六
私はまた仏壇の前に座る。今度は一人で。
月曜の朝、登校前の時間にこっそり忍び込んだ。この家で暮らし始めて早くも四ヶ月目。パパに報告したいことがある。
「やっぱり、あのおじさんは良い人だよ」
まあ、ママがずっと好きだった人だからね。そのへんの心配はしてなかったけど、パパから見たらよく知らない人だし不安だったかもしれないもんね。
でも安心していいよ。豪鉄おじさんは見た目あんなだけど、とっても優しいよ。思っていたより口うるさかったけど、それだってちゃんと二人目のパパになろうとしてくれてるからだもんね。
もちろん私も納得いかないことがあったら噛み付いていくつもりだから、その時は応援してね。この間のスケートみたいにさ、子供の方が先生になることだって、きっとあると思うんだ。友美ちゃんだって時々年上の私がハッとするようなことを言うし。
「きっと、あの人とならうまくいくから、安心してね」
手を合わせて瞼を閉じる。今までに何度もやってきたこと。
そして──
【勇気を出しなさい】
「……」
私には秘密がある。実は昔から、時々誰かの“声”が聞こえること。
パパなのかはわからない。本当はもっとこう、はっきりした声じゃなくて、ぼんやりとしたイメージって感じだから。
でも、今日もまた見守っててくれるんだね。
「ありがとう」
私の言葉に、パパの遺影がほんの少し微笑んでくれたような、そんな気がした。
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