餓鬼の群れ
「今日も移動ですね、一日も早く到着すると嬉しいのですが……。」
「そういや、なんでオヤジさんの転移って魔法で行かねぇんだ?」
「転移はこの世界では限られた魔法なんですよ。だから、外界の事を知られるきっかけになってしまうから、安易には使えないらしいです。小規模な転移だったら大丈夫なんですけど、人を飛ばすっていうのは……。」
「じゃあ、なんで船が沈んだ時は飛ばせたの?」
朝食を取りながら、俊平と修平がある種当然とも言える疑問を口にする。
竜太の説明が納得出来ない訳では無いが、それならば何故クラーケンが現れた時、討伐ではなく転移を選んだのか、という話になってくる。
「さぁ……、僕も何も聞いてないですから。多分、船が沈む事を予想してやったんだとは思いますけど……。」
「という事は、ディンさんはあの時点で船が沈む事をわかっていたと、そう言う事でしょうか?」
「予想の範囲内だった、っていうのが正しい気がします。クラーケンが出てきたのは都合が良かった、って言ってましたし。」
という事は、少なくともディンは、船員や客が海に沈む事を理解していた事になる。
人間の営みに干渉してはいけない、という言葉を聞いた後でも、疑問が残ってしまう。
「魔物に殺される事は、人の営みとは違うのではないでしょうか?何故ディンさんは、そこで魔物を倒すという選択をしなかったのでしょう?」
「多分、ですけど……。この世界の、魔物の在り方じゃないでしょうか。この世界では魔物は当たり前に存在する、だからそれも営みに入る、とか……。」
竜太も詳しい事は聞かされていない、だが納得はしている様子だ。
困り顔で説明しているが、それは自分が納得出来ていないからではなく、皆が納得するかわからないからだ。
ディンが定めた法でもない、ディンも従っている側の存在なのだから、ルールはあるだろうと。
「なんかよくわかんねぇけどさ、悪気はねぇんじゃね?」
「そうかもしれないけど、なんかやだな……。」
「仕方のない、事なのかもしれぬぞ……。」
蓮はご飯をバクバクと食べながら、皆の話を聞いていた。
そして、米を口いっぱいに放り込むと、口を開いた。
「お兄ちゃん、守れる人と守れない人の違いがわかるって、言ってた気がする!」
「守れる人と守れない人?蓮君、どういう事?俺達わかんないよ。」
「うーんとね、わかんない!でも言ってた!」
4人が竜太の方を見て、何か聞いていないかという疑問を顔に出す。
だが、竜太も何も聞いていない様で、蓮の言葉に戸惑いの表情を浮べていた。
蓮は口に出して満足したのか、またご飯に集中し始め、なんともおかしな空気が場を流れる。
「亡くなる方とそうでない方の違いがわかる、という意味でしょうか。」
「僕も聞いた事ないですね……。父ちゃん、何か言ってたかなぁ。」
竜太はディンから、そんな話は聞いた事がない。
死にゆく者とそうで無い者の違い、など聞いた事がないのだ。
蓮が何かと間違えて覚えていたか、蓮にだけ話をしていたのか、それは定かではないが、理解している者は誰もいない。
「うーん……。」
竜太は必死になってディンの言葉を思い出そうとするが、何も出てこなかった。
四神の使い達は、ディンには寿命が見えるのだろうか?という疑問を残しつつ、竜太が聞いていないのなら誰も知らないだろうと、その話題を終わりにした。
「今頃向こうはどうなっているでしょうかねぇ?」
「今、街を出た所だな。1週間で首都に辿り着くはずだ。」
朝食を終え、煙草を吸いに来ていたディンと外園。
宿の外で一服をしながら、外園は考えていた事を口にしようとする。
「ディンさん、貴方も未来が見えるのではないでしょうか?この旅が始まってからというものの、貴方の予見能力は、予知と言っても差し支えないレベルに見えますが。」
「外園さんみたいな能力?ないよ。ただ単に、こうなるだろうなで動いてるだけだ。」
