第八話 娘思いの魔王様
さてさて、俺は今どこにいるでしょう?何台かに分散した馬車の先頭?それともハーレム築いてる?正解は前者でしたー。なんて冗談はやめて、かなり真剣に考える。なんで。こんなことになったのだろうか。
「お兄ちゃんお兄ちゃん。何見てるの?」
「ん?俺?俺はねー。さっきやらかしたこと見てるのー」
「どうゆうこと?」
無理もない。まだ6歳になったばかりの猫人族の女の子になんて、分かるほうがおかしいだろう。
先日、ほんとについこの間、ミレノをこの世界の案内役として仲間に入ってもらっただけなのに、なぜ今奴隷商で売られようとしていた人たち全員を脱走する手助けをしているのだろうか。絶対厄介ごとに決まっているだろうに。
嘆いてる俺に、純粋な女の子が笑う。君には絶対分かってほしくない悩みなんだよ。
「おいリュウ。もうちょいで西のマチャ平原に出るぞ。女の子にデレデレしてんじゃねえ」
いつもよりきついお叱りが来た。
「了解。頑張ります」
「お前なら楽勝だろ」
それじゃないんだよ。ミーヤ。罪悪感と達成感に挟まれながら、昨日やってしまったことを思い出した。
*2日前*
話す、、、もとい、思い出すと長くなるので端折る。
端的に言うと、ミレノを仲間にするにあたって父親、魔王バロン・ダルシア様の許可が必要になってくる。当然のごとく上手くいかない。
ミレノ曰く、負けたからには責任を取ると。
バロン様曰く、子孫を残すまではだめだと。
どちらの言い分もかなり独特だったが、話し合った結果、妥協策が出た。
「そこの気味が悪い人族の男と、猫人族の女で協力し、我を楽しませてみろ」
訳。そこのさわやか好青年と上から目線の黒猫と協力し、信頼させろ。
うんうん。魔王様も、意外と娘思いなんだな。
そこで話になったわけなんだよ。何をするか。
黒猫は残虐系、ミレノはインパクト系、俺は面白い系の案が出た。もちろんミーヤのは却下だ。
「それじゃあ何するんだよ。こいつがいれば何とかなるだろうが、あの魔王が驚くとなるとは限らんぞ」
「インパクトか・・・。やっぱあれじゃないか?ハーメルンの笛吹き男をパクればいいんじゃないか」
「ハーメルン・・・?誰だそれ。神か」
なわけあるか。俺はミレノに端的にわかりやすく説明した。
「なるほど。マジックアイテムの笛で女児または男児を操るのか。ではこの町から住人すべてを誘拐すればいいんだな。だが私にはさすがに無理だぞ」
「だよなあ。それに住人全員はだめだろうし、誘拐って線なら、俺たちが出てきて、かつあまり国に損失が出ない人間が妥当だろうし。いないよなあ」
押し黙る三人。焚火の火も少し弱くなってきた。
「あっ」
「なんかわかったか?」
ミーヤが声を出す。
「一つあるぞ。お前らなら絶対思いつかないようなやつが」
「エ、エグくないんだよな」
「もちろんだ。誘拐する対象は奴隷。どうだ。いいだろう」
「奴隷か・・・いいな。それなら国に損は出んだろう。あとはご主人様しだいだな。どうかな、リュウご主人様」
「やめろその呼び名」
昔エリスに裸エプロンされた苦い過去を思い出してしまうだろう。やめてくれ。恥ずかしいんだから。
「よし。ではその方向で」
「感謝しろよな」
「それでは計画も立ったということで。二人で子供を・・・」
「するかよ」
ミレノさんに、エリスの魂が乗り移った気がした。
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