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長針の先っぽの辺りに立っていた。
最初、自分が立っている場所がなんなのかよくわからなかったが、周りを見回してみると、どうやら自分が大きなアナログ時計の文字盤の上にいるようであることがわかってくる。
下を見てみれば長針の矢尻になっていて、この矢尻の上だけでもちょっとした部屋ぐらいの面積はあるだろう。
そこから黒い道が延びている方向が順当に考えて時計の中心だと思うのだが、周りがどんよりと薄暗い上に黒い道の先はよっぽど遠いのか、霞んでいて終わりはとても見えそうにない。
文字盤がこれだけ大きいと針の進む速度も相当なものになりそうなものだが、わたしが目覚めてから長針はまだ一分の時すら刻んでいない。
かといって止まっているわけでもないようなので、どうやらわたしの時間間隔とは違う動きをしているらしい。 空はというとドーム状になっていて、薄暗いからよくわからないのだが、たぶん銀色の屋根で覆われているのだと思う。
文字盤の上は……揺れてる?
長針の中心付近から見ている分には気付かなかったが、よく見てみると文字盤がたゆたっているように見える。恐る恐る指で触れてみれば僅かな冷たい感覚と共に指が文字盤の中にのめり込んだ。
この文字盤、液体なの?
どうやら表面が文字盤に見えるだけの水らしい。何も考えずに足を踏み出したりしなくてよかった……。泳げないわけじゃないけど、だからといって好き好んで着衣水泳をしたいとも思わない。
少し迷ってからわたしは長針の針の上を中心へと向かって歩き始めた。このままこうしていてもなにも始まらないし、長針の上を歩いて行けば誰かに会えるかもしれない。
もちろん、文字盤の海(湖?)を泳ぐという選択肢は最初から除外していた。
しばらく歩いていると長針の幅が広がり、わたしは思わず目を丸くして立ち止まってしまった。
長針の上に小さな村があったのだ。
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