精神世界にて

「お主が儂の転生者か、成る程よく似ておる。」

「……、ここ、は……?」

 大地が目を覚ますと、そこはほの暗い何もない空間だった。

 自分はディンと対峙し、そして気を失ったはずだ。

それがなぜ、こんな何もない所にいるのだろうか、と大地は疑問を口にする。

「ここは魂の世界、記憶の断片。儂の転生者であるお主の、あの勾玉の力の中とも。」

「お主は……、何者だ……?」

 声が聞こえ、そちらを振り向く。

そこには、大地と瓜二つな顔をした、千年前に陰陽師が着ていたとされる法衣の様な物を纏っている、男がいた。

「転生者よ、お主は力を欲している、違うか?」

「力……?」

「竜神王という男に破れ、気絶しただろう?お主達の力が及ばず、守護神デインの選びし子も倒された。」

「なぜ、知っておる……?」

 何故そこまでこの男は知っているのだろうか、と大地は純粋に疑問を持つ。

自分に瓜二つという事、転生者?という言葉も気になる。

「儂ら四神の守護者は、千年前の戦争が終わりを迎えた時に、力と記憶と意識の一部を勾玉へと封じた。もしもう一度戦争が起きようとした場合、世界に生まれ落ちる転生者の為にの。」

「転生者、とは……?」

「そのままの意味だ。お主は儂の魂が転生した存在、つまり生まれ変わりというわけだな。まあ、儂より随分と無口に生まれてしまった様だがな。何故自分が棍術に長けているのか、それを疑問に思った事は無かったか?」

 そういわれると、何故棍術をしていたのか、と思い返す。

偶然六尺棒が寺にあったから、では学ぶという過程を省いていることになる。

 自己流でやってきたと言えばそれでお終いなのだが、今の話を聞くとそれも違っている様な気がしてくる。

「魂には戦いの記憶が刻まれる、お主のいた世界におる陰陽王の転生者も、とあるきっかけで力に目覚めたな。それと同じで、お主の中には棍を使うという戦い方が刻まれていたのだ。」

