破壊の概念の次

「あれが、破壊の概念……。悍ましい気配がします、それこそ、ディンさんがいらっしゃらなかったら、一瞬で殺されてしまうのを覚悟する程です……。」

「あの時の大蛇……。デイン叔父さんを取り込んだ姿と、一緒だ……。」

「ふむ、その姿じゃ行動出来ないって認識だったけど、そうか、魂を変質させてその姿を得たか。つくづく歪んだ手段しか取らないんだな、お前は。」

 虚ろな目になったクロノスと、その横に現れた、黒を基調として、紅い線が幾重にも走っている、紅い瞳の大蛇。

 あれが破壊の概念か、と清華達は感じ取り、そして、恐れた。

 これには勝てない、ディン以外の何者も、この存在には太刀打ち出来ない、と。

「こっちは俺の仕事だ。君達は、そっちを頼んだ。魂を抜かれて、若干だけど弱体化してる、今なら、戦えるだろう。」

「父ちゃん、僕は?」

「竜太、お前はそっちを頼む。本来なら、俺がそっちを手伝うって言うのが基本だけど、今回は別だ。何の為に竜太をここに連れて来たのか、それは今この瞬間の為だ。今ここで、俺が破壊の概念を完全消滅させられれば、それで終わるんだから。」

「……、分かった。負けないでね、父ちゃん。」

 竜太は、自分がどちらと戦えば良いのかを一瞬迷ったが、ディンの言葉で立場を決め、クロノスに向き直る。

 ディンは破壊の概念と対峙し、そして戦士達はクロノスと対峙する。

 2つの戦い、この旅の終わり、それが、今始まった。


「ちょっとは手ごたえがある、なんて思っていたけれど、意外に強いわね、貴方達。」

「泣き言かね?リリエルちゃんらしくもない。」

「いえ、ちょっと驚いているだけよ。あの子達で一対一で戦えてたと言うのだから、もう少し弱いと思っていただけ。そうね、あの子達の実力を低く見積もっていた、と言うのが正解かしらね。」

 結界の外、神々の贋作が次々と現れ、リリエル達に攻撃を仕掛けてくる。

 リリエルとセレンが前衛、ウォルフと外園が後衛、と役割を分けながら戦っていたが、リリエルは本気を出しても一撃で沈まない贋作に、少し驚いていた。

 セレンも外園も本気で戦っている、ウォルフは援護射撃を精密に行っている、そしてリリエルは切り込み隊長、と言った所だろうか。

 初めて共に戦うとは思えない程、互いの役割をはっきりと認識していた、それは戦闘経験の差、では片づけられない話でもある。

 特にセレンと外園に関しては、本気で戦っている所を見た事が無かった、セレンが槌を武器として使う事も、外園が鎌を武器に使う事も、今日まで知らなかった事だ。

「リリエル!そっち行ったぞ!」

「えぇ、わかっているわ。」

 しかし、巧みな戦術、と言うわけでもないが、呼吸を合わせて戦ってる。

 リリエルが攻撃を回避した所に、ウォルフが精密射撃をして、怯んだ所をセレンが叩き、外園はそのサポートの為に魔法を連発していた。

 初めての共闘とは思えない、それ程に統制の取れた連携だ。

「セレン!右に!」

「おう!」

 今度はセレンが右に回避し、そこに外園が魔法を打ち込む。

 この世界では指数本に入る程の実力者、と言われていた外園の、面目躍如と言った所だ。

 戦闘経験が多いわけではない、しかし、伊達に神官をやっていたわけでもなく、アンクウとして選ばれたわけでもない、それは、世界の中では指折りの実力を持っている事に変わりはない。

 近接戦闘は基本しない、と言うのは、外園の信条であって、苦手意識でも無い。

 ウォルフもそれは変わらない、ガンナーの英雄として召喚される、そしてスナイパーライフルをメインウェポンとして使う、と言うのはどこに行っても変わらないが、かといって近接戦闘が出来ないわけでもない。

