第10話 不安と安堵

左脚のふくらはぎは負傷し、武器はなし。

相手はこちらに走り出してきている。

テイムも引きちぎられて不可能。


「無理だ」

全てを諦めて脱力し、目を閉じて祈る。

そして痛みに備えて唇をかみしめる。

その瞬間だった。


「引き付けと時間稼ぎナイスだヒカリ!美味しいところは持っていくぜ」

えっ、レオン?

きっと今の私は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてるだろう。

レオンの存在を完全に忘れていた。


「【プラント】!!!!!!」

走ってくるレッドアウィスの真下から地響きがする。

本能がここから逃げろと言っている、私はレオンと馬車のもとへと走り出す。


レッドアウィスの真下の地が割れたかと思うととんでもなく大きな大木が顔を出す。

大木は大きく成長し、1つの建物と言えるほどに大きなものが出来上がった。

レッドアウィスはその木の成長に巻き込まれ、空高く打ち上げられ、抵抗むなしく地面に叩きつけられた。


「ちょっとレオン!危うく私たち死ぬところだったんだけど」

イノーやプルブルも私が指示する前に本能的に回避し、事なきを得た。

ただ、私は足を怪我していたせいであと少しズレていたら巻き込まれてしまうほどギリギリの回避だった。


「ごめんごめん……それよりもほら」

レオンが指を指した先には息も絶え絶えなレッドアウィスがいた。

「あれテイムできるんじゃないか?」


そっか。悪名高い死神鳥も、私なら仲間にできちゃうのか。

そっと近づき、手をかざす。

「【テイム】【フェロー】」


/////

〔名付けをしてください〕

種類︰アウィス

特技︰嘴殺 飛行

心︰0%

/////


「名前は……えっと、ボスで」

「なんだそのふざけた名前」

「強かったし、懐かなさそうだし、仲間になってもふてぶてしい感じがするから」


仲間になったボスを見て、はっと気付く。

「レオン、ボスの傷やばいからこんなのんびり会話してる場合じゃなかった」

「御者さん!なるべく速くいけるか?」

御者さんはコクリと頷き手綱を引いた。


あっやばい。

速くなったせいでより一層吐きそうかも。


__

____

「なんとか耐えた…」

ピルヴィ山のふもと、雪の町であるラウンディール。

私たちの住む町フィーンと共に発展を目指す姉妹都市だ。


「回復師か医者を探そう!」

「俺は医療院とかがあるかを調べて来る、ヒカリは冒険者ギルドを見てきてくれ」

回復師と医者、どちらも同じ職に聞こえるが実態はかなり違う。


回復師は魔力によって無理やり傷をふさぎ、傷をいやす。戦闘などでの即席回復で名をあげる職だ。

医者はケガ人自身の自然治癒力の補助を行う。重篤冒険者や病人の治療など、戦闘外で名をあげる職だ。


今回の場合だと医者の方がありがたいが…わがままは言っていられない。

「すいません!!」

勢いよく扉を開ける。ラウンディールの冒険者ギルドだ。


中に入ると、毛皮で寒さ対策をした冒険者たちがこちらを凝視している。

「どうされましたか?」

受付嬢が困惑しながらも話しかけてくれる。他の冒険者たちもおそらく心配してくれているのだろう。


こんなところでボス出しても大丈夫だろうか。

一抹の不安はあるが、この際どうにでもなれ!

「あの…この子のことを治せる回復師さんはいませんか?」


案の定、他の冒険者全員が後ろに下がり距離を取る。

「レッドアウィス……ですか?どうして治療を?」

まぁそうだよね、当然の質問だわ。


「私アニマルテイマーで、仲間のレッドアウィスがかなり怪我を負ってしまって…」

いろいろな部分を端折って手短に説明をする。

他の冒険者全員はさらに後ろに下がり距離を取る。

ここまで引かれるとさすがに傷つく。

生産職がレッドアウィス仲間にしてるのがそんなにやべーかこのやろー。


「無理そうなら大丈夫です」

ここはあきらめるしかない。詳しく説明する時間はないから立ち去ろう。

「あのっ!私回復師です」

扉に手を掛ける瞬間、冒険者たちの奥から可愛らしい子どもが現れる。


◇◇

◇◇◇◇

この町に医療院はないらしく、諦めてヒカリが向かった冒険者ギルドへと向かう。

山の方で年中雪が降っているせいか、寒い。

ぶるぶると震えながら、冒険者ギルドの扉に手をかける。


冒険者ギルドの扉を開けながらヒカリに話しかけた。

「ヒカリ、医者はいなかった……って、え?」

目の前で広がる景色、レッドアウィスを抱きかかえる少女とそれを心配そうに見つめる多くの冒険者とヒカリ。


「……」

そっと扉を閉める。

何だろうかあれは、あの小さい子が回復師なのだろうか。

それよりもなんでみんなで息を飲みながら見守っているんだろうか。


ただ、外にいても何もわからないし、何より寒い。

仕方ない。もう一度あの奇妙な空間に入るしかないな。

今度は音を出さないように扉を開け、中に入る。

中はとても暖かく、外の寒さが嘘であるかのように思えるほどだった。


そそくさとヒカリの元へ駆け寄る。

「なぁ、これどういう状況だ?あの少女が回復師?」

ヒカリは少し反応に困りながらも答えてくれる。


「あの小さい子、私たちと同じ年だけど背が小さくてみんなに可愛がられているんだって」

チラリとあの少女を見ながら話を続ける。


「そんな子がレッドアウィスを治療するわけだからみんな心配して見守っているの」

ヒカリの話を聞いてある程度納得はできた。

だとしてもかなり異質だが。


◇◇

◇◇◇◇

数分が経過した。

まだ見習い回復師だから治療が遅いみたいだ。

「……終わりました!」


抱いていたレッドアウィスことボスを引き渡してくれる。

すごい、見事に傷がふさがっている。


しばらくするとボスが目を覚ました。

ピューヒョロロロ

勢いよく羽を広げ、鳴く。


「おはようボス!これからよろしくね」


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