第11話 いざ雪山へ!

「行こうヒカリ」

「準備よし!防寒よし!完璧だよ!!」


ボスを治療してもらった私たちは冒険者ギルドを後にした。

冒険者ギルドには雪山に行く装備の準備をしている者たちもいたからきっと皆あの金持ちの依頼を受けたのだろう。


近くの服屋や登山用品専門店で装備を整える。

大金と借金を掛けた早い者勝ち。

さっそく私たちは山へと入る。


__

____

「さっむ」

ピルヴィ山登山道を10分ほど進んだあたりで呟く。

すでに防寒具が意味をなさないほど寒い。


空からパラパラと雪が降っているが、吹雪というほどでもない。

とてもきれいだ。

地面に落ちた雪はギュムギュムしていて心地よい。

あたり一面は雪景色となっており、木や草も雪に覆われている。


「寒いことを除けばかなり順調に進みそうだな」

「そうだね、これならペースを上げても大丈夫そう」

とりあえず頂上を目指してみようかな。


__

____

「登頂!!!」

なんだろう、あっさりすぎない?

本当に寒い以外問題はなくサクッと登頂してしまった。


「ヒカリ、こっちにも道があるぞ」

登頂はしたが問題はここから。凍月草を見つけなければいけない。

そもそも私たちは凍月草を見たことがない。大丈夫かな?


__

____

どうしよう、本当に困った。

「レオン、やっぱり私たちさ」

「なんだ?」


「遭難してるよね」

「まだなんとかなる」

「ならないよ!寒さで体力も奪われてるんだからこのままじゃ死んじゃうよ!」


登山道の場所もわからない。ラウンディールの場所もわからない。

加えて天気も悪くなってきた。近いうちに吹雪になりそうなほど。

一旦凍月草は後回しにして私たちの安全を確保しなければ。


「このままだと体力も奪われちゃうし、無駄に動いても危ない。近くに休憩できるところがあるか探すのが賢明だと思う」

「さっき洞穴があったぞ、そこまで行ってとりあえず休もう」


ビュオオオオオオオ

洞穴はとても暗いが外の惨劇に比べたら比にならないほど安心感がある。

洞穴の奥は行き止まりで、どこかに繋がっていたりはしなかった。

予想通り吹雪になったけど、これじゃあ余計帰れそうにない。

「焚き火とかできる?」


「一応、なんか着火魔材とかいう瞬時に木材を燃やせるものは買ってきたけどな…使い方がよく分からないんだ」

「そういうのって使い方が書かれた紙とかないの?普通は」

「胡散臭い感じの商人から買ったから粗悪品かもしれない」


レオンがごめんねみたいな顔をしてる。うーん殴りたい。

ダメだ。レオンが全然つかえない、レッドアウィス戦の彼はどこに行ったのやら。

「レオン、なんか焚火に使える木を外の方に生やしてよ」


「はいよー【プラント】」

「これどういう木?」

「東の方の大地でしか生えてない木、スギキってやつだ。まぁまぁ燃やしやすいはず」


木はイノーの体当たりとボスの攻撃でなんとか切って、着火魔材は責任を取ってレオンがヤケドになりながらも使って、無事焚火が完成した。

「とりあえずは安心だね」


「吹雪がやんだら頑張ってラウンディールを探そう。食糧を調達した方がいい」

「じゃあ今のうちに寝て体力を温存した方がいいね」

「おやすみー」


そこからは地獄だった。

来る日も来る日も吹雪続きで――


DAY2

昨日はめちゃくちゃ暖かいイノーを抱きながら寝た。ポカポカで最高だ。

「ヒカリ、まだ吹雪だ。近くに食糧を探しに行って機会を伺おう」


DAY3

食糧は未だ見つからず……吹雪もやまず。

もしかすると誰かが依頼を達成してしまったかもしれない。


DAY4

さすがにそろそろやばい気がする。

レオンがイノーに対する見る目が変わってきた。


DAY5

……


DAY6

「もう我慢できない!このままだと死ぬぞ、イノーを食べるか吹雪の中突っ込むしかない」

「やめてよ!私の大切な仲間食べないで……」


「じゃあ今すぐここを出て町を探すぞ」

レオンがヤバイ。極限状態になって正常な判断ができなくなってる…。

え?なんか、涙が出てきた……私も結構やばいのかも。


レオンはスタスタと外に出てしまった。

正常な判断ができないが、これだけは分かる。

今外に出たら死んでしまう。

だけど、さすがにレオンを見殺しには出来ないから追いかけなければ。


洞穴から出ると白、白、視界のすべてが真っ白。

前は数mまでしか見えず、風の音がずっと鳴っている。

空も雲によって白く、地面はもちろん白いため、平衡感覚を失い始める。

辛うじて革袋を背負ったレオンが見えた、追いかけなきゃ。


「レオン!本当に危険だよ!」

「レオン!いったん戻ろう」

「レオン!!」


私の声を聴かず、どんどんレオンの背中が小さくなっていく。

そうだ!

「イノー私を背中に乗せて!レオンまで全力で走って!」


フゴッ ギュムギュム

いつものイノーの速度よりは遅いが私が走るよりマシだ。

辛そうな顔をしてるイノーを見ると罪悪感が湧いてくる。

ごめんな、後でいっぱいエサあげるから。

プルブルは外に出たら凍ってしまうので、私の服の中で温水になっている。


「レオン!」

なんとか追いついた。

レオンの肩を掴み、静止させた。


肩をつかまれて正気を取り戻したのか、レオンはハッとした顔をしている。

「ごめんヒカr」

レオンが言い終わる前に今までの吹雪とは比べ物にならないほどの突風が吹き荒れた。


レオンと私、そしてイノー達は風に押されて倒れこむ。

地面の雪はかなり積もっている上にフワフワだ。

当然、深く雪に埋まってしまう。


こうなれば死は目前となる。

体力は一気に奪われ、起き上がる力もなくなっていく。

視界が白くなっていく。


寒い、冷たい。このままじゃ……死んじゃう――


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