「では…、儂の戦い方は……、お主が元に、なっていると……?」

「そういう事だ、儂が使っていた武器は玄武から賜った物だったがな。」

 そういえば、と大地は1つ思い出す。

寺の蔵、決して入ってはいけないと入る事を禁じられていた蔵には、心月家に代々伝わる宝物があった、という話を聞いた事を。

 中身が何かは聞いた事が無かったが、可能性としてそれが玄武の賜ったという武具ではないか、と。

「儂がセスティアに隠居する際、賜った棍は宝具として祀る様にと言い伝えていたんだが、どうやら知らぬ様だな。」

「……。では、儂はそれを使い戦うのか……?」

「それは少し違うの、此度の戦争は何か外の世界から干渉を受けているという話だ、玄武が賜った武器では通用しないだろう。」

 それでセレンが呼ばれたのか、と大地は納得する。

もしも宝具がありそれを使うのならば、セレンは呼ばなくても構わないはずだと。

 しかし、神が賜った武器よりも優れた武器を、造れる様な人物とも思えなかった。

「竜神王が此度の戦争に招集した者達は、いずれも外界に属している者と見える。ここディセントでもない、セスティアでもない、他の世界だ。」

「世界は、数あると……?」

「どうやらその様だ。勾玉を通してお主から周囲を見ていたが、リリエル殿やウォルフ殿の様な存在は、この世界にもセスティアにも居らぬからな。」

 大地は驚く。

それもそうだ、世界が無数にあるとはディンは一言も言っていなかった。

 ただ、表と裏がある様にしか聞こえない言葉で、それで大地達も納得していたのだから。

「儂らは……、何も知らぬのだな……。」

「それも仕方なかろうて、儂も世界が幾つも存在していると知ったのは、お主を通して世界を見て初めてだ。あの竜神王という男も、秘め事の1つや2つはあるという事だな。」

 何故秘め事にしなければならないのか、それはわからないが理由はあるのだろう。

竜太もその事を知っていて黙っていたのだから、それは指南役達共通の秘密という事になるだろう。

 それは理解出来た、理解は出来たが、初めて自分を友と呼んでくれた竜太が、何か秘め事をしているという事実にショックを受けてしまう。

友情や友を神聖な物の様に感じてしまっていた大地なのだから、仕方がないと言えばそうかもしれ名が。

 ショックで暫く黙ってしまい、大地の先祖の男もそれを理解していた為、整理する為に時間を与えた。


「貴女が私のご先祖様だという事は理解いたしましたが、何故今になって現れたのですか?」

「私達は記憶の断片、意識の欠片。とある出来事が起きないとこうして言葉を掛ける事が出来なかったのですよ。」

「それは?」

「貴女達が命の危機に瀕する事、気絶や死の間際になる事。それが私達が出てくる為に必要な出来事なのです。」

 清華は、ほの暗い空間で自分にそっくりの女性と話をしていた。

その話の内容は、自分がその女性が転生した人間である事、千年前の戦争を止めた人物であるという事だ。

「だから、ディンさんは私達を……?」

「あのお方は何か知っておられる様子でしたから、間違ってはいないでしょう。」

「ディンさんは、何処まで知っていらっしゃるのでしょうか?」

「わかりません、私達の時代にはいらっしゃらなかった方ですので。ただ、竜神王という存在は、デイン様より聞いていました。」

 デインの事は知っているのか、と清華は理解する。

 デインの事は話だけは聞いている、そういえば蓮が会ったと嬉しそうに言っていただろうか。

会ったという事は、実際に存在する神なのだろう、と理解出来る。

「デイン様曰く、竜神王様は自分達とは次元を異にする存在と戦う為に存在しているとか。それが何を意味するのかまでは教えていただけませんでしたが、リリエルさんという方の仰る神とは、その様な存在なのではないでしょうか?」

