第8話 カップの中の世界


「どんな所なの? 」


「それを言ったらきっとおもしろくないと思うんだ。でもきっと、とう子ちゃんは気に入ってくれる・・・だろうってみんな・・・」


「みんな? 」


「うん。ここにいるコーヒーカップの花たちも咲いて《さ》いるんだよ

みんな自分たちの世界に招待しょうたいしたいって言っていたんだ」


「わあ! すごく素敵なところみたい! 行きたい、きっとおじいちゃんも一時間くらいしないと帰ってこないだろうから」


「そうだね、じゃあ出発しゅっぱつだ! 僕の背中にって」


「うん! 」

そのときに、私は背の高くないユニコーンで本当に良かったと思った。


「さあ、ちょっと怖いかもしれないけれど、しっかり僕のくびにつかまってね! 行くよ! 」

首にしがみついた私を乗せて、ユニコーンはカップに向かってジャンプした。しかもカップの中に飛びこむのではなく、自分の描かれていた場所に向かっているようだった。


「え! カウンターにぶつかっちゃう! 」

と思った次の瞬間、

私は周りが真っ白な世界にいた。


明るくて、白と言うか、ほんのちょっと茶色でもまじったような所だった。そう、まるでコーヒーカップの表面を歩いているような感じで、真っ暗闇(やみ)の反対(はんたい)の世界だった。


「ここは入り口なんだ、すぐに森に着くから」

「森? 」


馬の蹄(ひづめ)は、なんだかカンカンと高い音が鳴っている。食器と食器がぶつかっているみたいに聞こえる。

すると白い道の先に色々な色が見え始めた。

「わあ! 」

私の声にユニコーンは走る速度をあげて、最後は色の世界の方へとジャンプするように入った。


そして目の前の世界に驚いている私よりも先に笑ってこう言った。


「みんなすごいじゃないか! こんな完璧かんぺき姿すがたをみたのは僕もうまれてはじめてだよ!! 」


 その声に、なんだかちょっとだけ不満ふまんそうな森の空気が、私にはかんじられた。




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