タチャの新芽のサラダ
しかし、ここで最大<謎>となるのが、<獣人>の存在です。普通に考えるなら、こんなフィクションの中にしか存在し得ないような生物が、一般的な進化を辿れば明らかに獲得し得ないような形質が、どうして成立したのでしょう?
それを説明することで、実は私達の今のこの体の説明もできてしまうのです。
が、
「それじゃ、ビアンカは明日の早朝からの担当だから、先に休んでほしい」
少佐に言われて、
「はい、それではおやすみなさい」
と私は休むことになったのです。
翌早朝。日が窓から差し込むのを感じ、私は目を覚ましました。
「おはようございます。少佐」
寝室を出てリビングに行くと、少佐は壁にもたれて仮眠を取ってらっしゃいました。伍長も、床で大の字になって寝ています。お客はなかったのでしょう。
「おはよう。じゃあ、僕は昼まで休むから、後はよろしくね」
「はい。了解しました」
つい敬礼をしてしまいそうになるのを抑えつつ、寝室へと移っていく彼を見送ります。
『我々はもう<軍人>ではないので、敬礼はしないようにしよう』
という少佐の提案でした。
彼ほどの優秀な軍人があまりにも惜しいとは思いつつ、確かにここには<軍>という組織もありませんので、私達三人がいくら、
『軍人である』
と言い張ったところで意味がないのも事実でしょう。
なお、獣人は朝が早い種族もいるため、お客も来る時は来ます。
ですが、今のところは来る気配がなく、私はその間にノーラと赤ん坊の様子を見ます。
すると、寝ているノーラの胸に赤ん坊が吸い付いて、勝手に乳を飲んでいました。この辺りは人間の赤ん坊よりもたくましいですね。
けれど、赤ん坊が乳を飲み終えて離れるとノーラが目を覚まし、抱き上げて背中をとんとんします。
「けぷ…っ」
赤ん坊がげっぷをしたのを確かめると、ノーラは赤ん坊を胸に抱いたまま、また横になりました。
正直、そういう点からも獣人の肉体は非合理な面もあるのが分かります。自然にそうなるには。
とは言え、人間ほど付きっ切りで様子を見ていないといけないわけでもないのも事実。ノーラの胸の上で赤ん坊が寝付いたのを確認した私は、ノーラのための朝食の用意を始めました。
彼女の食事は、店の周囲でも豊富に採れる、
もっとも、それらすべて私達人間にとっては食用にならないものばかりですね。含まれる成分が、私達人間が持つ酵素では消化できないものが多いのです。
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