#10 世界にはびこる憂鬱を壊せ

雨が降っている。


今オレに肉体はないので濡れはしないが、傘は一応さしている。

雨のときは傘をさす。気持ちの問題だ。


ほかの転生者とぶつける、とはいったものの、具体的にどうするのかはまだ決まっていない。

あの荒廃世界のバァさん連れてきて解良瀬だけ殺させればよかった、などと考えても後の祭りである。


しかし、疑問は次から次へと湧いて出る。


この世界に魔法や超能力は存在しないはずなのだ。


だからこそ、「ここ」から転生者の輸出業が成り立っているわけである。


魔法の世界でこちらに来て、魔法が使えない。これでは転生のうまみがない。

輸入業は成り立たないはずなのだ。


ここからは、オレの推測になるが……


「世界」のバランスが崩れているのではないか。


つまりこの世界でも魔法やら超能力やらが使えるようになってきているのだ、と考える。


これが自然的なものか、誰かの陰謀なのかはわからないが、

オレにはこうとしか思えなかった。


――少し、実験が必要かもしれない。


雨は止んでいた。オレはまたエージェントのところに引き返す。

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