 それはセレンやリリエルからしたら劣る攻撃ではあるが、しかし、出来ないと言うわけではないのだ。

「リリエルちゃん、左だ。」

「えぇ。」

 神々の贋作が、何重にも重なって攻撃を仕掛けてくる。

 それをリリエルが羽ばたく彗星で崩し、そしてウォルフの射撃で急所を撃ちぬく。

「懲りないわね、と言うより、意思が無いのかしら。」

「そうですねぇ、リリエルさんの仰る通り、意思が宿っていないのでしょう。贋作、とは良くいったものです。」

「あいつらが敵を倒すまで、堪えりゃ良いんだろ?なら、やるだけだろ。」

「言う様になったな、セレンよ。ふむ、衛星迫撃砲を使うまでもないな。」

 それは、守護者としての本能なのだろうか。

 一年半と言う時間を共にしてきた仲間、それは、息をする様に連携を取るのにふさわしいのだろう。

 的確に攻防をしながら、リリエル達はディン達の勝利を願った。


「竜太君!行くよ!」

「合わせる!」

 結界の中、戦士達はクロノスと戦いながら、恐怖と戦っていた。

 ディンがいる、守られているとわかっていても、破壊の概念の威圧感、圧迫感は、凄まじいものがある。

 あの大蛇が一瞬でもこちらに気を回せば、自分達は死ぬ。

 それはわかっていたが、戦わなくていい理由にはならない。

 竜太は、一度対峙した事があった為、そこまで恐怖を感じているわけでは無かったが、戦士達は違う。

 特に蓮は、何かに引っ張られる様な感覚に時折苛まれながら、戦っていた。

「せいやぁ!」

「ふん……!」

 クロノスは、竜太と蓮が戦っていた時よりは弱体化している、しかし、6人がかりで戦って、丁度実力が拮抗するかしないか、と言うレベルだ。

 身の丈程もある大剣から繰り出される強烈な一撃を、各々防御したり回避したりしながら、必死に攻撃をしていた。

「清華!」

「はい!」

 俊平と清華が同時攻撃をする、炎と風、水と雷の4属性による、同時攻撃。

 互いの攻撃を打ち消す事なく、延焼と感電をさせて、そこに修平と大地が攻撃を繰り出す。

「大地君!」

「うむ……!」

 クロノスが怯んだ所に、大地と修平が攻撃を繰り出し、動きを止める。

「蓮君!」

「うん!」

 動きが止まった所に、竜太と蓮が攻撃を仕掛ける。

『雷咆斬!』

「光よ!」

 蓮の最も得意とする雷咆斬、そして竜太が得た光の剣。

 竜太の剣技に名前はない、それは竜神王にしか扱えない、聖竜輝翔剣の下位互換なのだが、竜太はそれを知らずに発動していた。

 竜神王の家系、継承されてきた能力、竜太は、自分はそれを受け継いでいないと思っていたが、そうでもなかった様子だ。

 竜神王にしか扱えない光の剣、闇を癒し、破壊の概念にも通ずる攻撃、それを竜太は習得しかけているのだろう。


「さ、こっちもさっさと終わらせようか。」

「ククク……、クハハ!先程と同じ結果になると思うか!我は貴様の業を吸い上げた、貴様のいた世界の業全てを力として得たのだ!」

「成る程、通りで体が軽いわけだ。」

 アリナを開放した時、ディンは一瞬何かを感じ取っていたが、それが破壊の概念がディンの持っていた世界の業だとは思わなかった、と言う風だ。

 確かに、先程までとは比べ物にならない力を発している、この大蛇は、ディンの中に眠っていた、以前の世界軸の業を吸収していた。

「それで?」

「それで、とは何だ?貴様に勝ち目はないと言っているのだぞ?」

「だからなんだ?それが俺の負ける理由になると思ってるなら、それは奢りだ。俺は誰にも負けない、それは、世界の業がどうとかそう言う話じゃない。俺は十代目竜神王、悪しき輪廻を閉じる者。誰が相手だろうと、どれだけ強かろうと、俺は負けない。」

