第9話 血塗られた鳥が空を舞う
レッドアウィス。漆黒の鳥であるのに名に赤が含まれる理由。
それはレッドアウィスが殺した生物の返り血を浴びすぎて赤く染まったように見えたことが由来と言われている。
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「【テイム】!!!」
レッドアウィスはすばしっこいが、ファーシープの時のように大きすぎてマナが大量に必要なわけではない。
ならばテイムで捕まえて仲間にするか拘束状態のまま総攻撃すれば倒せるだろう。
ピギャッ
マナに絡まり黒鳥は墜ちた。少しばかり鳴き、自身の状況を確認している。
「ナイスヒカリ!あとはなんとかなる!」
ピューヒョロロロ!!!
ひときわ大きくレッドアウィスは鳴いた。そしてマナの紐の中で目いっぱいに羽を広げ……空へと回転しながら急上昇。
さすがの紐もその力に耐えきれなかったのか引きちぎれる。
「うそでしょ?」
「おいおい、そんなの聞いてないぞ」
空へと上昇したレッドアウィスは羽を大きく広げ、私たちに向かって鳴いた。
威嚇だろう。
ピューヒョロロロ!!!!
レッドアウィスは途端に羽を畳み、急降下。
恐るべき速さで私たちに突進してくる。
「レオンは左に!私は右に倒れる!!」
鋭い口が向かってくる寸前のところで倒れてよけた。
馬車についていた屋根の一部が今の攻撃で貫かれる。
当たったらひとたまりもない。
どうしようか。
何よりの問題は馬車が狭いこと。馬車の中だとうまく動くことはできない。
「御者さん、注文が多くて申し訳ないんですけど馬車止められますか?」
コクリと御者は少しうなずくと馬にサインを出し、馬車は停止した。
レッドアウィスは少し驚いた様子だったが、すぐに速度を緩めて停止した馬車の真上で旋回し始めた。
「馬車から降りよう!」
外に出ようとした瞬間、後ろから声がかけられる。
「ヒカリ、ちょっと先に行っててくれ」
どうしたんだろう?まぁレオンのことだし大丈夫だろう。
ピューヒョロロロ!!
来るっ!!
レッドアウィスが攻撃をする瞬間に私は横に飛び、難を逃れる。
同じ動作をもう3~4回している。
「動きは見切った!ここから反撃だよ!」
今まで避け続けていたのは相手の攻撃を理解するため!
イノー、プルブルの出番だよ。
ピューヒョロロロ!!!
なかなかしぶといのに苛立ちを感じているのか、どんどん攻撃の質が粗くなっていっている。さらに完全に私にロックオンしているようだ。
イノーとプルブルには目もくれていない。これは好都合!
「イノー今だ!!」
レッドアウィスは攻撃するとき、急降下して地面にかなり近づく。
それを利用してイノーの突撃で一発ノックダウンを決めちゃおうという作戦だ。
その作戦を成功させるためには私ができる限り近づいてから避けなければ意味がない。
ドンドン加速する、レッドアウィスはすぐ目の前。
でも…まだだ、風の音を聞く。前から少しずつ近づく風音
……今だっ!!!!
素早く右に重心を掛け、飛び込む。
直後、今さっきまで自分がいた場所にレッドアウィスが飛び込んでくる。
「イタッ」
通り過ぎた瞬間にふくらはぎ辺りに痛みが走る。少し遅かったか。
でも、これで準備は整った!!
ドドドドドド
イノーの走る音がする。まだ起きることができなくて見えなくて、可愛い相棒の勇姿は見られなくて悔しいが、頑張ってくれ!
ピュギュッ
見慣れない音がして慌てて振り返る。
イノーがレッドアウィスを自慢の突進で突き飛ばし、突然の攻撃に混乱したレッドアウィスは地面に墜落しながらも羽ばたこうとしていた。
「落ちた位置も完璧だ!」
レッドアウィスが地面に触れる瞬間、地面からプルブルが飛び出す。
そのまま丸ごと包んで窒息させる予定だ。
しかし――
ピューヒョロロロ!!!!!
ひときわ大きくレッドアウィスが鳴いたかと思うと、飛べない羽を大きく広げ、地面をのたうち回り始めた。
「まさか」
地面の土や草にプルブルが引っ掛かり、いとも簡単にはがされてしまった。
レッドアウィスの噂はもう1つある。
レッドアウィスは地上戦もできる、と。
今、眼前の生物は突進によるけがで空に飛ぶことはないが、地上でも死神。
イノーは疲れてるし、プルブルは身体の修復に時間がかかる。
武器も何も持っていない私がかなう相手なのか?
ピューヒョロロロ!!!!!
黒鳥が、鳴いた。
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