第二章 夢のつぎ

第18話 失敗


「ユニコーンさんも、ソーサーの女の子も名前を聞かなかったから言わなかったのか、それとも元々ないのかな? 」


 私は今日もお留守番係をしていた。あの陶器の山から一週間以上がたった。


「まさか次の日はないよね」と思いながらお店で同じようにユニコーンさんのカップを前に話しかけたけれど、答えても、動いてもくれなかった。


「そっか、力を使うからっていっていたから、そう何度なんども出てきてはくれないかな」と思いながら、「普通ふつうのコーヒー牛乳」をユニコーンのカップと紫の花のーソーサーに入れてもらって飲んでいた。

「普通」というのはまあ「スーパーで売っている牛乳」ということだけれど、これでもかなり美味しい。そして、あのミニチュアコーヒーカップも私の目の前に置いてある。おじいちゃんは「自分の部屋に飾ったら」と言ったけれど、ここに置いてもらっている、私にとっては当然のことだ。

すると、外から音がする。見ると、さっき出て行ったばかりのおじいちゃんが帰ってきていた。しかも、ちょっとつかれた感じだ。


「どうしたの? おじいちゃん? 」

「ああ・・・やってしまった・・・」

がっくりと、まさに「かたを落とす」という姿だったけれど、

体調たいちょうが悪いの? 」

「ああ、ありがとうな、とう子。そうじゃなくてな、お客さんのところで割ってしまったんだよ、デミタスカップを。受け渡すときだったから、「私が悪いんです」と言ってくださったが・・・」

「高価な物だったの? 」

「お前もそんな心配をするようになったか・・・いやまあそんなに高価ではなさそうだったし、まだ何組かペアがあるそうだから良いといってくれたんだけれど。可愛いカップでね。この前写真しゃしんに撮っておばあちゃんに送ったんだ」

「そうなんだ・・・」

れた破片はへんが付いてるかもしれないから、ちょっと二階で着替きがええてくるから。シャワーもびようかな」

喫茶店の二階がおじいちゃん達の家だ。

「はい・・・」

おじいちゃんは二階に上がって行ってしまった。


「そっか・・・おじいちゃんがカップをる所なんて見たことがない、色々疲れているんだろうな」


コロナにおばあちゃんの入院、おじいちゃんにはつらいことがかさなってしまっているけれど、今は日本中、いや世界中でこんなことになってしまっている。


「デミタスカップか・・あれは一年生だったな」


コロナが流行りゅうこうする前の楽しい思い出だった。




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