「では、本当に予測だけで動いていらっしゃると?」
「そうだよ。クラーケンの時は気配探知したからっていうのはあるけど、他のはどれも予測の範囲を超えてない。」
嘘はついていなさそうだ、と外園はディンの眼を見ながら考える。
となると、自分がしてきた予言と同じレベルの事を、予測だけでしているというのはどれだけの知識と経験が有れば成せる技になってくるのだろうか。
「あぁそうだ、人の寿命はなんとなくわかるかもしれない。」
「と申しますと?」
「死に時が近い人間ってさ、独特な気配をしてるんだよ。それが病気だったり事故だったり、色々と原因はあるんだけどさ。」
「では、エド達が死ぬ事も、なんとなくわかっていらっしゃったと?」
これはリリエルには聞かせられないな、と外園は心の内で呟く。
竜神の掟や色々な制約は有れど、それをリリエルが知ったら怒りを覚えるだろう。
怒りはやがて不信へと姿を変え、そしてそれは対立を生み出す。
それは外園の本意ではない、だから黙っておこうと即断した。
「エド達の事は……。まあ、わからないわけでもなかったけど、正直予想外の所から来たって感じだったな。革命軍の誰かの攻撃を受けると思ってたから、その傷を治癒すれば良いと思ってたんだ。」
「実際はレジスタンスの長によって命を失ったわけですが、ディンさんは本当に毒の治癒は出来ないのですか?」
「例えば、蓮とか大地君達、竜太なら治癒は出来る。竜神の加護を受けてたり、竜神だったりするからな。でも、俺の魔法は人間相手に使うと強力すぎて、危険なんだ。」
「そうでしたか、これはまた興味深いですね。」
ディンが完全開放をすれば、異世界の解毒魔法を使う事は出来た。
しかし、それは竜神の掟に反する行為であり、ディンの主義にも合わない行為だ。
リリエルには申し訳ないと思ってはいるが、エド達の事は仕方がないという感情を持っている。
「俺の魔法じゃなくて、この世界の魔法に解毒があれば良かったんだけどな。この世界、解毒魔法ないだろ?」
「私の知る限りではありませんね、少なくともフェルンやドラグニートでは使われていません。」
「だろ?この世界来てから色々調べてはいるんだけどさ、どうも魔法の制約がきついんだよな。8属性と聖属性、それに外園さんみたいな例外があるだけだから。」
ディンは異世界に飛ぶと、まずその世界の歴史や魔法、戦闘方法を学ぶ。
それはディセントでも例外ではなく、ディンは1年と少し前に指南役達を集めた後、ドラグニートの秘蔵図書館でこの世界について調べていた。
そこで得た知識や、竜神達から聞いた知識を元に、この世界での経験則を立てていたのだ。
「八竜が守護してるっていうのが関係してるんだろうけど、毒を使う存在がいるのに解毒魔法がないって知った時は驚いたよ。」
「そうですねぇ、まだ開発されていないのか、それとも開発を断念する理由や利権の様な物があったのかは定かではありませんが。」
「医者が儲からないからな、その可能性もあるかもしれないな。」
煙草の煙を吸いながら、ディンは解毒魔法が無い事の危うさを考える。
餓鬼然りレジスタンスの銃然り、毒を扱う人間や魔物がいるというのに、解毒魔法が存在していない理由とは、と。
恐らく竜神は魔法の発明はしていないはずだ、だからフェルンやソーラレス、マグナなどが利権関係に絡んでいるのかもしれない、と考えた。
「外園さんは魔法の発明とかは出来ないのか?」
「私ですか?そうですね、新しい魔法の開発をしようと思わなかった事も無いですが、難しいでしょう。この世界の魔法は、神が人に与えし力ですから。」
「そっか、神達が創り出したのか、この世界の魔法は。世界によっては、人間が魔法生み出してたりするんだけどな。」
そう言う世界を幾つも行っていたディンは、そう言えばと少し驚く。
神が賜った物であれば、人間に開発や発明が出来ないのは道理だ。
