか生き永らえた上にピザまでもらえるとは、いいやつなのかコイツ!?
「あっちょーと待っててね。【サモン・ピザ】」
後ろを向いてボソボソと何かをつぶやき、ピザをこちらに渡してくる。
なんかサモン・ピザって言ってた気がするんだけど。
なんの職業だろう……この人。
「なんだこの男は。ヒカリどうなってるんだ?」
レオンも意識がはっきりしてきたみたい。
ともかくこの山から下りた方がいいな。
軽くレオンに説明して、デリスの案内で山を下り始める。
まだ寒いし、吹雪も強いけどご飯を食べただけで力が湧いてきた。
「あれ?」
吹雪が弱まる。天気もさほど悪くない。
ふと右を見てみると、今さっきまでの風向きとはまるで違う、大きな円を描く吹雪が存在していた。吹雪が大きな壁となり、その先は不可視の場所となっている。
「なんだろうアレ」
「少なくとも自然現象じゃないだろうな。デリスがよければ探索しよう」
「全然構わないよ。少なくとも雪に埋もれてたやつよりは元気だしな」
ドヤ顔をこちらにしてくるデリス。ちょっとムカつく。
ゆっくりと白の壁に進む私たち。
それにしても大きいなぁコレ。
白の壁に手を入れる。
一瞬にして凍りそうな寒さだ。気を引き締めよう。
「一気に行くよ!」
ビュオオオオオオオ
「ぐっ」
まるで凶器のように雪が襲い掛かる。体中が痛い。
風も強く、体に力を入れないと飛んでしまいそうなほどだ。
ホワイトアウトした視界の中で1歩、また1歩と前に歩みを進める。
数秒の地獄を乗り越えたのち、私たちは吹雪の壁を乗り越えた。
「えっ?」
壁の中は雪原が広がっていた。おだやかな天候で平和な地で空は晴天であった。
ただ違和感が一つ、雪原の中心にあった。
ぽつんと建っている平家、さらに煙突から煙が出ているところを見ると人がいるのは目に見えて明らかだ。
「こんなところに住んでる奴がいるのか」
「飯さえありゃ住めるに決まってるだろ!」
「そうかなぁ」
一応警戒してプルブルが先に偵察をしに行かせたが、特に危険はないようだった。
コンコンコン
「すいませーん、誰かいませんか?」
平家に近づくとこじんまりとした木組みの小屋で可愛らしい建物だった。
他の2人とイノー達には少し後ろに隠れ、念のため戦闘ができるようにしてもらい、私は木製の扉をノックした。
ドタドタガシャンバタバタ
到底人の家からするとは思えない物音がした後、扉が開く。
目の前には白髪の美人な女性が猫背で立っていた。
身長はやや高めだが、猫背で縮こまっているせいでそこまで大きくないように見える。
「あ、えと、その、ちょっと、あの……どっどのようなご用件で……?」
あっ、こういう感じの人か。これなら戦闘にはならなそうだな。
人数が増えると警戒されるかもしれない。レオンたちは後ろでそのまま待ってもらおう。
「周りが猛吹雪の中ここだけおだやかな天候で尚且つなぜこんな場所に住んでいるのか……知りたくなってしまって」
「あっその……そういうことですか……えっと、話せば長くなるというか…えっと、えっと」
「その、あの、さっ寒いと思うので……えっと、家の中でお話しません、か?」
__
____
「こ、これお水です……どうぞ」
透明で透き通った水が渡される。
ここらへんの山でとったものなのかな。
「それで……話せば長くなるというのは?」
「あっえっとその……まず私、職が【アイスクリーマー】なんです」
おっと生産職かな?
「えっと、【アイスクリーマー】って言ってもアイスクリームとかき氷を作る職で……アイス屋さんとかき氷屋さんを経営して、いたんです」
「そっそれで私、作るの楽しくなっちゃって……。試行錯誤していろいろなメニューを考えて作ってたんです……」
ん?なんか窓の外の雲行きが――
「そしたら経験を積んだって神様に判断されたみたいでレベルアップし過ぎちゃって」
雪が降りだした。もしかしてこの人の感情と連動しているのか?
「こんな吹雪の力を手に入れちゃって……わっ私弱いから制御できなくて……」
風が強くなってきた。外でレオンが何か訴えかけてくる……ごめん。
「大雪の大災害を昔住んでた町に起こしちゃって……えっと、もうあんな事件を起こさないためにってこの山に住んだのです……」
「それなのに……それなのに、ずっと吹雪で被害が出てしまって……」
白髪の彼女はついに泣き出してしまった。
猛吹雪だ……レオンたちのために何とかして彼女を止めなければ。
「うぅ。ごめんなさい、ごめんなさい……」
このままだと大きな災害を起こしかねない、なにかしてあげないと。
「参考になるかわかりませんが…私も生産職なので助けることはできると思います。泣かないでください」
「そうなんですか…?…あの、すいません。泣いてしまって……」
「でも、どうやって吹雪を抑えれば……」
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