「次元を、異にする……?」

「それよりも、私達は貴女達に協力する為に意識を勾玉に封じました。貴女は、二刀流がわからないと仰られていましたね?」

 清華は、何故それを知っているのか、と驚く。

その事を話してから数日しか経っていないし、何処かで聞いていたのか?と言われると違う様な気もする。

「私達は意識を持っています、勾玉を通じて貴女達を見ていたのですよ。」

「それで、私が悩んでいる事を知っていらっしゃったのですね。」

「はい、それでは時間もあまりないので、始めましょう。」

「始める、とは?」

 清華の祖先は始めるというと、眼を瞑る。

両手を何かを握る様な形にしたかと思えば、そこには太刀と脇差が握られていた。

「貴女を強くする、それが私達の最後の役目なのですよ。」

「実践で覚えろ、という事ですね?」

「その通りです、さあ貴女も構えてください。」

 清華は、自分とそっくりの祖先の言いたい事を理解し、太刀と脇差を抜く。

「ここは貴女の意識の中、といっても怪我をすれば体に影響が出ますので、ご注意を。」

「はい!」


「そんなものかな?」

「まだ……、まだ……!」

「君は魔力を使うのが苦手みたいだね、俺そっくりだ。でも、そんな事言ってられないだろう?」

 修平の精神の中で、戦っていた修平とその祖先。

事のあらましを聞いた修平は、納得して祖先と戦っていたが、その戦闘能力は大きく違う。

祖先が手を抜いていても、修平は本気になり息を切らしている。

「君は風と雷の魔力を持ってる、それを生かさないと。」

「そう、言われても、わかんないよ……!」

「まあ、やってる内にわかるよ。」

 そう言いながら、祖先は拳を繰り出す。

修平がそれを右腕でいなすが、それは失敗だとすぐに気づかされる。

「いった!」

「そりゃ雷の魔力を籠めたからね、電撃の痛みがあるだろうね。」

「雷の、魔力?」

 修平は、自分がそれを授かった事をすっかり忘れていた様だ。

風の魔力だけを操ろうとしながら戦っていて、雷の魔力を使おうとしない。

「君は竜神様の加護を受けただろう?なら、俺よりも強くなれるはずだよ?」

「そ、そうなの……?」

「うん、君は強くなれる、強くならなきゃならない。」

 言いながら攻撃の手を止めない祖先と、それを何とか捌いていく修平。

風と雷の魔力を不定期に、そして時折同時に喰らいながら、その性質を学習し始めている。

「せいやぁ!」

「そうそう、その調子だよ。」

 風と雷を混ぜた攻撃を繰り出すと、祖先は嬉しそうにそれを弾く。

 まだまだ未熟で、不安定でいつでも繰り出せる訳では無い。

が、全く成長していない訳ではない、それは修平自身理解出来ていた。

「風も雷も、速度が大事だ。自分に帯電させて反射神経や神経系を強化して、風の魔力をもっと強く打ち出せれば、魔力を使うのが下手でも使える様になるよ。」

「自分に、電気流すって、痛く、ないの!?」

 攻撃を繰り出し続けながら説明する祖先と、それをなんとか捌きながら疑問を口にする修平。

 確かに、祖先の撃つ風の魔力は、修平の数倍の威力だ。

風の魔力を放つ時には、一瞬殴る拳や蹴りを出す足が加速している様にも見える。

「痛くはないよ?雷の魔力は、雷そのものではないから。様は全身を巡っている魔力の通り道に、活性化させた魔力を流すって事なんだから。」

「え、えぇ……?」

「いうよりやる方が早いかな、手をかして?」

 情報量の多さに動きが止まってしまった修平に対し、祖先はいったん攻撃の手を止める。

そして近づいてきて、素直に手を差し出した修平の手を握った。


「今のてめぇじゃ世界なんざ守れねぇよ、出直してこい。」

「ふざ、けんな……!俺は……!」

「言われただけで世界守んのか?そんな信念のねぇ奴にゃ教える事もねぇな。」

 自分の祖先を名乗るそっくりな男に戦いを挑まれ、戦闘を繰り広げていた俊平。

しかし、意識の中という精神世界でも、体力や気力という物は反映されてしまうらしい。

地面に四つん這いになり、呼吸を整えようとしていた。

「てめぇの意思もない、覚悟もない。そんな奴に世界が守れると思うか?」

「っざけんな……!俺だって……!覚悟してる……!」

「足りねぇって言ってんだよ、てめぇなんざの覚悟じゃ、世界は守れねぇ。」

 そんな事はない、と言い返したかった。

自分は覚悟を決め、戦ってきたと。

 しかし、このざまは何なのか。

ただの意識の欠片である祖先の男に力及ばず、地べたに這いつくばっている、このざまは。

「竜神の加護を受けてるってのに、俺なんかに負けるんじゃてめぇは死ぬだけだ。」