フェルンやウィザリアは魔法の研究をしているはずだったが、しかし魔法の創造までは出来ていないのだろうと考えられる。
「さて、そろそろ戻るか。」
「そうですね、私も丁度吸い終わりました。」
気が付けばパイプの火が消えていた外園と、煙草を吸い終えていたディン。
2人は雑談をしながら、宿の中へ戻っていった。
「そろそろ昼飯食う中継地点の街に着くぜ。」
「はい、ありがとうございます。」
馬車に揺られていた6人は、もうすぐ正午になろうという所で御者に声をかけられた。
竜太が応対し、そう言えばそろそろ腹が減って来たなと一行は安心する。
周囲を探知しても魔物の気配はない、と言っても餓鬼は探知出来るかわからないが、とりあえずそこも安心出来そうだ。
「後どれくらいかかるかな?」
「1週間って言ってかんな、後6日じゃねぇの?」
一行としては早く到着してほしいのだが、こればかりは馬車の速度に任せるしかない。
慌てても仕方がない、落ち着いて行くべきだというのが清華と大地、竜太の考えだ。
「兄ちゃん達、着いたぞー。」
「はい、ありがとうございます。」
そんな話をしている内に、街に到着した様子だ。
何やら少し喧騒が聞こえる街の中へと、一行は入っていった。
「これ、どうしたんでしょう?」
「何かあった……、のか……?」
馬車を降りると、何やら街中が騒がしい。
何かあったのだとすぐに理解出来たが、何が起こったのかが把握出来ない。
何やら戦闘の跡の様な、血の様な匂いが漂っている。
「おい、何があったんだ?」
「餓鬼が侵入してきたんだよ!奴ら菩薩様がいらっしゃらない間に入ってきやがった!まだ襲われてる人達がいる!」
「なんだって!?」
御者が住人に声を掛けると、住人は慌てふためいた様な声を上げる。
一行が感じた戦闘の気配や、血の臭いの正体はこれかとすぐに理解させられる。
同時に、竜太はどうするべきかを悩む。
餓鬼を倒し街の人々を守るか、ディンの様に世界の営みとして切り捨てるかを。
「餓鬼だって!僕達で何とかしようよ!」
「そうだな、あいつらは毒使うし、街の人が死んじまう。」
「……。そうですね、僕達で倒しましょう。あの、餓鬼はどっちの方向に行きましたか?」
「なんだいアンタら!戦えるってのかい!?餓鬼なら北の方に行った!どうにかしてくれ!」
町人は竜太達が武器を持っているのを見ると、北の方を指さし怒鳴る。
竜太がそちらの方を探知すると、何か戦いの気配がしていた。
「わかりました、私達に任せてください。皆さんは避難を!」
「行こう!」
「うむ……!」
走り出す一行と、避難を始める御者達。
北の方向へ、戦闘の気配がする方向へと、一行は向かっていった。
「あそこだ!人が戦ってます!」
「わかった!」
北へ向かい走っていると、死体が幾つも重なっていた。
逃げ遅れた人々が、餓鬼によって殺されてしまったのだろう。
そんな中を進んでいくと、餓鬼と戦っている僧衣の人間が数名いるのが見えた。
が、圧倒的に餓鬼の方が数が多く、押されていた。
「助太刀にまいりました!皆さんは下がってください!」
「助けか!菩薩様の御使いか!?」
「聖獣の守り手だ!俺達がここを何とかするから、あんたらは住人避難させろ!」
武器を構えながら走る一行と、街の守り手が怒鳴り合う。
街の守り手は、助っ人なら誰でもいいという風で、一行に前に行かせると街の人の避難を先導し始めた。
竜太は竜の愛を光から出現させ、蓮はルミナ&ウィケッドをくっつけ、4人はそれぞれの武器を構える。
餓鬼の数は100体程、この数は前の5人だったら相手しきれ無かっただろう。
だが、今の蓮達は、ディンとの過酷な修行を経て、強くなっている。
『いっくよぉ!雷咆斬!』
『アクアブラスト!』
清華の放った水の弾丸に、蓮の放った雷咆斬が重なり、帯電する。
それは餓鬼の群れの中にぶつかり、弾けて餓鬼を感電させた。
「俺達も行くぞ!」
「わかった!」
感電し動けなくなった餓鬼の群れに、俊平と修平、大地と竜太が突撃する。
