ひとまず安心

 三日が経過した。

三日経過する頃には、四神の使い達と蓮の魔力探知もだいぶん成長しており、ゴム弾をさばきながら順番に休憩する、という状態にも慣れてきた。

 しかし、仮眠しか取れていない現状、体力の消耗は激しい。

竜太は体力が人間とは別格だった為まだ持っているが、他の6人はだいぶきつそうだ。

「ふぅ……。ちょっと、ちゃんと寝たいね……。」

「修平よ、休息を取るか……?」

「ううん、俺ばっかり我儘なんて言ってられないよ。順番に、って決めたんだし。」

 ゴム弾を受け止めながら、少しずつ消耗してきている。

それを認識しているから、竜太は一度全員での休息をと思ったが、それでは自分だけが強くならないければならない、それでは意味がないと感じていた。

 険しい顔をしながら、何とか全員で休息を取る方法は無いか、と考える。

「結界、なんて使ったらずるですよね……。そもそも、僕の結界がどれ位持つかなんてわかりませんし……。」

「竜太君は結界術を使えるのですか?使えない、と嘆いていらっしゃった記憶があるのですが。」

「はい、つい最近、使える様になりました。まだ五重結界だけで、竜陰絶界なんて強力な結界は使えないですけど……。」

「あんた、強くなったわよね。なんとなく、今までとは違う感じするもん。なんかあったの?」

 詳細を知らないピノや清華は、疑問を口にする。

竜太はアハハと乾いた笑い声を出しながら、フェルンでの出来事を語る。

 それを話している間も、ゴム弾は飛んでくるわけなのだが、それを捌きながら、竜太は言葉を口にする。

「って事は、フェルンの女王様と敵対したって事?あたし、あの人結構強いと思ってたんだけど。竜太の方が、一枚上手だったって事ね。伊達に竜神王の息子じゃないって事ね?」

