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 巨大な時計の長針を先の方から中心に向かって歩いていたわたしは、小さな村を見つけた。いや、村と言うにしては小さすぎて、集落と呼んだ方がいいのかもしれない。

 長針は時計の針にしては大きくて(そもそも道のように上を歩けている時点でその大きさがとんでもないことは知れるだろうが)、この集落には十数件の家があるようだった。

 わたしが目を覚ましたところはこの集落ほど大きくなかったのだが、道を進むにつれ道幅は一定の割合で広がっているようだった。

 どうやらここは未だに長針の矢尻の途中らしい。本当、この時計がどれだけ大きいのか想像もつかない。

「ちょっとそこのあんた。あんた一体誰だい?」

 これからどうしようかと集落の少し手前で立っていたら、集落からひとりの女性がわたしへと近づいてきて警戒心を向けてくる。

 女性は30台中盤といったところだろうか。肩甲骨ぐらいまでありそうな茶色の髪の毛をひとつにまとめていて、その表情や声の出し方からも快活そうな印象を受ける。

「えっと……、わたしはゆうかと言います。気付いたらこの道の先の方で目を覚まして、わけもわからずとりあえず歩いてきたんですけど……」

 これが四方八方を森に囲まれでもしていたのならば、どちらに行けば良いのか逡巡していたかもしれないが、わたしが倒れていたのは長針の先で、動ける方向は一方向しかなかった。

「って……あんたまさか『悠遠のふち』から来たのかい!?」

「その『悠遠の淵』というのがわたしが来たところと同じところかわかりませんけど、この道の向こうの方の先っぽのところです」

 あの場所からもう結構歩いた気がする。時計がないので正確なところはわからないが、4時間ぐらいはずっと歩いてきた気がする。

「そりゃ確かに『悠遠の淵』で間違いないよ! っていうことはあんたはこの世界の『救世主』サマってわけだ!」

 へ? 救世主?

 いきなり出てきた単語にわたしは目を点にするのだった。

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