「いっけぇ!」
修平がまず群れの前に辿り着き、風と雷の魔力を練り合わせた正拳突きを繰り出す。
閃光の様な光が餓鬼の群れの中を走り、ずたずたに皮膚を切り裂く。
「喰らえ!」
続いて俊平が、炎と風の魔力を合わせた剣撃を繰り出し、炎が餓鬼の皮膚を焼いていく。
「ふん……!」
大地の攻撃は一度に複数の餓鬼を捉え、骨を砕き動けなくさせていく。
竜太もそれに続き、次々に餓鬼を仕留めにかかる。
「僕達強くなった!」
「蓮君!油断は禁物ですよ!」
嬉しそうに笑いながら、餓鬼と戦っている蓮。
それだけ攻撃に余裕があるという事なのだが、ここでまた毒を喰らってしまったら時間がかかる。
天野の様な医者が他にもいるという保証はない、だから毒を喰らう訳にはいかないのだ。
「だいじょぶ!僕頑張るもん!」
蓮は無邪気に成長を喜びながら、餓鬼を次々と斬っていく。
竜太がその様子を見てカバーに入れる様に注意しながら、6人は勢いよく餓鬼を倒していく。
「でも、確かに、俺達強くなったよね!」
「そう、だな!」
修平と俊平も、自分達が以前より強くなった事を実感する。
ディンとの修行の中ではあまり実感が湧かなかった、修行の成果という事を。
前回ソーラレスに来た時は20体程度の餓鬼に苦戦していたのに、今は100体以上の餓鬼を相手に呼吸すら乱していない。
会話すらしながら戦っていて、餓鬼の攻撃が以前より遅く感じている。
「……。儂らも、成長しておると、いう事だな……。」
「そうですね、皆さん強くなりました。」
大地も、少し安心しながら攻撃を叩き込んでいる。
竜太は大地の近くにいて、その言葉に同意しながら竜の愛を振るう。
竜の愛で斬られた餓鬼は、斬られると何かガスの様な何かが霧散し、倒れていく。
やはり普通の魔物と違い消える事はないのだが、何処か幸せそうなうめき声を上げ、そしてこと切れる。
「……。」
それを見て、竜太は以前感じていた疑問を確信に変える。
餓鬼は魔物ではない、元々人間だったのだと。
それが、何らかの理由で、魔物の様な姿に変貌してしまっているのだ、と。
ディンが言っていた事を思い出し、それを最終的な結論として出した。
「そろそろ終わり!」
「これで、最後です!」
蓮と清華が最後の2体を切り伏せ、餓鬼は沈黙する。
周囲が静かになり、戦いが終わった事を皆理解する。
「やったぁ!僕達勝ったぁ!」
「やったね、蓮君!」
修平と蓮がハイタッチをし、清華達も警戒を解く。
竜太はまだ警戒をして探知を発動していたが、餓鬼と思しき気配はしない。
「この街、なんで餓鬼が入って来たんだろう……。」
「どうした……?」
「西端地区は、餓鬼がすぐ近くに生息してたのに、街中には侵入してきませんでした。そもそも、魔物除けの結界みたいなものがあるはずだから、魔物が入ってくるはずが無いんですよ。」
「と、言うと……?」
戦いが終わってから気づく、違和感。
ジパングでは、四神が村にまじないを掛け、魔物が入り込まない様にしていた。
だから、武力を持たないジパングの民でも、魔物に怯えずに生活が出来ていた。
ソーラレスでも、てっきり同じ様な仕組みがあると思っていた竜太は、何故ここに餓鬼が入ってきてしまったのか?と疑問を持つ。
「菩薩様が今いらっしゃらないからだよ、小僧。菩薩様の持つ神通力がねぇと、街は餓鬼が入ってきちまうんだ。」
「貴方は?」
「この街の長、枝野塚だ。街を守ってくれて感謝する、しかしお前達はいったい何者だ?」「
「僕達はジパングの聖獣の守り手なんです、今は仏様の加護を受ける為に首都に向かっています。」
無精ひげを生やした男性が6人の元に近寄ってきて、問い掛ける。
竜太は通じると良いが、と名乗りながら考え、枝野塚の様子を見る。
「聖獣の守り手……。確か、千年前の戦争を止めた守護者、だったか?その聖獣の守り手が、なんだって仏陀様の加護を?」