「……、っざけんな……!まだ……、負けてねぇ……!」

 立ち上がり、刀を拾う俊平。

 その瞳はまだ、闘志を失ってはいなかった。

ギリギリの所ではあるが、まだ燃え尽きてはいなかった。

 それは、自分も必要とされているという事実、自分達にしか世界は守れないという言葉を信じていたからだ。

今まで劣等感の中で生きてきた自分が、必要とされているのなら。

「俺は……!もう裏切りたくねぇんだ……!」

 それは仲間を、そしてセスティアにいる友を、家族を。

弱くても、守りたいと願った人達がいる、だから負けるわけにはいかない。

 消えかけていた俊平の闘志が、再び心を燃やし始める。

「口じゃなんとでも言えんだ、その覚悟が本物ならかかってこいよ。」

「俺は……!負けねぇ!」

 俊平が立ち上がり、地に足を踏みしめ突撃しようとした、その瞬間。

頭の中に、力の使い方が流れ込んでくる。

それは、炎の魔力を使い爆発量を高め、風の魔力で自身の速度を上げるという解だった。

今までの様に魔力を外に放出するだけではなく、体内で魔力を巡らせ、自己強化をする。

「わかってきたじゃねぇか。」

 先ほどまでとは別人の様な、攻撃の威力と速度。

刀を合わせた瞬間、俊平は炎の魔力を刀から放出し、爆発を起こす。

「俺は、負けねぇ!」

 爆風が吹き荒れる中、俊平は決意を新たにする。

誰に何を言われようと、世界を守ると。

それが使命だからだとか、宿命だからではない、己がそうしたいという意思で。

「その調子だ、じゃねぇと俺達が出てきた意味がねぇからな。」

 俊平の祖先は、嬉しそうに笑いながら刀を構える。

俊平は、その祖先に向けより強い一撃を加えるべく攻撃を始めた。


「やあ、蓮。こうして会うのは二回目だね?」

「だ、誰!?……、お兄ちゃん……?」

「僕だよ、デインだよ。」

「デインさん!?」

 自分が何処にいるのかわからない、孤独に苦しみを覚えそうになっていた蓮の隣に、光が零れる。

 それは人の形を成し、ディンをもう少し大人にしたような、そして隻腕ではないディンによく似た青年になる。

「デインさん、なんで……!?」

「ここは蓮の精神世界、僕の力が僕の形をしているんだよ。だから竜じゃなくて、人間の姿なんだ。」

「どういう事……?」

「つまり、ここは蓮の心の中で、僕は蓮に与えた力そのものだよ。」

 眼を白黒させる蓮に、わかりやすい様にとデインは説明をする。

心の中、というのがわからない蓮には理解出来なそうだが、それ以外に説明する方法もない。

「僕、お兄ちゃんと修行してて……。」

「気絶したんだよ、それでここに辿り着く事が出来たんだ。他の皆も、同じだね。皆ディンが気絶させて、それぞれの精神世界で自分の祖先に修行をしてもらってるんだ。」

「じゃあ、デインさんと修行するの?」

「そうだよ蓮。さあ、剣を構えて。」

 デインは蓮がある程度理解したと認識すると、右手を前にかざす。

「竜神剣竜の想いよ。」

 光が集約し、紅玉の宝玉の填まったバスターソードが現れる。

蓮は腰に装備していた両刃剣を抜くと、くっつけずに両手で構える。


「そう言えば蓮、君はなんのために戦ってるんだい?」

「え……?うんとね、お兄ちゃんにお願いされたから!お兄ちゃんが、僕の力が必要だからって!」

「そうだね、それは間違いじゃない。でも、それだけを戦う理由にしていたら、いつか負けてしまうよ。」

 戦いを始める前に、ふとした疑問をデインが口にする。

蓮は、それは1つしかないと答えるが、デインはそれを聞いて悲しげな顔をする。

「ディンの為、頼まれたから。それも、立派な理由の1つだ。でもね蓮、人間はそれだけじゃ戦っていけないんだよ。」

「でも……。僕、なんにも知らないから……。」

「人間は、誰かを守る為に戦う時、一番強くなれるんだ。蓮にも、守りたい人がいるんじゃないかな?」

「守りたい人……?でも、お兄ちゃんは僕よりずっと強いし……。」

 守りたい人、と聞いてもピンとこない蓮。

 しかし、デインは蓮に力を与え、意識を少し共有する事で、何か知っている様子だ。

だが、蓮自身がそれに気づかなければ、意味がない。

「例えばそうだね……。共に戦う仲間を守りたい、と願う事はないかな?」

「仲間って、大地さん達の事……?守りたいのかなぁ、わかんないよ。だって、大地さん達僕より強くなれるってお兄ちゃんが言ってたし……。」

「蓮、共に戦う仲間っていうのはね、背中を預けあう存在なんだよ。どっちが強いからとか、どっちが弱いだとか、そんな事は小さい事なんだ。互いに助け合って、守り合う。それが仲間だって、ディンから言われなかったかな?」

