#12 ドアの隙間から宵闇が

白い部屋ではしばらく沈黙が続いていた。


オレがつぶやく

「これ、『生命の移動』ってやつだと考えるな」


エージェントはハッとしたような顔をしている。

「いや、だてに何年も死神やってねえ。オレがコーヒーの生命を吸収した。オレの意思にかかわらず、だ」

「ではコーヒーの意思?」

「解良瀬のヤツの意思だろう。奴は生命を移動させることができる。もしかしたら、死んだ人間を生き返らせることもできるかもしれないな」

からっぽのコーヒーカップを持つ。

「誰かの生命を奪って」


また、沈黙が流れた。


「で、どうやって対峙するんだ」

エージェントの都合の悪いときに沈黙を破るのはいつもオレだ。


「まだ、はっきりと能力が断定できません」

エージェントはうつむいている。

「……『異世界』から、こちらに転生者を呼んできてください。転生先はこの基準世界です」


「乗った」

オレはニヤリとした。

「次はまともな世界で頼む」


「『走れメロス』でよろしいでしょうか?」

「どこがまともなんだよ。借りたカネは返せよ」


エージェントの顔がすこし、緩んだ。


オレの肩こりも治れ。

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えっ!こんな状態でも転生できる異世界が!? さこつ ろくろう @sakots

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