第23話 手のひらの中のユニコーン


「わあ・・・すごい・・・角にからまった葉っぱもそのままだ。

可愛い、ももちゃん」

「そう? 気に入ってくれた? これだったらとう子ちゃんのポケットに入るかな」

「うん、入ると思う。でも・・・角やたてがみの花びらとかがポケットの中でこわれたり、割れたりしないかな」

いたいと思ったら、さけぶようにするよ」

「うん、お願い」

私はそう言うと、ポケットの中のタオルハンカチを取り出した。

「あ、ピンク色、桃色ももいろだね」

「うん、実は今日ももちゃんに会えるかもしれないと思っていたのよ」

「さすがとう子ちゃん」

私はももちゃんをハンカチの真ん中において包んだ。

「じゃあ、ちょっとだけ我慢がまんしてね、ももちゃん」

ももちゃんをズボンのポケットに、前にしようか後ろにしようか迷ったけれど、動くので後ろのポケットに入れた。


「もしかしたら気持ちよくって眠ってしまうかも」

「きっとそれはないよ、だってかなりゆれると思うから」

私は探検家たんけんかになった気分で、この多分、糸の茂みを進んでみようと思った。



「わあ大変、ズボンをはいてきて良かった」

隙間が小さくて、ギリギリの所もある。まるで洞窟探検みたいだったけれど、そこをぬけると、深い青い色がチラリと見えた。


「あれ? 君は誰? あ・・・わかった! とう子ちゃんだね」


全身藍色の服、たしか作務衣さむえといって、おぼうさんが普段に着たりする物だと聞いた。小さい子が浴衣代ゆかたがわわりに着る甚平じんべいの長いもだ。お父さんがおじいちゃんの誕生日に送ったことがあって、おじいちゃんはお店が休みの日にはよくそれを着ている。

でも、その作務衣さむえを着ていたのは、私よりもちょっと年上、きれいな目をした中学生くらいの男の子だった。


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