「そう言われると、ちょっと恥ずかしいですけど……。」

「竜太君、凄いじゃん!俺達、まだまだ竜太君に追いつけないね。頑張らないと、って思うけど、そもそもレベルが違いすぎるのかなぁ。」

「泣き言言ってる場合じゃねぇぞ?俺達だって守護者だ、竜太に勝つ位の勢い持ってねぇと、世界なんて守れねぇだろうからな。」

 少し暗い表情になる修平と、その修平に活を飛ばす俊平。

俊平の方がネガティブになりそうな、と竜太は思っていたが、修行を重ねる間に、だいぶ思考が変化してきたのだろう。

 自分が強いとは思っていないが、気持ちで負けてしまっては終わりだ、と俊平は考えている様だ。

「それにしても、ウォルフさんはどちらにいらっしゃるのでしょう?全くと言っていい程、気配を感じられませんが……。」

「僕もわかんない!ウォルフさん強いから、わかると思ったんだけどなぁ。」

 ウォルフの気配を遮断する能力は、ディン以上リリエル未満と言った所だろう。

ディンはその魔力の膨大さから気配を殺しきる事が出来ない、逆にリリエルは戦場に身を置くウォルフやディンですら、完璧にすれば気配を悟らせない。

 ウォルフの気配の遮断は、ディンには看破されるだろう、というレベルだが、子供達からすればまだまだ上等なものだ。

この三日間で探知能力が上がっていたとしても、まだまだ悟られる事はない。

「竜太よ……。少し、休息を取ったらどうだ……?」

「僕はまだいけますよ、大丈夫です。」

「でもさ、ここで全部使い切っちゃったら、ウィザリア着いてからが大変じゃない?俺も、竜太君は少し休んだ方が良いと思う。」

 確かに、ここでの修業は終着点ではない。

 今までの修業は、終われば休憩出来たし、次の日のコンディションを、というのが普通だったが、今回は違う。

一週間後には戦場に行って、実践が待っている。

「わかりました、じゃあ、僕ちょっと仮眠取りますね。」

「任せて!竜太君!」

「あたしもちょっと本気にならないとだわ。マナの流れはわかるけど、魔力の流れはちょっと違うわけだし。」

 竜太は、少しホッとした様子を見せ、その場に座り込む。

 三日三晩寝ずにずっと探知を続けるというのは、範囲を限定したところで大変だったのだろう。

座り込むと、すぐに寝息を立てて寝てしまう。

「竜太君、俺達より小さいのに、頑張ってるよね。」

「そうだな……。儂達とは、また異なる使命があるのだろう……。」

「おっと!それもいっけどよ、だんだん弾速くなってね?大地、反応できっか?」

「私も、恐らくこれ以上早くなってしまわれたら、反応しきれませんね……。」

 ゴム弾を受け止めながら、俊平が大地を心配する。

大地は、困ったなと眉間に皺を寄せ、清華も同じだと告白する。

 清華はまだスピードについて行けるだろうが、パワー型の大地にはこれ以上の速さの弾丸はきついだろう。

「魔法って、使う人によって速さとか変わってくるんだろうけど、さ!これより速いってなると、俺と俊平君しか反応出来ないんじゃない?」

「僕も、難しいかも……。」

「あたしは無理だわ。そもそも戦闘要員じゃないし、木を生やそうにも時間が足りないわ。」

 そうなると、竜太と修平、俊平の3人が、主に敵の攻撃に反応する役割になりそうだ、と清華は考えた。

 大地と蓮、自分は、反応してもらった後の迎撃が主になる、ピノはマナの源流を探知するのに精いっぱいになるだろうし、役割分担が必要になってくるだろう、と。

「魔力の探知、それをし続けながら、役割分担をこなさなければならない、という事ですね。ウォルフさんの言うチーム連携、というのは、恐らくそういう事ではないでしょうか?」

「と言うと……。儂達は敵を迎え撃ち、竜太達に任せる、という事か……?」

「戦争では、それぞれに役割があると歴史の授業で学びました。例えば前線、後衛、衛生兵などです。ウォルフさんは、それを学ばせようとしているのではないでしょうか?」

 そうなってくると、仮眠を取る順番も大事になってくるだろう。

 ピノは取りたい時に仮眠を取ればいいが、大地と清華と蓮、俊平と修平と竜太、この6人はうまく順番に休憩を取らなければならない。

 組み合わせ的に、大地と竜太はペアでいいだろうが、他の4人の組み合わせをどうしたものか、と清華は眉間に皺を寄せて悩む。

 例えば、修平と自分はほとんど接点がない、というか一対一では話をした事が無い。

しかし、俊平と自分は水と油だ、と認識していたから、ペアを組んだ所でうまくいく未来が見えない。

「じゃあ俺、清華と組むわ。多分、合わねぇ分逆にうまくいくかもしんねぇし。」

「じゃあ、俺は蓮君とペア組めばいいの?」

「良いのですか?相性が悪いとわかっていらっしゃるのに、安易に決めてしまっては……。」

「だって、仲間だろ?相性が悪かろうと何だろうと、一緒に戦場行くんだしよ。なら、苦手意識ってのは早めに消しといた方が良くないか?」

 一理あるという言葉を俊平が話し、大地は確かにその通りだと思う。

 自分と違ってある程度のコミュニケーションが取れる4人は、苦手意識を無くした方がうまく行く事もあるだろう、と。

大地自身、コミュニケーションを取れる様にならなければ、と自分に課題を持っていたが、それをすぐに出来る程、頭は柔軟ではないのだから、手っ取り早い方法だろうと。

「では、大地さんと竜太君、蓮君と修平さん、私と俊平さんでペアを組んで、ローテーションを組んで仮眠を取りましょう。ピノさんは、疲れたと思ったら迷わずに休憩をしてください。マナの源流、というものがどんな形をしているかはわかりませんが、ピノさんに見つけて頂くというのが、ディンさんのお考えの様ですし、ウォルフさんもピノさんを中心に、と仰られていました。」

