アピール
「ありがとうございました~」
私はニャルソのアピールには応えず、ただ愛想笑いを浮かべて手を振りました。
『用が済んだのでしたらどうぞお帰りください』
ということですね。
獣人達は、自分の感覚にすごく正直ですけど、それと同時に、自分が相手から受け入れられてるかどうかということについても鋭く、受け入れられてないと察すると割と素直に引き下がってくれます。
ただし、アピールは諦めることなく何度でも行ってきますけど。
それでいて、強引に迫ってくることもあまりないのです。
この辺りは意外にも思うかもしれませんが、野生の動物はむしろそういう場合が多いです。強引に迫る者も時にはいるものの、実は少数派ですね。
ニャルソが私を狙っていることは少佐も承知してますから、大変事務的に対応してくださいました。
「はあ~……」
明らかにがっかりした様子で店を出て行くニャルソでしたが、ここで同情してはあちらの思う壺。容赦はしません。
その後も、何人かのお客がやってきます。
伍長に続いて少佐がお風呂に入っている間にも。今度は梟の特徴を持つ
獣だけでなく、鳥類の形質を持つ種族もいます。
さらには、
「いなくなった……」
しみじみとした感じでそう言いながらドアの陰から顔を出したのは、身長五十センチにも満たない小さな小さな
獣人として、原始的ではあってもある種の<文明>を築きつつある彼らですが、しかし同時にまだ<
それが彼らの在り方であるなら私達が干渉すべきではないとは思うものの、実のところ、彼ら自身に、
『同じコミュニケーションを取れる者同士、良好な関係を築きたい』
という動きが、私達が現れる以前からあり、
「そういうことであれば、私達としても協力するのはやぶさかではありませんね」
少佐の判断で、社会の仕組みが構築されていく手伝いをすることになったというのもありました。
それまではごく一部の特に知能が高い者にのみ、辛うじて<言語の原型となるもの>があったのを、私達が体系的にまとめ、せっかく<言語>があるのだからということで私達のそれが取り入れられることになり、現在の形になっていったのでした。
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