第七話 エリドーラ・カリフォンの決意

エリドーラ・カリフォンは悩んでいた。原因ははっきりしている。ここら一体を実質支配している魔王の一人娘、ミレノ・ダルシアについてだ。

先日、魔王が統治する森林で、近くを歩いていた村人の一人が、ミレノらしき人物と、黒髪の男性らしき人が争っていたという情報が入ってきた。話によれば、隕石が降って森の一部が更地になったとか、稲妻の竜が雄たけびを上げたなどと、にわかには信じがたい話だ。そんなものがなぜ、かなりの地位にある私に話が回ってきたか。


「ダレン男爵め・・・全部あいつのせいだ」


ダレン男爵の領地は、森林の一番近くに存在している。そしてこの話を誇張したのもあのブタ野郎のせいだ。どうせ、自分の領地を守りたいだけだろ。


「くそお。分かっているだろうに。もしこの情報が魔王の耳に入れば・・・最悪広めたものを拷問するなど、目に見えているのではないか」


この国、リーゼ王国は現在、魔王の支配を受けている。前国王が飢餓を抑止するため、一か八か、魔王軍と戦ったのだ。結果は惨敗。現国王は、魔王の人形となっている。

悩み喘いでる時、ノックが鳴った。


「室長。失礼します」


この声は、、、ランドルフか。私の部下の中で、特に信頼できる人材だ。しかも優秀と来ている。


「先日、お配りした件について、進展がありましたので、報告に上がりました」

「そ、そうか。でもなぜわざわざ来たのだ?書類のほうが効率がいいだろう」

「いえ。これはかなり機密情報なので。これはまだ、一部の人間にしか知らされていません」

「そうか。それで、どんな内容だ?いいものだと嬉しいが」

「魔王の娘、つまり、ミレノ様が、支配しようとしていた我が国の一部地域を、いきなり手放したとのことです」

「なっ」


絶句した。ミレノが支配しようとしていた地域、そこは魔王に対する抵抗軍がねぐらを立てている地域なのだ。抵抗軍の中には、かなりの強者がいると聞いている。それは魔王軍も同じなはずなのに。なぜ?という疑問が頭の中をめぐる.なにか、私が予測できないような陰謀がうごめいている。そうとしか感じられないのだ。


「それは本当なのだな」

「はい。確かな情報筋からなので」

「そうか・・・」

「後もう一点。この国の奴隷商売の本拠地で、何者かによる襲撃により、奴隷全員が脱走したとのことです」

「なんだと・・・」


嘘だろ。さすがにタイミングが良すぎる。なにか・・・なにか解決する策は。奴隷商はこの国ではかなりの収入源だ。もしこの商売が崩壊してしまったのなら、、、魔王にこの国のすべてを吸収されるだろう。

ぞっとする。


「室長・・・少し休んでは?かなり疲れているように見えますが」

「いや。私が働かなければほかのものに示しがつかん」

「休息も、仕事の内です。それにリーダが疲れていたら、他のものも不安になるでしょう」

「・・・そうだな」


書類から目を離し、窓の外を見る。ここからは王国の一部が見渡せるようになっており、そこでは子供たちが無邪気に遊んでいた。

拳を握る。

この国の未来である子供たちを守るために、私こと、エリドーラ・カリフォンは改めて決意を固めた。

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