「じゃあ、僕は修平さんの事を守れば良いの?」

「そうなるかな?俺が銃とか魔法とかに反応する事に集中するから、蓮君は近くにいる敵と戦えばいい、って事だよね?」

「うむ……。では、竜太が目覚めたら、そう伝えよう……。」

 竜太は熟睡してしまっている様で、まだまだ目覚めはしなさそうだ。

それだけ気を張っていたのだろう、三日三晩皆をフォローしながら探知を続ける、という行為自体が初めての経験な中で、皆を先導しようとしていたのだ。

 疲れて当たり前だろう、と無理に起こそうとは誰もしなかった。


「だいぶわかって来たじゃないか、これは良い傾向だ。」

 前衛と後衛に分かれる、という話を聞いていたウォルフは、ヒントは与えていたが、自分達でその答えにたどり着いてくれるとは、と少し驚いていた。

戦争に関してはアマチュア以下、素人もいいところだと思っていたが、中々に侮れない子供達だ、と。

「だが、それを理解した、というだけではいかんな。」

 理解した事によって、張り詰められていた空気が少し緩んだ、とウォルフは感じ取っていた。

 理解する事は大切なのだが、それで気を抜いていたら元も子もない、とゴム弾の速度を少し上げる。

「また速くなった!」

 蓮の声を聞きながら、そろそろ実弾に切り替える頃合いかもしれない、とウォルフは思案する。

ゴム弾の速度はもう、実弾とほとんど変わらない、それに反応出来ているという事は、実弾を相手にしても反応出来る、という道理だ。

 しかし、実弾では怪我をしてしまう、一度のミスが負傷に繋がってしまう、これがまた厄介だ。

外園やディンの様に回復を出来る衛生兵がいれば話は別なのだが、現状では回復魔法を使える人材がいない。

 風属性の上級魔法に回復があると話は聞いていたが、修平に上級魔法が使えるかどうかわからない以上、使えないと考えた方が現実的だろう。

「Umm.どうしたものか。」

 ウォルフは、厳密には魔法が使えるわけではない。

銃弾へのエンチャント程度や、罠の作成と言った攻撃的な術なら持っているが、回復魔法などというものには手を出した事すら無い。

 竜太も清風と転移以外の魔法は使えないと言っていたし、治癒能力が高いという話を聞いた事もない。

つまり、回復を出来る人材がいない中で、一発アウトな実弾を使うか否か、という悩みだ。

「試すのはいいが、怪我で戦線離脱されても困る。」

 一瞬、修平が回復魔法を覚えている可能性、について思案する。

修平は魔法を使う事を得意とはしていない、しかし精霊の加護を受けた事で、魔力は格段に上昇している、とディンが言っていた。

 もしかしたら、回復魔法を使えるかもしれない、と思ったが、不確定要素に縋るのもウォルフの美学に反する。

「Umm,いかようか。」

 考えを巡らせ、答えを導き出すウォルフ。

一度気配を消す事を止め、立ち上がった。


「あ、ウォルフさんだ!」

「修行は順調だな。竜太は熟睡中か?」

「はい、竜太君、だいぶ疲れてたみたいで。」

「では、竜太が起きるまでは休憩とするか。この場所を出ても、銃弾が発射されない時間を作ろう。各々、食事を取り風呂に入って休むと良い。」

 その一言で、6人の気配が一気に緩む。

三日間、休憩しながらとはいえ張り詰めていたのだ、それも当たり前だろう。

 蓮と修平はその場にへたり込み、清華達もホッとしている。

「次に修行を開始する時は、実弾を用いた修行になる。各々、それを覚悟しておく様に。今まではゴム弾だったから当たった所で負傷はしなかったが、この先は違う。実践と同じ様に、気を張り続けて貰うぞ。」

「実弾、って銃弾の事ですよね?どうやって防げば良いんですか?素手じゃ怪我しちゃうんじゃないですか?」

「お前さん達は何を使って戦っている?」

「武器……。武器を使い、銃弾を弾けば良い、という事でしょうか?」

 武器を使う、という事を三日間していなかった為、忘れていた様だ。

それだけ集中してゴム弾を捌いていたという証左でもあるが、実戦で忘れられたらたまったものではないだろう。

「修平君、俊平君、竜太の3人が主だって弾丸を弾く、と言っていたな。まあ、全員武器を抜いておいて構わないだろう、実践では想定通りに物事が動くとは限らない。役回りを決めたから、と言って気を抜いてたら、後ろから撃たれることになるだろう。」