「フハハ!それこそ奢りと言うものよ!貴様はここで死ぬ!無様に死に絶え、そして世界は滅ぶ!」

 大蛇の口から、闇を凝縮したビームが放たれる。

『闇照らす光よ……。』

 戦士達なら、一瞬で負けていたであろう、その一撃を、ディンは光でかき消した。

 以前のディンなら、この攻撃は受けきれなかっただろう。

 以前の、つまり完全なる竜神王ではなかった頃であれば、この一撃で勝負は決していただろう。

 しかし、ディンは軽々と、それをかき消した。

「何……!?」

「今の俺は数多の竜神の魂が1つになった存在、それはもうわかってるだろう?これ位の攻撃で何とかなる程、甘くないんだよ。」

「ならば!」

 大蛇が突撃してくる、それは神速の早さだった。

 ディンの腕程あるであろう牙を突き立て、ディンを嚙み殺すつもりなのだろう。;

「……。」

 刹那、ディンが動いた。

 幾重にも重なった斬撃、聖竜輝翔剣を発動し、それを重ねた。

「が……!」

 破壊の概念が、ディンから離れる。

 一撃で勝負が決したわけではないが、有効な手段として動いたのだろう。

「前の世界軸、俺は負けた。それは事実だ。まだ不完全だった頃、俺はお前に殺されかけた、それも事実だ。だけどな、もう負けない。俺は、守るべき人達がいる、守りたい人達がいる。だから、誰にも負けられないんだよ。それがたとえ、この世界の創造主だったとしても、その創造主が世界を不要と捨て去ったとしても、破壊しようとしても。俺は、負けるわけにはいかないんだ。」

「く……!ならば問うぞ竜神王!貴様は世界を醜いと思っていたはずだ!人間に救いはない、世界に救いはないと!ならば何故!人間を守る!貴様の持っていた世界の業を!まざまざと見せつけられておきながら!何故世界を守ろうとする!」

「……。簡単な話だ、お前には一生涯理解出来ないだろうけどな。醜い中にも、美しいものはある、例え世界の九割が醜かったとしても、九分九厘が忌避すべき存在だったとしても。それでも、たった一割の、ほんのわずかな光、それだけでも、世界を守るに値する。竜神王が世界を守る為に生まれたからじゃない、俺は俺自身の意思で、守りたい者を守ってるんだ。」

 ディンの意思、それは揺るぎない物だった。

 破壊の概念に何を嘯かれようと、誰に世界を破壊しろと言われたとしても、世界の創造主が世界を捨て去ろうとも、それでも守る、それはディンの揺るぎない意思であり、誇りだった。

 竜神王剣、竜の誇り。

 それは、ディンが世界を守る事を誇りに思っている、世界を守れる存在である事を誇っている、それを表した剣だ。

 竜神の剣は、その竜神の最も根底にある、いわば根源的な心を具象化した剣だ。

 竜太は愛を、そしてデインは世界を想う心を、ディン達の母レイラは慈愛を、そしてディンと悠輔は絆を。

 それを根底に持ち、揺るぎない想いとしている、それが竜神剣だ。

「我が剣の名は誇り。それは、世界を守る事を、大切な人達を守る事を、誇る剣。お前にはわからないだろう、世界の終末装置、破壊の概念たるお前には、感情を得たとしても、理解出来ないだろう。大切な人達、愛する者達を守る事を誇る、なんて感情は、お前は持ちえないんだからな。」

「それが貴様が勝つと言う根拠にはなりえん!貴様の力は!」

「託されたんだ。俺は、数多の竜神から、託された。母さんから、アイラさんから、ライラさんから、ケシニアから、レヴィストロから、アリステスから、そして先代や、初代達から。沢山の竜神が、世界を守りたいと願った、その為に尽力してきた。その究極が、今の俺だ。だから、俺は負けない。」

