第十二話 転移魔法の失敗
転移した先では、雪が降っていた。
おそらく住宅地だろう。煉瓦造りの家が立ち並び、まるでクリスマスの雰囲気だ。
ここは、どこだろうか。
とりあえず、住人を探すとするか。
**
転移魔法にはルールが有る。
その一、転移する先をしっかりイメージすること。
その二、転移前の自分の居場所もイメージすること。
その三、十分な魔力を使うこと。
この条件を満たさない限り、必ず失敗する。
下半身だけ転移したり、誤って転移した先が壁だったりと、すべての失敗例を見終えると吐きそうになるくらいエグいものが多い。
それでも、俺の場合は運がいい。まるで神様が祝福してくれたみたいだ。
できればリーゼ王国が楽だったけど、文句は言うまい。
裏路地でも、かなりのラッキーだ。
さてと。ここに住んでる住民を探すか。
一人目。四十分ほどかけて、裏路地でいかにも怪しそうな薬を片手に、「ぐへへへへ。マリーちゃん。マリーちゃあん」と呟いている男を発見した。
「あのーすみm」
「はええ?お前マリーちゃんのてきかあああ?ぐへっ。俺のーーー」
「あ。いや。何でもないです」
やっと苦労して見つけた男は、いろいろとダメな人間だった。
二人目。歩き回って30分間。次に話しかけたのは、守衛さんだ。目つきが既に俺を怪しんでいる。
さっそく自首、、、って違うよな。俺何もしてないよな。ただ密入国まがいのことをしただけで。
白なんです、守衛さん。
「おい。ちょっとそこのお前。とまれ」
「何言ってるんですか。俺は何も悪いことしてませんよ」
「まだ何も言ってないが・・・怪しいな」
口に出して言うこと?それよりも、まずは身元なんかを守ってもらわなくては。
牢獄行きなんて、人生で三回目になるかもしれないし。
「お前は見たところ、人族だが、どうやって入国した?」
ここで俺は正直に話した。なんとなく言い訳しても無理な気がしたからだ。
それに知識のある人なら、ランダムな転移魔法の危険性を理解しているしな。
「ランダムな転移魔法で飛ばされたんですよ」
「・・・」
いきなり腕をつかまれた。かなり強くて、ちょっとだけ頑張らないと抜け出せない握力でだ。
そういえば、ミーヤは、リーザ王国のレベルが低いとか言ってた。もしかしたら、分からないのかも知れない。
あ。これ捕まったんじゃね。
そう察するのも、時間の問題だった。
*留置所*
薄暗く、肌寒い部屋で、夜空を眺めている一人の男がいた。
うつろな目をしながら、ただただ夜空を眺めている。
永遠にも感じられる沈黙の中、ようやく小さくつぶやいた。
「終わった」
と。
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