第10話 夢のような変身


「え! 割れちゃうの! それは大変!! 」


私もそうさけぶと、目の前の草や花は何秒かで本物、普通ふつうの草花にもどった。そして、風と楽しそうにゆれている。

でも大きな木を見ると、陶器の葉っぱ同士どうしがちょっとさわがしいほどに鳴っているので、私は


「本当に素敵な姿を見せてくれてありがとう。もうもとにもどって」


そう言うと、大きな木はゆっくりすぎるほどに、陶器から本物の木へと変わっていった。つるんとした木の表面は、でこぼこした見なれた木になった。その様子もとても面白くて、私はじっと見ていたけれど、ユニコーンが


「雨がりそうだね、きっと通り雨だろうけれど。この木の下で雨宿あまやどりりさせてもらおうか」


「うん」空の雲はどこかまだ陶器のような気もするけれど、さっきより灰色はいいろが強くなって、どんどんと、普通の雨雲になっていった。そうしてポツポツと雨が降り始めた。


「よかった、雨粒あまつぶが陶器じゃなくて」

私は冗談じょうだんのつもりだったけれど


「出来るとは思うんだけれど。昔ね、この世界に悪い人が来た時には陶器の雨が降ったらしいよ」

「そうなんだ・・・」


雨がざーっと強くなり、草も木も、なんだかとてもうれしそうにしているように見えた。でも私は気が付いた。


「あれ、この木の下だけ陶器のままだ」


「きっととう子ちゃんのくつよごれないようにじゃないかな」


「そんな事を考えていてくれるの? 」


「土たちはとってもやさしいからね」


 私は土さんに、靴が汚れても大丈夫だからと話しかけた。すると、ちょっとだけためらったように、そのままだったけれど、徐々じょじょに本物の土に変わっていった。


本当に素敵な変身だった。

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