「今、マグナが世界中に向けて戦争を広げようとしています。だから、僕達はそれを止める為に各国の長の加護を受けに行って回っているんです。」
「マグナが戦争、か。またあの連中は争ってるのか、懲りない奴らだ。」
枝野塚は千年前の戦争については知っている様子で、うんうんと頷いている。
餓鬼を退けたその力というのも、それを裏付ける理由になっているのだろう。
「とにかく、これで街は暫く安心だ。菩薩様が戻られるまで、持ちこたえられるだろう。感謝するぞ。」
「僕達頑張ったからね!みんな守れてよかった!」
「そっちの小僧もありがとうな、よくやってくれた。ここの後始末は街の人間がやる、良かったら家に寄ってってくれ。」
「嬉しい申し出ですが、私達は先を急ぎますので……。昼食を頂いたら、すぐに出発しなければならないのです。」
清華が枝野塚の申し出を断ると、枝野塚はウームと唸る。
しかし、急いでいる理由には見当がついたのか、あまり深入りしようとはしない様子だ。
「わかった、じゃあ飯処に行くといい。街の南の方にあるから、餓鬼の被害は受けてねぇはずだ。」
「ありがとうございます。」
一行は犠牲になった人達の事を考え少し胸を痛めたが、しかしここで止まる訳にも行かないのも事実だ、と南へ向かい始めた。
枝野塚はそれを暫く眺めていたが、気を取り直して街の人間に後始末の指示を飛ばし始めた。
「餓鬼ってのはどんな魔物なんだ?竜神王サンよ。」
「餓鬼か、あれは魔物になりかけた人間だな。何らかの理由で仏の加護を受けさせなくして、それによって闇の許容量を超えて体が変異するんだ。」
「って事は、この世界群の魔物の生まれ方とは違うって事だな?」
「そうなるな、仏の神通力で無理やり闇を消して、そのせいで闇が芽生えた時に一気に魔物に変貌する、そんな所だろうさ。」
ウォルフがふと気になったのか、餓鬼についてディンに説明を求める。
ディンは、自分の予測とドラグニートで学んだ事を照らし合わせ、答えを出した。
「じゃあ、ここの人達は魔物になっちゃうって事?クェイサーの言ってた魔物と、違うんだね。」
「そうだな、明日奈は魔物の生まれ方を聞いててもおかしくないか。魔物ってのは本来、生物が抱えた闇、その生物の許容量を超えた時に生まれ落ちる。だけど、ソーラレスはそれを是としなかった。だから、神通力を使って闇を強制的に消し去って光を保とうとしてた。多分そんな感じだな。」
話を聞いていた明日奈が、疑問を口にする。
人間が魔物になる、というのはクェイサーからは聞いた事がない、だから人間が魔物になるという事に心底驚いている。
「じゃあ、なんで人間が魔物になるの?だって、神通力っていうので守られてるんでしょ?」
「破門された人間は神通力の加護を受ける事が出来なくなる、らしい。そのせいで、餓鬼が生まれるんだろう。」
ピノは首を傾げながら言葉を口にするが、ディンはすぐに答えを出す。
破門された人間というのは街にはいる事が出来ない、という事は、神通力による強制的な闇の消去も出来ない。
そこで、闇が芽生えてしまった所で、餓鬼に変貌するのだろうと。
「彼らはそれに気づいてしまったら、苦しいでしょうねぇ。」
「仕方がないよ、この国がそう言うシステムで成り立ってる以上、避けては通れない道だ。」
外園が6人を憂う様な発言をすると、ディンはやれやれと首を振る。
いったい何故そんなシステム担ったのかはわからないが、なってしまった以上は仕方がないのだ、と。
事実、餓鬼になった人間を元に戻す方法はない。
竜神剣を以てしても、その肉体に宿った闇を斬り祓う事しか出来ない。
だから、一度でもそれを経験してしまったら、もう後は苦悩に打ち勝つしかないのだと、ディンは考えていた。
そして、皆ならその苦悩に打ち勝つ事が出来るだろうと、そう信じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます