第21話 お話


「ソーサーの彼女もとっても喜んでいるよ。今度とう子ちゃんが陶器の町に来たらみんなに紹介しょうかいしたいって言っていたよ」


「ねえ・・・でも・・・それはおばあちゃんの方がいいかもって思うの」


「とう子ちゃんは本当に思いやりがあって優しいね。そうなんだ、女将さんを招待しょうたいしたいけど、そうするとマスターもだろう? 

お店が大変かなと思って」


「ああ、そうか、皆もすごく色々なことを考えているんだね。

あ!そうだ、色、色のこと・・・えーっと・・・」


ユニコーンはもしかしたら正解を知っているのかもしれない。

でも、まあそれを聞いたらなぞなぞにはならない、魔法使いの先生が「わからなくても考えることが大事」と言っていたのだから、そうしなければいけないとおもった。


「このなぞなぞは、かなり難しいね、きっと行かなければわからないと思うんだ。それに僕も行ってみたいんだ」


「どこへ? 」


「もちろんこの中、布の世界。実は僕も初めて行くんだ! 楽しみ!! さあ、乗ってとう子ちゃん」


「うん!! 」

私はユニコーンの背中に乗った瞬間しゅんかん、思い出した。


「ねえ、ユニコーンさんはなんて言う名前なの? 」


「名前・・・名前ね・・・実はなくって・・・」


「そうなの、だったら・・・その・・・「ももちゃん」は変かな、女の子みたいかな。ユニコーンさんのほっぺの桃色ももいろがとっても可愛くてきれいだから・・・」


「いいよ!! とう子ちゃんがそう呼んでくれるんだったら! うれしいよ、名前をつけてもらって」

「そう? じゃあももちゃん、よろしく」

「うん! 」

そう言うと、ももちゃんはテーブルクロスからちょっとはなれた


「え? どこに行くの? 」

「ちょっと離れないとね、知らない世界に行くときは「勢い《いきおい》」もいるんだよ。じゃあ、しっかりと捕まっていてね」


ももちゃんが、ほんの数歩走っただけで、かなり速度が速くなり、そして、テーブルの真横、布だけの部分に頭を低くして突進した。


「わ!! 」

なるだけ声をあげないようにと私は努力どりょくしていたけれど、完全かんぜんには無理むりだった。


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