ゾネ

ひのはら

プロローグ


 『RuuM』は創刊40年の歴史を誇り、女性から多大なる支持を得るファッション雑誌だ。

 

 雑紙離れが進む国内において、以前と変わらぬ売上を誇る『RuuM』モデルに新たに抜擢されたのは、170センチを優に越えるスタイルを持つルナ。


 16歳の高校一年生という若さで国外の有名ブランドのアンバサダーを務める彼女は、老若男女を骨抜きにする美貌と称され、愛らしいルックスは天使のようだと評されている。


 

 それが、世間一般的に見たモデルの『ルナ』だ。



 七瀬ななせさくも、ついひと月前までは全く同じ印象を抱いていた。


 日本人離れしたスタイルに、思わず目を見張ってしまう美しさ。


 神が1000年に一度本気を出して作り上げた最高傑作だと言われても納得してしまうくらい、ルナは絶世の美女だと謳われているのだ。



 だからこそ、咲は今目の前にある光景に思考が追いつかなかった。


 「スーッ……ハァッ……」


 あの、ルナが。


 絶世の美女だと世界から太鼓判を押されているモデルが、咲の使用済みパンツに顔を埋めて深呼吸をしている。


 何度目を擦ってもその景色は変わらず、幻想でないことは明らかで。


 どうしてこんなことになったのか。


 目眩を起こしてしまいそうなくらい衝撃的な光景に、咲は彼女と出会ったつい先日の出来事に思いを馳せた。

 

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