 そういえば、と蓮はディセントに来た直後の事を思い出す。

まだ修行を始めたてで、ろくに剣を振れなかった頃、ディンが言っていた。

「仲間ってのは、強い弱いなんて優劣つけて比較するものじゃないんだぞ、蓮。お互いに助け合って、守り合う、それが仲間っていうもんだ。」

 と。

 仲間、それは蓮にとって、友達といっても差支えはないだろう。

初めて出来た友達である竜太や、俊平達四神の使い。

 そして師匠でもあるディンに、指南役達。

そんな人達を、無意識にだが守りたいと願っていたのではないか?とデインは蓮を諭す。

「僕が見てきた蓮の姿は、皆を守ろうと必死だったと思うよ。頑張って強くなって、皆と戦える様にって。」

「そう、かなぁ……。」

 嬉しい、そう思う。

 友達もいなかった、いじめられ虐待を受けて居た独りぼっちだった自分が、誰かの為に戦うというその言葉が。

そうなのではないか、と思わせてくれる、デインの言葉が。

「蓮は僕の力を使ってる、それは僕の意思を継いでくれてるという事でもあるんだ。僕は家族や世界を守りたい、蓮にもそういう気持ちがあるから、僕の力を使えてるんだと思うよ?」

「そうかなぁ……!僕、皆の為に頑張ってたのかなぁ!」

 言われていると、そうだと思えてくる。

今まで無意識化で感じていた事が、表面に言葉として出てきた様だ。

「蓮は僕の剣を使う時、何が必要と言われたか覚えてるかい?」

「えーっと、誰かを守ろうとする事?」

「そう、誰かを守るという意思が必要なんだ。ディンが、そういうおまじないを掛けたからね。」

「そうなの?」

 元々、竜神剣に抜刀する条件などない。

ディンの様に鞘自体を無くす事も出来るし、竜神であればその鞘から引き抜く事が出来る。

 しかし、ディンは何故か、蓮の持つ竜の想いに枷を掛けた。

「本当はそんな気持ちも必要はないんだけどね、ディンは何かをわかっててそのおまじないを掛けたんだと思うよ。」

「なんでだろー?」

「それはディンしか知らない、でも僕は蓮になら竜の想いは扱いこなせると思うよ。」

「ほんとぉ!?」

 デインは、ディンが蓮に伝えたかったであろう、しかし伝えてしまったらダメだと思っていたであろう事を口にする。

 ディンはそれがわかっていて、蓮をここに飛ばしたのだろうと考えていたから。

デインはデインなりに、蓮の事を思い力を与えようとする。

「さ、構えて。修行開始だ。」

「はーい!」

 講釈は終わり、ここからは実践だと、デインは剣を構える。

蓮は嬉しそうに笑いながら、両手に剣を構え戦闘に備えた。


「さて、皆それぞれやってるかな。」

「ディン君、あの子達の意識を飛ばしてどうしたいというの?」

「ん?まあざっくり言うと、勾玉にいる先祖との邂逅だな。あの勾玉には魂の欠片が備わってる、それとの対話と修行だよ。」

「それで、ディンさんは見違える、と仰られた訳ですね?」

 夜になっても目を覚まさない蓮達を置いて、食事をしていたディン達。

ディンが笑いながら真実を告げると、リリエル達は理解し納得する。

「ディンさんが酷い人に見えたから、ちょっと安心したよ?考えがあったなら、私達には先に伝えておいてよ。」

「はは、そしたらあの子達にも伝わって、緊張感が緩むだろ?」

「確かに、あの子達ならじゃあ気絶させてくださいーとか、生ぬるい事言いそうよね。あたしはディンは間違ってないと思うわ。」

「竜神王サン、あんたは何処まで計算してるんだ?」

 明日奈は驚きの方が強かった様で、ピノはなんとなく四神の使い達の甘さに気づいていた様だ。

一方で、ウォルフはディンが何処まで知っていて、何処まで計算しているのかを、不思議がる。

「計算というか、予測だよ。こうなるだろうなって、予感とも言うかな。」

「それで全てが上手くいっているのだから、貴方のそれは凄いわね。」

「伊達に1500年も生きてないからな、それくらいの事は出来る様になってないと。」

 守護者を育て外界の敵を討つ、という事をもう何十回としてきたのだ。

ある程度法則性は理解しているし、それを元にして新しい予測を立てればいい。

ディンの余裕は、その経験の量から来るものだと、リリエル達は改めて実感した。

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