「あたしは?船の中じゃ、木も生やす事出来ないわよ?」

「お前さんは後衛に隠れている事を勧めるな。ウィザリアに着いたら、探知に専念してもらう事になるだろう、それの訓練とでも思っておいてくれたまえ。」

 それでは話はお終い、とウォルフは銃の魔力を解除する。

 大地が竜太を背負い、一行は修行場を出て、それぞれの部屋に向かった。


「ふあぁ……。あれ、僕寝ちゃってました?」

「竜太、目覚めたか……。」

 部屋に戻って、ベッドに竜太を寝かせて瞑想していた大地。

竜太が目を覚ますと、清華の作戦やこれからの修業の事を伝える。

「……。わかりました、僕が治癒魔法を使えれば、もうちょっと楽だったんでしょうけど……。」

「それは、仕方のない事だ……。己を責めた所で、意味はないだろう……?」

「もうちょっと、魔法が得意だったらなぁ、って思ってはいたんですけどね……。父ちゃんみたいに移癒は使えないとしても……。あ、でも、竜神の魔法は他種族に使うと負担がって言ってたし……。」

 竜神の魔法、それは強大な魔力を要するのと共に、強大な魔力に触れさせる事になる。

ディンの移癒は、それを最小限に抑える意味もあり、だからこそ傷を「移し」て、自身の治癒能力を活性化して傷を癒すのだ。

 そうしないと、人間や他種族は肉体が変異してしまう、それほど竜神の魔法というのは強力なのだ。

ディンがエドモンド達に使わなかった理由は、毒までは移癒で移す事が出来ないから、という理由もあった。

「食事に行こう、竜太……。儂も、腹が減った。」

「そうですね、行きましょう。その前に、ちょっと汗を流したいですね。」

「では、風呂に参ろうか……。」

 汗臭い、と鼻を曲げた竜太が、食事の前に風呂をと言い、二人は浴場へ向かった。


「ふぅ……。お、竜太に大地じゃねぇか。」

「竜太君おはよぉ!」

「皆さんいらっしゃったんですね。」

「清華とピノは先入って、今飯行ってるぞ。」

 風呂場に着くと、修平と俊平、蓮が湯船に浸かっていた。

 3人とも、疲れが溜まっていたのかため息をつきながらゆっくりと風呂に浸かっていて、何処か緊張感に欠ける印象を与えられる。

 それは竜太と大地も例外ではない、3日ぶりの風呂に安心していて、体を湯で流す。

「ふぅ、お風呂入れないって、結構辛いですよね。女性だと、もっと気にするんじゃないかなぁ。」

「清華ちゃんは慣れてる、って言ってたよ?リリエルさんと二人だった頃、半月位お風呂入れなかった事があったんだって。」

「僕達、なんやかんやで川沿いを歩いてたりしてましたから、川の水で体洗ってましたね、そういえば。途中からは馬車だったから、村と村の間を行き来する感じでしたから、お風呂に入れないって、中々経験しないです。」

 そう言えば、と竜太も思い出す。

清華は、暗殺者という立ち位置上風呂に入らない日が続く事があるリリエルと行動していて、ひたすら馬に乗って移動を続けていた、と。

 他の2人も、竜太達よりは風呂に入らない生活に慣れていて、なんやかんやジパングでの移動中に一番文化的な生活をしていたのは、大地と竜太だろう。

「僕、お風呂ってずっと入ってなかったから、お兄ちゃんに最初お風呂って言われた時、ちょっと怖かったなぁ。」

「そう言えば、蓮君もそうだったね。お湯に入りたくないって、言ってたっけ。」

 蓮は、虐待を受けていたという生活が当たり前で、風呂に入る事も無かった。

 ディセントに来てまず最初に風呂に入り、髪を切ったのだが、風呂の湯に怯えたり、ハサミで髪の毛を切るのを嫌がったり、と大変だったなと思い出す。

 蓮の髪の毛は元々黒かったのだが、ディセントに来てから灰色になった、それはデインの力を継承した事が由来するだろう、と確かディンが言っていた。

今では灰色の髪の毛にも慣れ、短髪で落ち着いているが、最初会った時はざんばらに切られた不格好な髪形をしていて、とても心が痛んだな、と。

「ウォルフさんはどうしてますかね?」

「えっとね。戦場にいる感覚を思い出したいからって、修行場にいるよ。竜太君の置いていったレーション食べて、待ってるって。」

「ウォルフさん、ストイックだよな。かっけぇってゆーか、あそこまで行くとホント軍人、って感じなんだろな。」

 ウォルフの気配は、今は探知出来る。

しかし、その探知出来るウォルフの気配は微弱で、ウォルフの普段の気配とはまた少し違うものとなっていた。

 おそらく、軍人としての矜持ややり方を確認しているのだろう、と竜太は考えたが、実際の所はどうかわからない。

「入れよ、疲れてるだろ?」

「はい、ありがとうございます。」

 久しぶりに感じる、湯船の温かさ。

竜太と大地はふぅと息をつき、肩まで湯船に浸かる。

 その顔は若干惚けており、修行の時の張り詰めた様子とは、大きく異なる。

それだけ修行に集中していた、という事なのだが、実践ではこれは許されないだろう。

「ウィザリア、どんなところなんだろう?」

「えーっと……。父ちゃんが言ってたのは、日独立国家だそうです。色んな国の人達が、マナの源流を求めて争ってるんだって、言ってました。出来れば関わりたくないって、マグナとフェルンとサウスディアンと、後エクイティって所の、色んな種族が争いあってるんだって。」

「物騒だな、そんなとこにマナの源流ってのがある……、逆か。マナの源流ってのが、そんだけ重要なもんだって事だよな。」

「マナの源流……。その正体は、何なのだ……?」

 そう言えば、触れてこいと言われたが、何なのかを聞いていなかった、と大地4人は思い返す。

 ディンが伝え忘れていたのか、それとも意図的に言っていなかったのか、と竜太の顔を見る。

「マナの源流、それは世界の力の流れの源流らしいです。色んな世界があって、それぞれに属する人達の力の源流を司る流れがある、だったかな。簡単に言えば、湧き水みたいなものだって、言ってた気がします。大地を潤して、生物にとって必要不可欠で、本来なら目には見えないもの、だったかな。」

「でも、僕達に触ってこい、ってお兄ちゃん言ってたよぉ?」

 竜太は難しい顔をしながら、思い出す。

 確か、ここに来て少しした頃、世界の状況を教えられていた時に、蓮と同じ事を聞いた。

本来なら目に入らないものならば、何故争いあってまで獲得しようとしているのか、と。

「この世界は特殊で、マナの流れを読める人達が一定数いる。その人達が、世界の主権を得る為に、膨大な力を必要として、マナの源流を争っている、だったかな。本来の場所とは違う場所にある、って言ってました。」

 本来は、グローリアグラントという国が、マナの源流を管理していた。

 竜神はそれを良しとしていたし、グローリアグラントの歴代の王は、マナの源流を正しい形で世界にあれと考えていた、だからそれを是としていた。

 しかし、戦争によって大地が穢れてしまい、今のウィザリアの土地に移すしかなかったのだ。

「とにかく、触れられるって事は目に見えるって事らしいです。僕もどんな形をしてるかまでは聞いてませんけど、ピノさんがわかってるんじゃないかな?」

「わかってなかったら、連れて行く意味がないもんね。」

「ピノって、人間なのか?木を操る力、なんて他の奴は持ってねぇんだろ?」

「さぁ……。でも、特殊な例だとは言ってました。」

 ピノの出自、それは竜太も知らない。

ディンが意図的に隠しているのか、それともディンですら知らないのか。

 それはわからなかったが、特殊な例であるという話だけは聞いていた。

そんなピノの力が必要になる、というディンの考えは、間違っていないのだろうと竜太は思っていた。

 1500年も生きてきて、守護者を育ててきたディンの勘と思考、それを信じよう、と。

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