 破壊の概念が狼狽える、しかしディンは動じない。

 破壊の概念は、自分に死はないと正しく理解していた、消滅させられる事もなく、倒されたとしても、眠りにつくだけなのだと。

 しかし、今のディンと対峙していると、それが間違いである様な、まるで自分がそれを恐怖している様な感情を得る。

 完全消滅させる、そのディンの言葉が、まるで真実であるかの様に、考えてしまう。

「ふざけるなぁ!貴様如きに負ける我ではない!」

「ならやってみろよ。俺達はそうするしかないんだ、戦う以外の選択肢なんて、とっくのとうになくなってるんだろう?」

 そう言いながら、ディンは更に力を溜める。

 破壊の概念は、動けないでいた。

 今動けば、確実に討たれる、それを理解してしまったから。


「クロノスの動きが、弱くなってる……?」

 戦いが続く中、ディンと破壊の概念が戦っているのは認識していた。

 それを見る暇が無かったと言うだけで、竜太はディンと破壊の概念が戦っている事を理解していた。

 それが激化しているのか、それとも何なのかはわからないが、クロノスの動きが遅くなっている、魂を抜かれ、傀儡となったクロノスの動きが、少しずつだが遅くなっている。

「皆さん!今です!」

 攻勢に出るなら今しかない、それを竜太は瞬時に理解した。

「いっくよぉ!」

 それに呼応して、5人は一斉攻撃を繰り出す。

「そこです!」

「喰らいやがれ!」

「そこだぁ!」

「せい……!」

 6人による同時攻撃、それはクロノスの処理出来る範囲を超えた攻撃となり、最後に攻撃を出した蓮の剣が、クロノスの体を両断した。

「……!」

 クロノスが、一瞬開放された喜びに微笑んだ、と竜太と蓮は見えた。

 やっと開放された、長年の苦しみから、やっと、と。

「……。童達よ、よくぞ、よくぞやってくれた……。」

 微笑み、消えていくクロノス。

「だが、気を付けろ、童よ……。」

 最期、クロノスが蓮にかけて声をかけた。

 何の事かはわからない蓮と、何が起ころうとしているのかを理解した竜太。

 竜太は、ここからが堪えどころだ、と考える。

「地震だ!」

「クロノス様が消えた影響でしょうか!?」

 直後、大きな揺れが発生する。

 クロノスとは、大きな島に手足が生えた神、それが本来の姿だ、とディンは言っていた。

「貴女達、勝ったのね。」

「それは良いんですけど、この揺れはやばくないですか!?」

 結界が消え、リリエル達も贋作達が土塊に戻った事で、戦士達の勝利を理解する。

 揺れが大きくなる、景色が揺らぎ、世界が変わっていく。


「まさか!クロノスめ!敗北したか!」

「皆が勝ったみたいだな。って事は、お前もその姿を維持出来なくなってるはずだ。」

「フフ、フハハ!忘れたか!我が種をまいたは、あの小僧よ!」

「……。」


「収まった……、ってあれ?」

「タルタロス、だよな?」

 揺れが収まったと思ったら、景色が変わっていて、そこは冥府タルタロスの中だった。

 クロノスが見せた幻影、ではなく、クロノスが存在した事によって、生み出されていた島や景色が消えた、と言うのが正しいのだろう。

「お兄ちゃんは?」

「父ちゃん!」

 景色に驚いていた一行だったが、ディンがまだ戦っていたはずだ、と周囲を見まわす。

「お兄ちゃん!」

 蓮がディンを見つけ、駆け寄る。

 傍に破壊の概念はいない、ディン1人だ。

「お兄ちゃん!勝ったんだね!」

「蓮……。」

 ディンが振り向く。

「おにい……、ちゃん……?」

 ディンは、蓮に剣を向けていた。

「蓮、わかっているか?お前は今、破壊の概念の次の器になってるんだ。」

「え……?うぅ……!」

 ディンが悲しそうな顔をして、静かに話しかける。

 蓮は、一瞬ディンが何を言っているかがわからなかった、直後、頭が割れそうになる。

 痛い、痛い、痛い。

 激しい痛みの中で、蓮は自分が自分ではなくなっていく様な感覚を覚える。

 それはまるで、ソーラレスで地獄菩薩に捕まった時の様な、意識が消えていく感覚に似ていて、それでいて、何かが違う。

