第30話 おばあちゃんの願い
「あの・・・僕が眠っていたから悪いんだけど・・・きっとマスターが帰ってきちゃうから・・・」
「ああ、ごめんね、ユニコーン君、もも君でいいなのかな。
君の好きなところに僕を連れて行ってくれるかな? 」
「うん、じゃあとう子ちゃん、きっとまた彼とも会えるから、その時に色々話そうね」
「うん」
そう言って、水色君はももちゃんに飛び乗って、一瞬藍色のテーブルクロスを見たとたん、固まったようになった。それが思い出という感じよりも、驚いた顔だったので、私もその方向を見ると
「あ! 」と声をあげた。
テーブルクロスの一部分が、完全に真っ白になってしまっているのだ。確かに小さな点のようだけれど、藍色の中ではとても目立ってしまう。
「僕のいたところだ・・・僕のいたところが真っ白になっている」
彼という「色」がいなくなってしまったのだから、当たり前なのかもしれない。
「ああ・・・僕も・・・水色の僕でも・・・あの世界にいて良いんだよね、そう、僕女将さんに言われていたのに・・・」
「おばあちゃんに? 」
「でもね、内緒だって言われたんだよ、マスターも知らないかもしれない。とう子ちゃんが一年生になってから、時々女将さんはこっそり僕に
「あなたと同じ色のランドセルを背負ったとう子ちゃんを見守ってね、勝手なお願いかしら」って」
私は涙が出そうになった。
「染織家も言っていたんだ「この部分水色だけれど、まあ良いわ。きれいな水色だし」って。僕のことをよく言わない人もいたけど、でも優しい人もたくさんいる。その人達が僕がここにいることを喜んでくれているのに、どうして僕は外に出たいって思ったんだろう。
布は皆あの色だ。元の色は元の色でとてもきれいだと思うけれど、
そう、僕は水色だけれど、きっと藍色なんだ、皆の仲間なんだ」
「そう、じゃあ、君は元に戻るかい? 」
まるでももちゃんはそうなることがわかっていたようにそう言った。
「うん、ありがとう、もも君、とうこ子ちゃん。これからもずっととう子ちゃんのことを見ているからね」
「ありがとう」
ふっと水色君がいなくなったと思ったら、
「とう子ちゃん見て! 」
「あ!白が水色になった!! 」
布がまた染まった。
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