#11 コーヒーで一息いれろと言ってる

「オレらの基本世界が、揺らいでるのかもしれない」

珍しくシリアスに、エージェントへ俺はつぶやいた。


「同意見です」

エージェントも頷いた。それにオレが続く

「解良瀬が魔法か超能力かを使える、そういうことになってるって認識だよな」

「はい」


「それで、ここへ戻ってきたわけですよね」

エージェントの眼鏡が光る。


「ああ、少し確かめたいことがあって」


出されたコーヒーを少し飲んだ。

「たとえばオレは今幽霊で、このコーヒーは『コーヒーの幽霊』とでもいう感じのヤツだ。だから俺はこれを飲める」


「では、幽霊じゃないコーヒーをオレが飲めた場合は?」


「揺らぎ、ですね。綻びと言えるかもしれない」


「というわけで、『生きているコーヒー』出してもらえるか」

「やりましょう」


エージェントも多少緊張しているのか。


「『生きているコーヒー』です」

見た目は『コーヒーの幽霊』と変わらない。これに触れたりできれば。これが、さっき言った実験だ。


「触ってみるぜ」


コーヒーに触れる。すると。


「!?」


オレは思わずのけぞった。


コーヒーカップが一瞬で空っぽになってしまったのだ。


「これは…… 大変なことですね」


エージェントも冷や汗をかいている。

基本が揺らいでいることはわかったが、それがどういうことなのかまでは、まだ、わからなかった。

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