 蓮は、自分が何かに乗っ取られそうになっている、それを感じ取っていた。

「蓮君!?ディンさん!何してるんですか!?」

「貴方達は近づいてはいけないの。あれは、ディン君にしかどうしようもないのだから。」

「リリエルさん……?何かご存じなのですか!?蓮君は苦しんでいるのですよ!?ディンさんは何故剣を向けていらっしゃるのですか!?」

 ディンと蓮、そして戦士達の間に、指南役達が立つ。

 竜太も、リリエル達の方にいて、戦士達は、何が何だかわからないと言う顔をしている。

「竜太よ……。何が、起こっておるのだ……?」

「……。蓮君は今、破壊の概念に憑りつかれそうになってるんです。それを何とか出来るのは、父ちゃんだけです……。蓮君が戻ってこれるかどうか、それはわかりません……。」

「なんだよそれ!じゃあディンさんは、蓮の事斬るつもりだってのか!?」

「そんなの駄目だよ!俺達が何とかしなきゃ!」

 戦士達は、4人揃ってディンを止めようと動こうとする。

 が、指南役達が、その道を塞いだ。

「ウォルフさん!どいてください!」

「Oh!それは出来んのだよ、修平君。竜神王サンと蓮の結末を、俺達は見守る事しか出来ない。俺達はそれを知っていた、君達はそれを知らなかった。ただ、それだけの違いだ。」

「どけよ!どかねぇってんなら!」

 俊平が、刀を握る力を強める。

 竜太は、こうなる事をディンは予想していた、と考える。

 だから、指南役達をここまで残したのだろう、と。

 そして、今自分達がすべき事は、わかっているつもりだ、と。

「どけません。蓮君は、もう父ちゃんにしかどうする事も出来ないんです。下手に近づいたら、殺されるかもしれません。だから、どけません。」

「ディンさんは言ったじゃんか!俺達の光が、必要になる日が来るって!なのに……、なのになんで剣を向けてるんだよ!」

「今、ディンさんと蓮君の間に皆さんを割り込ませるという事は、皆さんの命を奪う事になりかねないのですよ。聞き及んでください。」

 蓮を助けたい戦士達と、自分達にはどうしようもないと理解している指南役達。

 指南役達を説得するだけの材料を探すには、どうすればいいのだろうか。

「……。では、私達が皆さんに勝った場合、道を開けてください。私達は、蓮君がディンさんに斬られることに納得していません、そして皆さんはそれを納得されている。言葉で説得する時間がないのもわかっています。なら、戦うしかないでしょう。」

「清華……。そうだ、俺達は蓮を守りてぇんだ。だから、あんた達相手だったとしても、負けねぇ!」

「竜太よ……。お主とは、戦いたくは、無かったが……。」

「うん、皆とは、こんな形で戦いたくなかった……。でも、そんな事を言ってる場合じゃないんだもんね。」

 4人は武器を構える。

 指南役達は、ディンがここに自分達を連れてきた真の意味を知り、悲し気な顔をする。

 本当は、自分達も、蓮の傍にいてやりたい、蓮を光へと帰還させる、その助けがしたい。

 しかし、こうなってしまった以上は、それが出来るのはディンだけだ。

 ならば、ディンの目的を遂行する為に、蓮を救う為に、今は戦士達を止めなければならない。

「僕も、戦いたくはありませんでした。でも、今は父ちゃんを信じるしかないんです。」

「ふっざけんな!俺達になんも出来ねぇなんて、そんな事あるかよ!」

「俊平、もうディンは、個人の感情で動ける場所にいねぇんだ。蓮を斬らなきゃ、ディンが殺されりゃ、世界が滅ぶ。おめぇはそれで良いのか?」

「良い訳ねぇだろ!でもよ!蓮は俺達の大事な仲間なんだぞ!あんたたちにとってだって、大切な奴なんだろ!?」

「だからこそ、今はディン君に任せるしかないのよ。……。貴女達と戦う、それはディン君は予想していたのでしょうね。まったく、本当に……。」

 本当の最終決戦、指南役達を倒し、蓮の元に向かいたい戦士達と、それを止めなければならないと理解している指南役達の戦い。

 ディンは、蓮を開放する為に、剣を振り上げた。

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